光の王国
【竜紋の少女と伝説の四大竜】を読んでくださり、誠にありがとうございます!
今後の執筆活動の励みになるので評価と感想もよろしくお願いします!
飛行船ヴィクトリアはセイレングの飛行船停留港に着陸し、一同は新鮮な空気と日差しに迎えられながら下船した。
「ほな、ウチは燃料と食料の買い出しに行ってくるから、皆は思う存分楽しんできな!」
「なら、ボクも買い出し手伝うよ!」
と、マリネルが意気揚々とミーリンの肩に飛びついた。
「俺は四大竜に関する文献を探しに行きます。ルインと一緒にね」
シドはそう言ってルインの手を取り、人混みの中へと姿を消した。
ルインも以前までの暗い表情は減り、リアの喜びはひとしおだった。
「じゃ、アタシらは女同士気楽に探索しよう」
ヘルガがリアの肩をガシッと掴み、強引にリアを連れて街の方へと歩き出した。
セイレングの街はメストルーンとは一風違い、建物一軒一軒に色彩豊か、大小様々なクリスタルの装飾が施されていた。
そのクリスタルは太陽に照らされ、屈折した光が地面や壁で煌々と輝いている。
【光の王国】の異名を持つ理由が容易に納得できる。まさに美の骨頂だ。
そんな街並みにうっとりしながらも、リアはある願望のために周囲に目を光らせていた。
その願望とは…
「おいしいスイーツが食べたいっ!」だ…
以前の戦いぶりや性格故、忘れてしまいがちになるが、リアは歴としたティーンエイジャー☆ である。
しかし、初めて訪れた国だ。そもそもそんな店が存在するのかすらも怪しい。
「分からないなら聞くまでよっ!」
そう言ってリアは周囲に丁度いい人がいないか見回してみる。
暇そうで、優しそうな人が好ましい。
そこで、ある長身の若者が目に入った。
茶髪の、腰にレイピアを差した青年。容姿からして恐らく冒険者だろう。
「お聞きしたいのですが、この辺りにバリ美味いスイーツが食べられる店はありますか?」
「バリ美味いスイーツ? ううん、どうだったかなぁ。おいトンドル、お前心当たりあるか?」
男が隣にいた紫ロングヘアの女性に問うと、彼女も同様に困った様子でいた。
「私も仕事以外で城内から出る事なんて滅多にないからなぁ…あっ! アールグレイなら知ってるんじゃない?」
そう言って丁度建物の中から出てきた蒼髪の青年に話を振った。
「ああ、それならここを真っ直ぐ行って突き当たりを右に曲がると【味の宝物庫】って店があってね。そこのケーキは僕のオススメだよ」
「ありがとうございました!」
リアはそう言って深々と会釈し、意気揚々と言われた方角へ歩き出した。
「お〜い君! これを持っていけ!」
リアが振り向くと、茶髪の青年が七色のクリスタルで作られたコインを彼女に向けて投げ渡した。
「綺麗…これ、頂いていいんですか?!」
青年はニコッと笑い親指を立てながら言った。
「御守りだよ。セイレングを楽しんでくれ!」
再度深々と礼をした後、三人に見送られながら歩き出し、ヘルガも「礼を言うよ」と言い残しリアの後に続いた。
【味の宝物庫】
店の外装も看板もシンプルで目立たないが、店内は客で溢れかえっている。
「めっちゃ人居るじゃん…」
「これは…待つしかないね」
30分程待った後、二人の座った席にやっとお目当てのケーキが運ばれてきた。
フワフワのスポンジケーキの表面がチョコレートでコーティングされ、表面に降りかかっているのは宝石?…では無く【ジュエルシュガー】と呼ばれる、セイレングの特産品の一つである。
「うわぁぁ美味しそう! いただきま〜す!」
フォークの上に乗ったケーキはジュエルシュガーによってキラキラと輝き、食べるのが勿体無くなる程の美しさを帯びていた。
そして、パクっと一口…
次の瞬間、リアの脳内で超新星爆発が起こった。
(なんて物を食わせてくれたのよ! ジュエルシュガーの甘みとビターなチョコレートの上品な味わいの連携アタックで確実に私の脳を破壊しにきてるっ!)
「生まれてきてよかったって顔してるな、リア」
ヘルガがそう言って笑うと、リアも親指を立てて言った。
「美味しかった! ほぼ逝きかけたわ!」
「今の発言は解釈によっちゃ誤解を生むぞ…」
その時、二人は興味深い話を耳にした。
「今日はセイレング騎士団の公開稽古らしいな。後で見に行ってみようぜ」
「面倒くさいから俺はパスで」
二人は顔を見合わせニィッと笑うと、急いで席を立ち勘定を済ませ城へと向かった。
二人がこんなにも心踊らされるのには訳がある。
それは…
「騎士ってなんかかっこいいじゃーん!」
「騎士ってなんかかっこいいよな〜」
である。
「セイッ!」
「ヤァッッ!」
「もう一本ッッ!」
城内の広場では騎士団の者達が逞しい声を上げながら稽古に励んでいた。
ある者は自身の身長よりも大きな木刀を振り、瞑想に耽るものもいれば地稽古に励む者達もいた。
そして、それを見学する民達は彼らとは一定の距離を保っているが、田舎生まれ田舎育ちのリアにモラルやマナーなんて物は存在しない。
お構いなしに彼らに近付き、話しかけもしながら奥へと進んでいく。
ヘルガは我関せずといった様子で、他の見学者に紛れて彼女を見守っていた。
「せっかく来たなら三勇士って人達に会ってみたかったなぁ」
すると周囲の団員達の行動はピタリと止み、ある者がリアに言った。
「三勇士は今出払っている。城内にいたとしても、外部の者とは気安く接触できん」
その時だ。
「あれ? 君、スイーツの子じゃない?」
リアが声のする方へ振り向くと、そこに居たのは先程彼女にオススメのスイーツ屋を教えてくれた三人だった。
「あ! コインくれた人! …え、騎士団の人達どうしちゃったの?」
リアが気がついた時には、騎士団員は揃いも揃って三人に向け跪いているではないか。
リアは暫くフリーズした後、やっと理解が追いついたのか「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ?!」と叫び、騎士団員達「その通りだ」と言わんばかりにコクコクと頷いている。
「てことは、あなた達があのセイレング三勇士?」
「そうか、紹介がまだだったな」
茶髪の青年がそう言うと、自分を指差しこう続けた。
「俺はアキル・アヴェル、よろしくな!」
【アキル・アヴェル】
別称 【紅陽の勇者】
卓越した格闘術と身体能力により、若くして数多の戦を勝利へと導いた男。本人曰く「ゴーレムなら右手の人差し指で充分」との事。
「次は私ね、私はトンドル・リュミエール! よろしく!」
【トンドル・リュミエール】
別称 【慈癒のトンドル】
騎士団有数の治癒魔法の使い手。故に、セイレングでは医者としても活躍している。攻撃手段は意外にも三勇士の中で一番残酷だとか…
「僕はアールグレイ・フランボワーズ。文字数的に覚えにくいかもだけど、よろしくね」
【アールグレイ・フランボワーズ】
別称 【星剣】
魔法の才能は勿論のこと、剣術面でも過去にランス・ロックフッドと渡り合ったことでその名を轟かせた実力者。
「セイレングの盾であり剣…それが三勇士なんだ」
近くにいた騎士団員の一人がそう呟くと、次の瞬間リアは驚くべき発言をした。
「私と、手合わせしてくれない?」




