竜殺しの弾丸
「だって貴方を殺していいのは…私だけだもん」
リアはバックステップで素早く距離をとり、カットラスを再び構える。
「シド、マリネル! 貴方達は先に行って!」
「しかし!」
「いいから! 六人の男を魔力なしで殺せる奴よ? それにこいつの狙いは私、受けて立とうじゃない!」
「ッッ分かりました。行きますよマリネル! リア、必ず戻ります」
そう言い残すとシドはゲートを開き、マリネルを連れて行ってしまった。
「これで貴方と私だけよ、さあ来なさい」
女は見たこともない武器に何やら金属の塊のような物体を詰めている。
「んじゃ、お言葉に甘えて〜」
すると徐に女はその武器をこちらへ向け、
ドォォォン!
騒音と共にリアの太ももに激痛が走る。
「ッッ?!」
攻撃が見えなかった。あの距離からどうやって攻撃をしたのだろうか?
何より不思議なことは、その女から感じられる魔力のオーラが異常なまでに少なすぎるのである。
続けて三発騒音が鳴り響く。
そして同時にリアの頬と右腕と左足を掠めた。
間髪入れずにまた二発。
かろうじてカットラスで攻撃を弾く。
しかし四肢は全て攻撃を喰らっている。
そんな中でリアは彼女の攻撃のある法則性に気が付いた。
それは彼女の先程の発言である、
「丁度六人でよかったぁ」
と今の攻撃が六回で止まった事から、彼女の攻撃は六回ごとに隙が出来るという法則性である。
その法則を信じリアは女の懐へ飛び込んだ。
深く考えず、攻撃を読ませない。
ハドラスから学んだ事を活かしながら剣先を走らせる。
「クソッッ」
女が持つ謎の武器がカットラスの攻撃を防ぐ。
リアはすかさず女の武器を弾き、鳩尾に一発蹴りを入れた。
見事に直撃!
女は腹部を抑えよろよろと後ずさりする。
「ゲホッゲホッ、今のは効いたよ。クソがッッ」
「残念だけど、今貴方に構ってる暇はないの。さっさと目的を言いなさい」
リアはこれでも爆発寸前の怒りを抑え平然を装っている。
女は大きな溜息をついて話し始めた。
「正義感の塊みたいな性格はちっとも変わらないんだね。感心したよ」
そう言いながら再び武器に何か詰めている。
「この武器の紹介をすっかり忘れてた。『Six.Heart3』それがこの武器の名前」
見たことも聞いたことも無い武器だ。
「龍紋を持った人間の心臓から作った弾丸を高速で発射する"銃"、その弾丸は自然回復を妨げる作用を持つ。そうだね、『竜殺しの弾丸』とでも呼ぼうか」
竜殺しの弾丸...
「龍紋村の人間を六人殺したのも貴方ね」
「さっすがリア、ご名答〜。あの雑魚どもは皆仲良く弾丸になってこのポーチに入ってるよ〜」
「なんてことをッッ」
リアが構えようとした瞬間グリップを撃たれ、カットラスは金属的な音を立ててその場に落ちた。
武器がなければ攻撃を防ぐことができない、避けるのも不可能だ。
「ゲームオーバーだよ」
ドォォォン!
.........
......
...
...?
まだ死んでない? 何が起こったのだろう。
「ふぅぅ、ギリギリセーフ。で、どうしてアンタここにいんだよ」
聞き覚えのあるハスキーな声、ふと見上げるとそこに立っているのはポーション店の店員ではないか!!
驚くべきはそれだけではない。あの弾丸を素手でキャッチしているのだ。
「ごめんなさい! 実は私もこの事件を追っていて....そのお」
ポーション店のおんなはぷっと吹き出して笑い出した。
「なぁんだそうだったの? なら早く言えば良かったのに。 よし、じゃあ早速仕事にかかろうか!」
「私は何人増えても構わないよ? 弾の材料が増えるのは大歓迎だもんね」
ポーション店の女は武器を構えることなく、ファイティングポーズをとった。
「アタシの名は『ヘルガ・ドラグハート』、龍紋村出身者そして、『鎧の竜』の能力の正当な後継者だ」
リアは耳を疑った。『鎧の竜』の後継者...?
衝撃的な事実に空いた口が塞がらない。
「そう、それじゃお手並み拝見と行こうか」
放たれた六発の弾丸がヘルガに直撃するも、小さな火の粉を立てて弾かれる。
「これが鎧の竜の力...」
ヘルガは一瞬にして女との間合いを詰め殴りかかる。
咄嗟のところで躱されるも、地面には拳の跡と小さなクレーターのようなものができていた。
「フレイム・バーストッ!」
リアもヘルガの後方で加勢を始め、地面から吹き出した炎で足場を失った女は屋根へと登り、リアとヘルガに一発ずつ放った。
リアはカットラスで防ぎ、ヘルガは直に弾を受ける。しかし効いている様子はない。
二人も後を追い屋根へと上がる。
すると女は戦うどころかリア達とは逆方向へ走り出した。他の家の屋根へ、また他の屋根へと飛び移りどんどん離れていく。
「何ぼーっとしてるんだい! 追うよ!」
「了解ッ!」
「楽しい、楽しいよリアッ! もっと必死になって追いかけて来てよ! どこまでもさぁ、"昔"みたいに!」
(昔みたいに...?)
リアには女の言っている意味が分からなかった。
しばらくしてとうとう塀まで追い込んだ。他に逃げ場はない。
「さあ、鬼ごっこは終わりよ。貴方は誰? 目的は?」
女は息切れをしながらもずっと笑っている。
「何がおかしいの?」
リアの質問に女は首を横に降って答えた。
「いやあ、久しぶりに心の底から楽しいと思えたから嬉しくてつい...ね」
「御託はいい...早くフードを取れよ殺人鬼」
「はぁぁぁ、本当にせっかちだなあ。分かったよ」
そしてフードを外した時リアは言葉を失った。
現れたのは、乱れた銀髪の髪で目には隈ができている女。
しかしリアにはそれが誰なのかすぐに分かった。
「.......ルイン? ルインなの?」
女は頷き答える。
「久しぶり...."お姉ちゃん”」




