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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

これはチャンネル登録者=寿命の理不尽な世界で、生きるのを諦めた人間の物語

作者: tomoyuki gomi

YouTubeチャンネル登録者数=寿命の仕様について


・18歳までは生きれる

・各個人の寿命が、チャンネル登録者数+18まで生きられる

・18歳を迎えた時点でチャンネルを作っていない、もしくはチャンネル登録者数が0人だった場合、心臓麻痺で死ぬ

・複数アカは禁止(手を出した瞬間心臓麻痺で死ぬ)、アカBANされた場合された時点での登録者数の1/10が寿命になる

・外的要因による死亡は仕様を無視する

・この仕様が出されたのは約5年前で、出された時点で18歳を過ぎていてYouTubeのチャンネルを作っていなかった、登録者数0人の場合は仕様が適応されない

・日本国籍の人のみ適応

……この世界は理不尽だ。

理由は、YouTubeのチャンネルの登録者数によって自分がどのくらい生きれるか決まってしまうから。

仕様上18歳までは生きれるにしても、18歳までにチャンネルを作っていない、もしくはチャンネルの登録者が0人だったら心臓麻痺で死んでしまう、恐ろしい世界。

この事実は既にニュースや掲示板、政府からの手紙などで広く世間に触れ回っている。

そのため一部地域では死んでしまった人が多数発生しており、ただでさえ少なかった人口が着々と減っていってる。


俺、新田(あらた)遥輝(はるき)は今チャンネル登録者数30人だ。

主にゲーム配信・動画をメインにしている17歳の高校生だ。

昨今は同じクラスの奴らが皆動画を撮ることだけに集中したせいで学校に来なくなり、先生達も頭を抱えている。

あの仕様が判明した際に既に18を過ぎていてなおかつチャンネルを作っていなかった場合は仕様が適応されず普通に生きれるという関係で先生達は生きてはいるのだが、生徒たちが死んでいく、もしくは生きるため登録者を増やすために動画を撮る方を優先するため、まともに学校に来ているのが俺含めごく僅かなのが現状だ。


……登録してくれている30人には悪いが、正直この世界で生きていこうなんて気は全くしない。

父親はいつもどこかに出掛けて女引っ掻き回してるクズだし、母親はもういないし、知っている有名な配信者さんが皆炎上商法しか行わなくなったのにうんざりしたから。

……最も、アカBANされてもアカBAN時点での登録者の10分の1は生きれるのだが。

あの仕様が判明してからも今まで通りに活動している人もいるにはいるが、その人たちも裏では何を考えているのか分からない。


また、あまりにも登録者の多かった人が自殺や交通事故などの外的要因で死ぬ、といったことも増えてきている。

警察もまた、自殺者・仕様での死亡者の増加への対処に追われていて、街の治安も悪くなっていった。

物を一つ買いに行くだけでも、いつ奪われたりされるか分かったもんじゃない。

俺が今来ている高校も外見が廃れていってオンボロなのが実情だ。

……そんな中でも普通に授業をしようとする先生達には呆れを通り越して脱帽するが。

もう意味なんてないだろうに……


授業が終わった後、親がいなくなった家に戻って、動画撮影と編集を済ませて、ネットを漁る。

実はこのような仕様が適応されているのは日本のみで、海外では適応されていない。

正確に言うと、日本国籍のみ適応されるという特徴があるため、日本以外の国籍の人なら普通に過ごせるし、国籍変更で仕様から逃れることもできる。

……もっとも、国籍変更の役所も荒れてろくに行けなくなってしまうほど廃れてしまっているが。

だから海外では日本の国家衰退に一喜一憂している奴らがネットで日本人の悪口を書いていたりする。悪いのはこのくっだらねぇ変な仕様であって、日本国そのものはなんも悪くないってのにな。

そんな悪口が目に入るたび、自分にこの暴言が全部向けられてりゃ良いのになって思う。

生きてる価値なんてないんだし、とっとと死んでしまう方が気が楽だ。

親は気にしないだろうし、先生達も世話にはなっているけど所詮他人だから自分の命を優先するだろうな。


そんな俺の唯一の希望が『B』という配信者さんだ。

正式な名前は『友人B』で、ゲームしながら雑談配信したりするチャンネルだ。登録者は200人とかそこら。

大手実況者達が騒ぎ立てているのなんか気に留めず、やりたいことをやりたいだけやるスタンスの配信者さんで、リスナーにツッコまれることもしばしば。それでも、変に登録者数〇〇万人とかのチャンネルよりかはよっぽど親近感が湧く。俺自身もここのリスナーになって久しいほど。


『は〜い!今日もまた配信始めるよ〜!』

19:30、そんな軽やかな挨拶で始まる配信。

いつものようにゲームに参加したり、辛辣なコメントをしてBさんの反応を楽しんだりしていると、すっかり遅くなった。

「さてと……そろそろ寝るか」

そういって寝床につく。

その隣には、ナイフが転がっていた。


翌日の夜、Bさんの配信が終わった後に俺はとある公園に来ていた。

「……もう未練なんてもんもないし、死んだっていいよな……?」

ナイフを右手に持って、自分の左腕に突き立てる。でも、その右手は震えていた。

なんでだろう。死ぬことに迷いなんて、この世に未練なんてないはずなのに。

そのとき、

「ねぇ、何をしてるの?」

声をかけられた。

振り向くと、そこには学校に来ている数少ない同学年で幼馴染の水無月(みなづき)波瑠(はる)が立っていた。

「波瑠……どうしてここに……」

「もしかして、死のうのしてた?」

「……お前には隠し事できないな……」

「別にいいよ、でもなんでこんなことしようとしたの?」

「……実はな……」


俺は波瑠に事の顛末を一言一句漏らさずに話した。

「なるほどねぇ……確かに、死にたくなる気持ちも分かるわぁ」

「……軽く聞き流される方が今は楽だな……」

「軽く聞き流してるわけじゃないよ、実際遥輝の事情は察してるし、同情してるよ?」

「波瑠なら、俺が死にたいって気持ちも分かるだろ?もう放っといてくれよ……」

「ほっとけはしないでしょ、昔からそうだよ、いつも一人で抱え込んでさ、それに登録者の人たちはどうなるの?」

「……そいつらには、悪いと思ってるよ」

「まったくもう……何を隠そう私もそのうちの一人なんですけど?」

「えっ?」

「結構面白いんだよ?遥輝の動画。アイディアとか凝ってるし、参考になったりもするし」

「……そうか?俺の動画なんて他の奴らの二番煎じにも程があると思うが……」

「そんなことないって、誰だってまずは他の人のやつを参考にしたりして、それから徐々に自分の形にしてくんだしさ」

「……そういうもん、なのか……?」

「そういうもん。しかし勝手だよね、大人の人って。仕様に引っ掛からなかったからって好き勝手言ったり、ろくに何か対策したりもしないでさ」

「……まぁな」

「まぁなって、何も思わないの?」

「思うところがあったとしても、大人たちはろくに聞こうとしないからな……」

「そーいうかなぁ〜?」

そんな他愛もない会話を繰り返していると、波瑠がこんなことを言ってきた。


「ねぇ、どうせ死ぬなら一人より、あたしと……いや、皆で死なない?」

「……え?」

「あたしもうんざりしてたんだ〜。親がうるさくってろくに友達と遊べやしないし、そんな人生なら来世に期待する方が楽じゃない?」

「ま、まぁお前がそれていいなら俺はそれで構わないが……皆でって一体?」

「あ、そういえば遥輝知らないんだっけ、なら明日行こ!確か明後日とかそこらにやるとか言ってたし」

「……?」

「まぁ、こんな公園で燻ぶっててもしょうがないし一旦家戻ろ、ね?」

「あ、あぁ……」

波瑠に言われるがままに家に帰る。


「勝手に入っちゃっていいよね?」

「それは別にいいけど、お前は家に戻らなくてもいいのか?」

「ここ数日は家戻ってないよ、ボディーガードはいつも撒いてるし寝泊まりはカプセルホテルでしてるし」

「そうか……取り敢えずおやすみ」

「うん、おやすみ〜」

そういって再び寝床につく。


さらに翌日、学校が休みのこの日、俺は波瑠ととあるオンボロの公民館に来ていた。

「ここで良いのか?」

「そそ、さ、早く行こ」

波瑠に腕を引っ張られながら、中に入る。

中はまるで混んでるワクチン接種会場のように人でごった返していた。

「もう、本番は明日だっていうのに、随分と賑わってるなぁ」

「……ここは?」

「ざっくり言うと、集団自決の会場?かな。ここで明日あの人達に致死剤を打ってもらうんだって」

そう波瑠が指差した方向を見ると、白衣の人たちが色々と薬品や注射器などの物資を運んでいた。恐らくあの薬品が致死剤なのだろう。

ふと、疑問に思ったことを波瑠に聞いてみる。

「……ここまで大規模にやって、国にバレたりとかしないのか?」

「そのあたりはうまく誤魔化してるんだって、国も国で対処する気が無いんだろうけど」

そんな返答が返ってきた。

「致死剤を打って、死んだあとはどうするんだ?」

「確かどこかしらのお寺に無縁仏として埋葬されるとかだったかな?あたしも聞いたことあるだけで良く分かんないし」

「そ、そうか……」

波瑠がずいぶんと軽い口ぶりでそう言うから、ホントに大丈夫なのだろうかと心配になってきた。


すると

「あっ!波瑠ちゃ〜ん!」

「あ、美結!来てたんだね。下見とか?」

「あはは、ちょっとね〜」

波瑠が同い年かちょっと下くらいの年齢の女の子を呼んできた。

「遥輝、紹介するね、あたしの友達の新堂(しんどう)美結(みゆ)ちゃん」

「新堂美結です。はじめまして」

「よ、よろしく……」

こういうきちんとした挨拶はまだ慣れなくて緊張する。


美結は黒髪ロングヘアの、いわゆるお嬢様っぽい見た目の少女だった。

見た目とは裏腹に割とフレンドリーな印象で、さっきの会話を見るに、波瑠とはかなり仲良しみたいだ。

「もしかして波瑠ちゃんも明日の為に下見に来たとか?その隣にいる人……遥輝さん、でいいのかな?その人と一緒に」

「実はあたし達もそうなんだよね〜、遥輝も遥輝で訳アリでね」

「訳アリ、ですか……」

「まぁ、ちょっとな……俺は親関連なんだが美結はどんな理由で自決しようと?」

俺がそう聞くと、美結の表情が暗くなった。

「私、学校でずっと虐められてて……まともに接してくれたのは、波瑠ちゃんくらいで……親からも虐待されてて、それで嫌になっちゃって。あと、チャンネル作らないと死ぬし、チャンネル登録者で生きれる時間とか決められるの嫌だったから」

暗い表情で美結は答えてくれた。どうやら美結は虐待やいじめのことだけでなく、あの仕様のことにも嫌気が指していたようだった。

「こーらー!なーに人の言いたくないタブーを言わせてんだぁアンタはぁー!?」

バコッッッッ!!!

「痛ってぇ!?」

波瑠から張り手を貰ってしまった。あーすっげぇ痛え。そんなつもりで聞いてるわけじゃ無かったんだけどなぁ……

「あー痛え……唐突に聞いてゴメンな、美結」

「い、いいですよ、私は大丈夫ですし」


しばらくすると、アナウンスが流れてきた。どうやら明日自決する人は手続きを済ませるように促され、遺書などを書く時間もあるそうだ。

「取り敢えず、あたし達も手続き済ませよっか、行こうふたりとも」

「だな」「そうですね」

俺たち三人は自決のための書類手続きを済ませた。


そして翌日……ついにこの日が来た。

公民館近くの駅で波瑠と美結と待ち合わせをして、3人で公民館に向かう。

公民館は多くの人で集まっていた。昨日の下見でいた人はもちろんのこと、中には俺でも知っているような有名人とかも来ていて昨日以上に賑やかなのが、このあと行われる自決に向けての最後の祭りみたいだった。

「いよいよですね……」

美結は緊張してるようだった。波瑠がそんな美結の背中をぽんと叩く。

「大丈夫。すぐに天国に逝けるから、そんな身構えなくたっていいんだよ?」

「ありがとう美結ちゃん」

そんな会話を聞いて微笑ましく思う。俺もこんなふうに過ごせてたらどれだけ良かったか……


書類の確認等を済ませ、ついに致死剤を打たれるところまで来た。

波瑠いわく、今回打たれるのは、打たれた後約10分で意識を失い、やがて死に至るという、安楽死などで良く使われるタイプの致死剤らしい。

「……いよいよか」

「だね、美結ちゃん先に天国に逝ってるっぽいし、あたし達も後に続こうか」

「だな……」

それぞれの薬品投与のブースに行き、白衣の人たちに打つ用意をしてもらう。

「それでは、打ちますね……」

「……お願いします」

そして、腕に致死剤を注射してもらう。

「お疲れ様です。自決ブースの方へお進みください」

「……はい」

打たれた後の感覚は、どこかはっきりとしないというか、何か引っかかるというか、そんな感覚だった。自決ブースに行くと、そこには既に逝ったであろう美結に寄り添う波瑠の姿があった。用意された席に座っている二人の隣の席に付く。

「……おつかれー……美結ったらこんなに優しい顔しちゃってね〜」

「ああ、お疲れ様……もうあまり感覚なんて無いな……」

「だねー……手でも繋いで一緒に逝く?来世でもまた逢えるようにさ」

「ああ……」

隣の席同士で手を繋ぐ俺と波瑠。

朦朧としていく意識の中で思い起こされるのは、希望だったはずの配信者。

(……そういえば、あの人に助けられたお礼をコメントするの忘れてたな……Bさんなら言われても気にしないだろうけど……)



………そうして俺の意識は真っ白に染まっていった……



翌日、テレビではこのような報道が飛び交った。


『速報。公民館で集団自決。YouTubeの仕様が自殺の原因か。』




起承転結と設定を踏み倒した駄作でっす(企画的に色々と駄目でしょこれ)

Bさんいつもおもろい生放送ありがとうございます


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