僕なりのハットトリック
なろうラジオへの応募作品です。
テレビの中で幼馴染が雄叫びをあげる。
我がイタリアが誇るレフティのエースFWにして僕の親友だ。テレビから狂気にも似た歓声が頭に響き渡るように聴こえてくる。
今日、サッカーW杯で我がイタリア代表が優勝を果たした。そしてそ決勝、幼馴染はハットトリックを達成した。
テレビの中の幼馴染は泣いていた。当然ながら僕も感極まって涙を流した。
僕と幼馴染は子供の時からカルチョに夢中だった。故郷の片隅でいつも日が暮れるまでボールを蹴って、当然のように地元クラブのユースに入団した。
目を閉じればあの頃の思い出がよみがえる。
僕はグラスで蒸留酒をグイッと一気に飲み干してなつかしさのあまり「はあ」とため息を吐く。
僕には残念ながらサッカーの才能が無かった。幼馴染もクラブのユースに入団したての頃は僕と似たようなものだった。
僕はいつの間にかサッカーから足を洗って別の夢を追いかけたけど幼馴染は違った。僕がユースを退団したってずっと夢を追いかけてボールを蹴った。
その頃からかな?
僕たちが会わなくなったのは、気が付けば僕たちは別々の道を歩んでいたね、僕は調理人、君は変わらずずっとセリエAのスター選手を目指した。
僕が修行を終えて独立を考え始めた頃、君は遅咲きの地元スター選手として名を上げて気が付けば瞬く間に代表に収集されて、今は押しも押されぬ代表のエース。
ずいぶんと長い間、会ってないけど僕は君が誇らしいよ。W杯の決勝の舞台でハットトリックの快挙にチームの優勝。
ずいぶんと遠い存在になったものだ。
君は僕のことを覚えているかい?
僕も今日、ハットトリックを達成したんだ。独立して店を持って、君とは比較出来ないだろうけどね。
ようやく僕の店も認められてミシュランの三つ星レストランになったんだ。僕の星がようやく君と並んだよ。
今度手紙を送るから故郷に帰ってきたら顔を見せてくれ。今度は『最後』まで付き合うからさ。
僕と君、幼馴染同士で昔話に花でも咲かせてワインでも飲もう。僕と君の星の数だけ祝杯をあげようじゃないか。
「おめでとう、乾杯、幼馴染」
まずはテレビ越しで夢を叶えた君に乾杯と言っておくよ。
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