メタルの神
暗くて何も見えない。
「夢、、、?」
真っ暗な夢の中なのか。
現実なのか。
はっきりしない空間に囚われた岩田鋼は、死んだばかり。
死んだ自覚が無い。
「おい、アンタが、コウか、、、それともイワちゃんか?どう呼べば良い?」
暗闇から呼ぶ声が聞こえる。
「誰、、、(誰だか分からないけど、どう呼ぶかは好きにしてくれ。)」
暗闇の声は笑った。
「ハハハ、いくらなんでも端折り過ぎだな。思考と口が追い付いてないぜ。」
「・・・(ここはどこだ。)」
「おいおい、テレパシーかよ。喋るの苦手な音楽家はこれだから困る。ベートーベンを転生させた時もそうだ。やつの場合は、聞こえてるのに聞こえてないフリをして話を進めやがったからな。人間って、めんどくせぇな、、、」
「ベートーベン、、、くるくる。(髪がクルクルしてる人、、、)」
「そいつぁベートーベンじゃねぇ。モーツァルトだな。いや、あの時代のやつらは皆クルクルのカツラ付けてたんだ。てか、今はそんな事を話したいわけじゃねぇ。」
暗闇の声は真剣になった。
「俺はイワちゃんが生み出した『神』だ。いや、イワちゃんだけじゃねぇぜ。地球上に居る、楽器を持った熱いハートとスピードに取り憑かれた人間達が生み出した『奇跡を求める意識の集合体』、とでもいうのか、、」
岩田鋼は勝手に確信した。
「貴方は、、、『メタルゴッド』ッ!!!」
暗闇の声は戸惑いながらも認めた。
「お、おう、呼び方は人それぞれだな。」
岩田鋼は淡い期待を寄せる。
「メタルウォーリアー、、、(にしてくれるんだろうか??)」
暗闇は『否』と言う。
「焦んなって。イワちゃんが『メタルウォーリアー』になりたいのは知ってる。ありゃあ地球にいた奴らが考えたんだ。メタルを極め、体現せし者。それがメタルウォーリアーだ。平坦な道じゃねぇぜ。けど、お前は無念にも『メタラー』のまま死んじまった。大体のやつはそのまま召されちまう。だが、お前の魂は昇天を拒絶し、俺を呼んだ。」
岩田鋼は頷いた。
もう無いはずの無い身体で。
暗闇は理解した。
「分かるぜ。まだ奏でたいんだろう?ロックな野郎は嫌いじゃねぇからな。それ以上にイワちゃんは呼び起こしたがってやがる。『神話』をよぉ。だからイワちゃんを『鋼の使徒』に選んだ。俺はまだ産まれたての神だ。力を示さなきゃならねぇ。お互いにな。」
暗闇がニヤリと笑った気がした。
「お前のその鋼の魂、『メタルソウル』は一際輝いてやがるぜ。日本人の癖によぉ。ヨーロッパで活躍したメタルウォーリアー達も天国でお前を見守ってるぜ。昂ぶる祈りが届けば、力を貸してくれるかもな。。。使えそうなスキルは付与しといた。後はイワちゃん次第だぜ。」
暗闇が手を振った気がした。
「イワちゃん。メタルウォーリアーに、必ずなれよな。」