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あなたの隣にわたしはいない

作者: 橘立花

彼女はいつの私の身の回りの世話をしてくれる。それはそれは、毎日である。

私がソファからずり落ちても数秒した後、彼女が気付いて私をソファに戻してくれる。

世話をしてくれると言っても私は食事を摂ることは出来ない。

だから彼女は私の前でおいしそうに料理を食べてくれる。私に話しかけながら。

彼女は私を心の底から愛していた。誰が見ても一目で分かるくらい。

そう、それがたとえありえないほど歪み切っているものだとしても。


私は彼女の人形なのだ。

正確には、私の体は死蝋化して死んでいる体だ。

何でこうなってしまったかの経緯を話そう。

私達二人が二年ほど付き合っていた頃、彼女が急にこんな事を言い出した。

「この時間が永遠に続けばいいのに・・・」

こんな事は普通に誰もが思う事だ。私ですらそれを願った。・・・しかし彼女の考えは常軌を逸していたのだ。

なんと彼女は私の料理に毒を盛って殺した後、ある条件下の元に私を眠らせた。

そして彼女は時が来るのを待った。そしてその彼女の願いどおり私は死蝋化した死体となって彼女の元に姿を現した。

少し老けた彼女と、そして毒を盛られて死んでからなにも変わらない私。


そして、彼女はそんな私に対して些細な不満を感じていたようだ。

話しかけられても返事を返さない私。キスをされても彼女に絡みつくことが出来ない私。

食事を口に出来ない私。外に出かけることのできない私。

彼女の行為に応える事の出来ない私・・・私は彼女に対して何もしてやる事が出来ない。

何故ならば死んでいるからだ。


「ねぇ、××××。なんであなたは何もしないの?」

私は答えない。

「ちょっと前みたいに明るく話してくれないの?」

私は答えない。

「生き返ってくれないの?」

生物の理論上それは無理だ。一度死んだ人間はどう足掻いても生き帰ることはない。

そもそも私を殺したのは目の前にいる彼女だ。

そんな人間がいったい何を言ってるのだろうか。

第一、人の生き死に土足で踏み込んで捻じ曲げるなど神でもしないだろう。きっと神は神でも死神だろうが・・・。

何故彼女はここまで私という一人の人間に固執するのだろうか。

今の私はもぬけの殻となって何も残っていないのに。

付き合い始めて初々しかった頃の記憶。始めてベッドの上で過ごした記憶。

どれもこれもすべて欠落しているのだ。

そんな内容物をすべて吐き出した空き缶みたいな私に何を感じるのだろう。


_____あなたの隣にわたしはいない・・・いるのは全てをロストした肉の塊。

歪んだ感情で塗り固められた偽りの人形。

近くに居てもとてつもなく遠い存在。

・・・どうして、あなたはそうまでして私を・・・


仙人掌さんから頂いたタイトルを手にして書いたところ、とても短い作品ができました。


今回は内容を練らずに勢いで書いたので、輪郭がはっきりしません。


そして自分の作品の中で最も短いお話となりました。


ここまで読んでくださった読者に感謝です。


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― 新着の感想 ―
[一言] 最後から4行目あたりサンホラしか連想できないww 題名だけでここまでよく広がったなぁ・・・ そういう解釈は全く思いつかなかった。
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