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白銀の王。  作者: 春乃來壱
17/31

17.大切なもの。





あの後、完全に双子(ふたり)だけで話を完結させた輝璃達は妙に気合いの入った様子でむいを連れて奥に歩いていった。

むにむにするだけして置いていかれた碧が呆気にとられたままでいるとフィーが顔を覗き込んでくる。


「ミドリくん大丈夫っすか?」


「あ、うん。驚いただけだから大丈夫」


「カガリくんもユキちゃんもミドリくんのこと大好きなんすねぇ」


時々襲ってくる魔物を倒しながら輝璃達を追いかけているとフィーがニコニコしながら言ってくる。


「それは素直に嬉しいけど。さっきのを考えるとなんだか複雑だなぁ」


「あぁ、あれはきっと……あ、カガリくん達見えたっすよ。追いついたっすね」


フィーが何かを言おうとした時、前に輝璃達の姿が見える。先程倒したゴブリン達の巣があったらしく最後の1匹を倒してちょうど戦闘が終わったようだった。ゴブリンが魔石やコインに変わっていっていた。


輝璃達の方に歩き始めるフィーに先程の言葉の続きを問うと悪戯を思いついた子供のように笑う。


「んー…内緒っす!」


「えっあ、ちょ、フィー!」


フィーが輝璃達の方へ向かってしまったので慌てて碧も追いかける。

輝璃達に追いついた事でフィーが足を止めたので碧も立ち止まる。

そのまま3人に視線を向けるとむいが両手に持っているものの量に驚く。


「むい?なんでそんなにいっぱい魔石もってるの…?」


「えっとね、ユキおねーちゃんとカガリにぃが頑張った!」


「頑張りました!」


「…ん。頑張った」


「大量っすね」


「いや、多すぎるよ?」


むいが持ってるだけでも10個くらいあるのにまだ地面にもコインや魔石が落ちている。


輝璃達が先に行ってから5分も経ってないはずなのに、ゴブリンを倒していった事でレベルもかなり上がったらしく嬉しそうにステータスを見せてくれた。




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

Lv17

名前:神代 輝璃

性別:男

年齢:18歳

種族:人類種

体力:9500/9700

魔力:8500/8500

攻撃力:4500

防御力:5200

命中率:Lv.6

回避率:Lv.7

幸運力:Lv.6

状態異常:ー


役職:言霊使い Lv.2

【 効果⠀】魔力を持った言霊を使える。短い言葉なら強い強制力をもつ。1度に使える上限は3つまで


〖 ライト 〗〖 ウォーター 〗〖 ファイヤ 〗〖 黒霧 〗〖 身体強化 〗〖 影渡 〗



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



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Lv16

名前:神代 雪

性別:女

年齢:18歳

種族:人類種

体力:8000/8200

魔力:8700/8700

攻撃力:3200

防御力:5200

命中率:Lv.6

回避率:Lv.5

幸運力:Lv.6

状態異常:ー


役職:聖女 Lv.1

【⠀効果 】治癒魔法、回復魔法を使用できる。


〖 ライト 〗〖 ウォーター 〗〖 ファイヤ 〗〖 光刃 〗〖 魔力回復 〗〖 ヒール 〗



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈





「一気にこれだけ上がるってどんだけゴブリン倒したの…」


碧も先程の4体を倒した時にレベルは上がったが輝璃達のこのレベルの上がり方はいったいゴブリン何体倒したらなるのだろうか。


さっき初めて討伐経験したとは考えられない早さだなと思いつつ苦笑しているとむいが首を振り否定する。


「ゴブリンも倒したけどー。レベルがいっぱい上がったのは黒熊(ブラックベア)を倒したからだよ」


黒熊(ブラックベア)?」


初めて聞く名前に首を傾げるといつもみたいにフィーが説明してくれた。


黒熊は、見た目はその名のまま大きな黒い体が特徴の熊で、力が強く鋭い爪で攻撃してくる魔物らしい。

気性が荒く、その鋭い爪は硬い岩をも裂くという。


輝璃達がゴブリンの巣にたどり着いた時に偶然、黒熊とゴブリンが争っているところだったので乱入して両方倒したらしい。


「…これで、少しは碧に近づいた」


「きっとすぐに追いついてみせます!」


あぁ、そういえばこの双子(ふたり)、なかなかの負けず嫌いだったなぁと思いだし笑いを堪えながら返事をする。


「じゃあ俺は追い越されないように頑張るね」


その後地面に落ちているコインと魔石を拾い集めているとフィーとむいが同時に同じ方向にパッと顔を向ける。


「2人共どうしたの?」


「おとがした」


「…音って、なんの?」


「たぶんなにかがズレた音、だと思うっす」


「ずれた音…ですか?」


2人が言う音がした方に向かってみると地面に穴が空いていて下に続く、人ひとりがやっと通れるくらいの狭い階段が見えた。中を見てみても暗すぎてどこまで続いているのかが見えない。



「ここって地下があるダンジョンだったの?」


「いや、1階層だけだとおもうっす」


「…どうする?」


少しでも危険を減らす為レベルを上げにダンジョンに来たのに無茶をして何があるかもわからない所に行って怪我をしたら本末転倒だ。


でも何故か、行かなきゃいけない気がした。胸がざわめいて嫌な感じがする。



「…エドにぃ?」


「むいちゃん?」


むいがポツリと呟くとふらりと階段に近づいた。不思議に思った雪が声をかけると、弾かれたように階段を走って降りていってしまった。

突然走っていったむいに驚きながら碧達は急いで追いかける。


階段を駆け下りた先は教室1つ分くらいの部屋のような場所だった。


至る所に蔦がびっしりと張り巡らされていて部屋の中は蔦で埋め尽くされていた。床も天井も、壁に至るまでの全部が蔦の生えた異様な光景。

ただでさえ異様なこの空間を更に異質に思わせるのは()()()だ。血の色を思わせるような真っ赤な石。

部屋の中心に拳くらいの大きさの淡くぼんやりと光る紅い石が天井から伸びた蔦に絡まれ、ぶら下がるようにして浮いていた。


むいは部屋の入口に生い茂る蔦を引きちぎりながら部屋の中心へと向かおうとしていたが、普通の蔦じゃないのかちぎってもちぎってもその穴を埋めるように即座に新しく生えてくるようで、再生力が高く行く手を阻まれて前に進めない。


それでも無理やり進もうとするむいの体には切り傷ができ血が滲み始める。


むいが何故そんなに必死に進もうとするのかが分からないはずなのに、碧の背中に嫌な汗がつたう。

横にいたフィーが震えた声で“…エド兄ちゃん”と呟くのが聞こえた。


「…碧。あの石」


「…ハッキリとはわからないけど2人の大切なものなんだと思う。これ以上むいが傷だらけになる前に俺が連れ戻す。雪、むいの怪我治してあげて。輝璃、みんなのこと頼む」


「…ん。任せて」


「はい…!」


傷だらけになったまま進もうとするむいを無理やり抱き上げて連れ戻し、素早く雪達の居る階段に座らせる。


どこか焦ったように再び立ち上がろうとするむいの頭を撫でて「大丈夫だから」と伝え“ボックス”から双剣をだす。


「…【炎舞】」


無詠唱で“身体強化”をしてから、少しでも傷ついたりしない様に紅い石の周りに“結界”を張る。


少しでも進みやすくしようと“炎舞”で剣に炎を纏わせてから蔦を切って進む。

異常な再生力があるが火に弱い性質は普通の蔦と変わらないらしく、燃え移ったりはしないが切った断面は焼け焦げたまま再生にかなりの時間がかかるようだった。


碧より魔法に詳しいむいが魔法(スキル)を使わなかったのはそれすらも考える余裕がなかったんだと思った。

自分の怪我も厭わないほどに大切なもの。だから、少しでも早く。


「フィーとむいの、所に」



炎を使い蔦を切っていったからか蔦の再生速度は落ちている。

中心に近づけば近づく程わかりやすいくらい強度をましていく蔦の中を息を切らしながら切り進めているとようやく紅い結晶石が手の届くところまで来た。


再生するよりも早く石の周りの蔦を切り、結晶石をブチブチと蔦から引き抜く。


すると途端にあれだけ部屋中に張り巡らされていた蔦が水分が全て抜かれたかのように急激に枯れ始めた。


それを横目で見ながら足で床をトン、と蹴り剣に纏った炎を消し双剣を“ボックス”にしまった。



結晶石を落とさないよう両手で持ったまま急いで4人のいる階段に戻りむいの手にそっと渡すと、大切そうに胸に抱えてから何かを堪えるようにギュッときつく目を瞑った。




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