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こちらメイド探偵会です!  作者: 二見
PA殺人事件
88/123

解決、そして……?

「容疑者の三人を連れてきました」

「ありがとうございます」


 三人を前にして、式は事件の真相を話し始めた。


「このトイレで井島さんという男性が殺害されていました。死因はナイフで胸を一突きされたことによる出血死だそうです。その殺人事件の真相が判明したのでお話しします」

「井島を殺害した犯人がわかったのか!?」

「はい。まあ順に話していきましょう。まずは犯人がどうやって井島さんを殺害したか、という点です」


 式はトイレのドアを指さした。


「事件当時、井島さんはこの個室に入っていました。用を足しているのですから、当然ドアは鍵をかけているはずです。では犯人はどうやって井島さんを殺害したのでしょうか」

「そんなの、被害者が出てくるまで待っていればいいんじゃないか」


 松岡が意見を述べる。


「それだと被害者がいつ出てくるのかわかりません。何十分も経った後に出てくるかもしれませんし、他の人がトイレにいる状態で出てきてしまうかもしれない。それを避けるために、犯人は自分のタイミングで被害者を外に呼び出す方法を使ったんです」

「そんな方法あるのか?」

「ええ、これを使ったんですよ」


 式はポケットから携帯電話を取り出した。


「携帯? まさか電話をかけて呼び出したとか言うんじゃないだろうな」

「だいたい当たりです。ただ犯行時に使った携帯は一つじゃなくて二つですがね。隼人さん、携帯貸してくれませんか?」

「ああ」


 隼人から携帯電話を受け取る。


「やり方は非常に簡単です。まず犯人は一つ目の携帯電話で二つ目の携帯電話に電話をかける。そして着信が着ている二つ目の携帯電話を床に落とし、軽く蹴って被害者がいた個室の窓の隙間に通す。こうすると被害者がいた個室の中に携帯が入っていくんです」


 式は自分の携帯を使ってそれを実践した。

 流石にトイレの床に携帯を落とすのは心情的に嫌だったが、再現するためには仕方がない。


「次に犯人は被害者に『携帯がそっちに行ってしまったので取ってくれませんか?』と頼み込んだ。こうすることで犯人は被害者を個室から出させたんだ」

「いや待ってくれ。それならわざわざ携帯に着信を入れる必要はないんじゃないか?」

「携帯に着信を入れてない状態だと、今すぐ携帯を渡さなくても用を足し終えてから渡せばいいという考えになってしまう。しかし着信を入れることで今すぐにその携帯が必要だから、すぐに渡してほしいという心理にすることができるんです」


 それに加え、着信がきている携帯をドアの隙間越しに渡すのも気が引ける。かといって上から放り投げるのも携帯がどこに落ちるのかがわからない。だから被害者は仕方なく自分から個室を出て手渡しで携帯を渡す必要があった。


「こうしてドアを開けてしまった被害者の口をトイレットペーパーで塞ぎ、胸にナイフを突き刺した。このときナイフの周りにもトイレットペーパーを巻いていたはずです。それは現場に落ちていた血まみれのトイレットペーパーが物語っています」

「そうする理由は?」

「返り血を浴びないためです。ナイフで心臓を一突きするなら、当然勢いよく突き刺さなければならない。となると刺した瞬間に返り血が降り注いでくるんです。何も対策せずにいるとそのまま血を浴びてしまい、トイレから出たときに怪しまれてしまう。それを防ぐためにトイレットペーパーを使用したんですよ」


 式の話に反対する者はいなかった。


「さて、肝心の犯人は誰なのかというと……」


 ここが重要だ。

 一体誰が犯人なのだろうか。


「それはあなたです、松岡さん」


 式が指名したのは、二番目にトイレに入った松岡だった。


「わ、私が犯人!? 何か証拠でもあるのか!?」


 指名された松岡が怒声を上げる。


「証拠ならありますよ。これです」


 式は緑色の柄のナイフを取り出した。


「これは犯行で使用されたナイフなんですが、このナイフに指紋が付着していました。決定的な物的証拠です」

「……ははは、これは大笑いだ!」


 松岡は高らかに笑う。


「そんな罠に引っかかるか! そんなナイフは使われていない! 証拠のねつ造だ!」

「へえ、なんでこのナイフが犯行に使われていないことがわかるんですか?」

「え……?」


 式の言葉に松岡はたじろぐ。


「確かに犯行に使われたのは別のナイフです。しかしあなたは何故それを知っているんですか? 現場を一度も見ていないのに」

「そ、それは……」

「あなたは取り調べの時に不自然なことを言っていた。警察の『被害者とは顔見知りですか?』という発言に対して『いいえ、知りませんよ。見たことも聞いたこともないです』と答えたんです」

「あ……」


 自分の失言に気づいた松岡。


「現場に入っていないということは、あの時点で被害者の顔も見ていないということだ。それなのにあなたは殺害された人物を見たことも聞いたこともない人物だと知っていた。その理由は簡単、あなたが犯人だからです」

「……」

「被害者とは無関係だというのを装うとした結果、墓穴を掘ってしまったわけですよ」


 松岡は何も言い返せなかった。




 その後、松岡は連行されていった。

 動機は逆恨みによるものだった。

 被害者である井島は松岡の取引先だったらしく、松岡が依頼した仕事を断っていたようだ。この依頼を受けてもらえなければ会社に重大な損失を与えてしまう松岡は、何としてでも仕事を取り付けようと思ったが、井島は頑なに断った。

 その結果、松岡は大きな損失を出して降格。減給処分を受けてしまったようだ。その逆恨みで、殺害することを決心したのだという。

 松岡は井島のSNSを監視し、彼が今日友人と遠出しているのを知り、後をつけてこのPAに入った。そして殺害のチャンスだと思い、殺害に至ったようだ。

 事件が終わった式たちは事情聴取のために再び警察署に向かうことになったが、夜も遅いということで後日行くことになった。


「ふう、今日は二回も事件に巻き込まれましたね」


 げんなりした様子で式が呟く。


「大変だったが、お疲れ様」

「ええ、お疲れ様です式くん」


 外に出た式を待っていたのは、先ほどまで通話していた榊だった。

 ちなみに他の二人はまた車で眠っているらしい。


「さ、榊さん……」

「式くん、いきなり通話を切るというのはどういう了見なのですか?」

「い、いやあれはつい勢いで……」


 必死に言い訳する式。


「訳は車の中で聞きましょう」


 学校までの道のりの間、式は榊に説教されていた。


「まったく、つまりですね……」

「せっちゃん、そこまでにしてあげてくれ」

「う……ん」


 騒がしさのせいか、先ほどまで寝ていた春崎が目を覚ました。


「あれ、ここどこ?」

「まだ車の中ですよ」

「そっか。……あの、私ちょっとお手洗いに行きたいんですけど」

「それなら、すぐ行ったところにコンビニがあるのでそこで……」

「ごめん春崎さん。学校まで我慢してくれないかな」


 コンビニに立ち寄ろうと提案した榊の言葉を遮り、式が言った。


「どうしてですか?」

「いや、またどこかに寄ろうとすると事件に遭遇しそうで」

「僕も賛成だ。すまないがもうちょっと我慢してくれ」

「え~、ちょっと無理そうなんですけど……」

「隼人さん急いで!!!」


 必死の剣幕で訴える式。


「わ、わかった!」

「安全運転でお願いしますよ!」


 無事に帰宅できるのか、不安な一行だった。

これで夏休み最後の短編三連続は完結です。

新シリーズは9月下旬頃投稿予定です。

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