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こちらメイド探偵会です!  作者: 二見
ブラッディ・サスペンス
51/123

里中の殺人 中の調査

 家の中は特に荒れている様子もなく、きれいに片付いている。

 すべての部屋をざっと見渡しても、特に異変はなかった。

 部屋のどこかに血が飛び散っているわけでも、血液が拭かれたような跡もない。家の中で犯行が行われたとは考えにくい状況だ。

 式は台所に向かい、食器類を確認する。

 並べられている食器類はどれも乾いていた。


(まあ、仮に誰かが来ていてお茶を用意していたとしても、一晩経てば食器も乾くか)


 冷蔵庫を開けてみると、そこには豪勢な料理がいくつも保存されていた。

 しかし料理には食べられた痕跡はなかった。


(料理に手を付けられていない。ということは、里中先生は料理を食べていなかったことになる)


 生前の里中の話によれば、今回用意した料理は帰ってきた夫と一緒に食べる予定だった。

 それが手を付けられていないとすれば、里中の夫はこの家に来ていないということになる。

 もちろん、里中自身は別の軽食でも食べていた可能性はある。

 何しろ死亡推定時刻が夜遅いので、さすがにそこまで何も食べずに待っていたとは考えにくい。

 この情報を元に、式は推理を始めた。


(この情報からわかることは、里中先生の旦那さんは家に帰ってきていないという可能性か、あるいは旦那さんが犯人で家に帰ってきたすぐ後に里中先生を殺害し、後始末をして逃走したかのどちらかだ。後者はとりあえず置いておくとして、前者の場合だと旦那さんの身に何かが起きたと考えるのが妥当か)


 まず犯人は里中の夫が家に帰る前に何らかの手段で接近し、誘拐あるいは殺害などの方法を取る。次に里中の家に行き、出迎えた里中を殺害して庭に放置する。

 一見筋が通っているように見えるが、この推理通りだとするといくつか現場の状況と合わない点がある。

 一つ目は里中が死んでいた場所だ。

 里中は家の玄関の門の前で死んでいた。ここで気になるのが、何故玄関の前なのかということ。里中の家は門を開けて庭に入り、そこから玄関の扉を開けてようやく家の中に入ることができる。庭に血液が飛び散っていた跡が残っていたことから、犯人は庭で里中を殺害し、その後わざわざ玄関まで運んだことになる。

 やはり何度考えてもこの犯人の意図がわからない。


(次に、どうやって庭で殺害をしたのか、という謎もある)


 玄関の門の隣にはインターホンがある。

 来客はこのインターホンを押してから里中と会話し、その後里中が出迎えて家に入ったという経緯を辿ったはずだ。

 門を開けてから家に入るまでの間に殺害した可能性も考えたが、これでは腹部に刺された包丁の説明がつかない。

 この包丁は里中の家にあったものだ。つまり出迎えたときに殺害したと仮定するならば、この包丁を手に入れる術がないため、凶器にできるわけがなかった。里中が包丁を持ちながら客を出迎えたというのも考えられないだろう。

 つまり、犯人が里中を殺害したのは一旦家に入ってから庭に出た後ということになる。


(犯人の行動をシミュレートしてみよう)


 まず犯人は里中の家を訪ね、中に入る。そして談笑をしている時に頃合いを見てトイレに行くとでも言って席を離れる。その隙に台所から包丁を確保し、どこかに隠す。

談笑が終わって家を出るときに、庭まで里中をおびき出して殺害する。その後死体を玄関の門の前まで置き、逃走した。

 こう考えれば筋が通る。

 だが、やはり疑問は残ったままだった。


(なぜ玄関の前に遺体を置いたのか、そもそも犯人の殺害動機は何なのか。そして犯人は誰なのか)


 この三点だけはどれだけ考えてもわからなかった。


「式くん、何かわかりましたか」


 一通り調べ終わったところで榊が尋ねてくる。


「犯人は少なくとも、里中先生とは顔見知りだと思う」

「その根拠は?」


 式は自分の推理を二人に説明した。


「今回の殺人が外で行われたのは確かだ。じゃあ外で行われたということは、犯人はたまたま外にいた里中先生を殺してそのまま逃走したのかといえばそうではない。犯人は一度家の中に入っているんだ。それは凶器となった包丁が物語っている」

「確か、凶器の包丁はこの家にあったものでしたね。それならば犯人がこの包丁を凶器として使用するなら、一度家に入っている必要がある。そして家に入ることができるならば、少なくとも家に入れるほどには里中先生と顔見知りであるというわけですね」

「その通り。流石に名前も顔も知らない人間が尋ねてきたとして、いきなり家の中に招くとは考えづらい。セールスなどが来ても死亡推定時刻が夜遅くと考えると警戒してインターホンで応対している段階で追い返すだろう。だから家の中に招き入れたということは、少なくとも家に入れても問題ないと判断した人物なんだ」

「問題はその人物が誰なのかという点ですね」


 里中と顔見知りというだけでは、いくらでも当てはまる条件の人物はいる。

 彼女の友人や同僚、仕事で出会った人物、学校の生徒など多すぎて特定するのは困難だろう。

 だが家の中と外にある情報だけでは、この人物を特定することはできない。


「今の情報だけでは犯人が誰なのかはわからない。もっと調査をして新たな情報を入手しないと」

「式くんは、朝霞くんのことはどう思っていますか?」


 この家の付近をうろついていたという目撃証言がある朝霞龍吾。

 彼が犯人である可能性はあるのだろうか。


「彼については、今のところは何とも言えない。確かに里中先生のことを知っている人物ではあるし、犯行時刻付近にこの家のあたりをうろついていたというのは気になる点ではある。けどこのあたりをうろついていただけで犯人になるわけじゃないし、そもそも彼が犯人だとして、死体を門の前に置いた意味もわからない」


 朝霞龍吾については、警察の調べを待つ必要があるだろう。

 今日も学校があるものの、彼が登校してくるとは思えない。


「とりあえず、君たちはこの辺で調査を打ち切りにして、学校に行きなさい。後は僕たちで調べておこう」

「わかりました」

「一応僕も学校側に事情を話すためについていくから、一緒の車に乗って行くかい?」

「じゃあお願いします」


 気分は最悪だが、式たちは学校へと向かった。

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