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こちらメイド探偵会です!  作者: 二見
メイド館殺人事件
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メイドと執事

 そして一週間経った現在、式はこのメイド館と呼ばれる館で働いているのであった。

 メイド館で働いている同僚たちは、式が脅迫状の調査のためにここで働いているという事実を知らない。知っているのは渋沢親子とメイド長の木戸だけだ。


「式くん、そっちの掃除は終わったかい?」


 部屋の掃除をしていた式に、一人の男性が話しかけてくる。


「あ、もうすぐ終わります、冬彦さん」

「そうか。じゃあ終わったらこっちも手伝ってくれ」


 彼の名は荻原冬彦。

 この館で働く二十歳の男性である。

 普段は大学に通っているが、講義が無い日や休日などはこの館で勤務していることが多いようだ。

 年齢は若いもののこの館で働いて二年ほどになるという。式がここで働き始めてからは彼の教育係として世話をしている。

 部屋の掃除を終えた式は、先ほど言われた通り冬彦の手伝いをすることにした。


「いや~式くんが来てくれて助かるよ。ご主人様は男性従業員を取りたがらないからね」

「そうなんですか?」

「ああ。そりゃまあ男からしたら女性がいた方が華があっていいからね。それ以外にも、不用意に男性を雇うとお嬢様のこともあるからだろうね……」

「ああ、そういうことか」


 もしここで働いている男性従業員と自分の娘が親密な関係になったりしたら、親としては心配になるのもわかる。正が男性従業員をあまり雇わないのはこういった側面もあるのだろう。


「じゃあ、俺や冬彦さんは例外って感じですか」

「君は高校生だから、さすがにお嬢様とそういった関係になりづらいと思われているんだろうね」

「それなら、冬彦さんは結構ご主人様からいろいろと思われてたりするんじゃないですか?」

「僕はお嬢様と同じ大学に通っているんだ」


 冬彦は自分と莉奈の関係について語った。

 莉奈とは大学に入学してすぐ受けた講義で出会ったらしい。そこで意気投合し、同じサークルに入っていたこともあった。

 ある日冬彦がバイトを始めようと思い、どこで働くのかを悩んでいた時、莉奈が自分の家で働いてみたらどうかと提案した。給料もそこらで働くよりも数倍高いものだったため、冬彦は二つ返事で了解したようだ。

 初めは正に良く思われていなかったが、仕事を重ねるにつれて信頼を手に入れ、今では一部プライベートの世話まで受けるようになった。


「へえ。そういった積み重ねがあったんですね」

「ああ。最近では娘をどうか、なんていわれることもあるくらいには信頼を得られたよ」

「おお、すごいですね! 冬彦さんも満更じゃなかったりするんじゃ?」

「はは、まあね」


 そっけなく返事をしたように見える冬彦だが、顔が赤くなっているのが式には見えた。


(こりゃ、相当入れ込んでるな)


 その様子をニヤニヤと見ていた式だったが、突然大きな声で呼ばれる。


「ちょっと二人とも! サボってんじゃないわよ!」

「げっ、夏海……」


 その声の主は萩原夏海。式や冬彦と同じくこのメイド館で働くメイドである。

 彼女は冬彦よりも一歳年上で、冬彦と同じ大学に通っている。


「別にサボってなんかないぞ」

「嘘。あんたたちくっちゃべってばっかじゃない」

「少しくらい雑談しながら仕事したっていいだろ。疎かにならなけりゃ」

「ダメよ。話に夢中になってミスでもしたらどうするの」


 冬彦と夏海はお互い譲らず言い合いを続ける。

 これでは仕事にならないので、式は仲裁をすることにした。


「あ、あの~。ここで言いあう方が仕事が進まなくなると思うんですけど……」

「そうだよ。僕たちはここで仕事してるんだから邪魔しないでくれよな」

「ふん、どうだか。それに私は式くんに用があっただけで、あんたには話しかけてないんだけど」

「なんだと!」


 言い返す冬彦を尻目に、夏海は式を連れて行く。

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