29.波止場の攻防
カリフォンとロオンが逃げたジャレティとジェイルザートを追い掛けて走って行くと、辿り着いた先は船が沢山停泊している波止場であった。
「くそっ、何処に行きやがった!!」
「私は向こうを探します。カリフォン隊長はあちらを!!」
「おっしゃあ、任せておけ!!」
ロオンはカリフォンと別れて、手分けして逃げた2人を探して波止場を探し回る。この波止場は意外と広く、もし船に乗って逃げられてしまったら終わりだ。
その為、ロオンは内心でかなり焦りながら逃げた2人を早く見つけなければと思う。
(まずいですね……あの2人が何処に行ったかと言えばここ位しか思い浮かびませんから、何とかして見つけなければ!!)
しかしこの広い波止場には、見渡す限り幾らでも身を隠せる場所がある。
もし逃げた2人と逆の立場だったら、何処かに身を隠して気配を消しつつ騎士団員達が諦めて退散するまで待つだろう、と考えていた。
だが、そんなロオンの耳にヒュンと風を切る音が聞こえて来る。
危険を感じてロオンはそのまま横っ飛びをして地面に転がると、その横っ飛びをする前に自分が立っていた場所に無数のトゲがついた黒い皮の鞭が叩きつけられた。
「しつこい奴等だ、全く」
声のする方を振り向けば、次の自分に対しての一撃をジャレティが振り被っている所が目に飛び込んで来た。
それを見て頭で考えるよりも先に身体が反応したロオンは、咄嗟にまた横っ飛びで転がりながら立ち上がり、その立ち上がる瞬間に愛用のロングソードを素早く鞘から引き抜いた。
「ふっ!」
それと同時に左手に魔力を終結させ、ライトニングボール……雷のボールを作り出してジャレティに向かって投げる。
それはジャレティの鞭に弾かれてしまうが、それで隙を作り出す事には成功して一気に間合いを詰めるロオン。
ジャレティは乱暴で無茶な戦い方をして、パワーに物を言わせたバトルを展開。
そんな体当たりも辞さない様なバトルでは、相手の方がびびってしまい遅れを取ってしまって彼に負ける事もしばしば。
皮の鞭を武器として振るい、広範囲の攻撃を得意とするがその武器の鞭が吹っ飛ばされても無茶な戦い方は変わらない。
そのジャレティに対して、無駄ではあると心の何処かで分かってはいるものの、それでも一応ロオンは騎士団員として形だけの警告をしておく。
「ここまでです、もう諦めなさい!」
「何を言ってるんだか」
「なら実力行使です……ね!」
最後の「ね」を言うと同時に右ハイキックから入るロオン。そのままもう1発右ハイキックを繰り出し、続けて右のミドルキックを繰り出す。
ジャレティはそれを両手で受け止めてロオンの左足を自分の右足で蹴り付け、軸足を蹴る事でバランスを崩そうとする。
「ぐ……っ!!」
しかし、そこでロオンも何とかギリギリで踏ん張った。
(このままではまずいですね!)
ロオンはそう判断し、一旦ジャレティと距離を取る。
距離を取って体勢を立て直したロオンは、ジャレティが繰り出して来る鞭をギリギリでかわしつつ応戦して右のパンチを繰り出す。
だが何とそのパンチを空振ってしまい、ジャレティの左ミドルキックが隙だらけのロオンの腹に入る。
「ぐえ!」
そのハイキックは意外に重くロオンは仰向けに地面に倒れ、そこにジャレティが押さえ込もうと飛び掛かる。
しかし、ロオンも転がってそれをしっかり回避。
そして彼に少し遅れて立ち上がったジャレティの左肩……自分から見た場合は彼の右肩からロオンはロングソードを力一杯斜めに振り下ろす。
それは的確にジャレティの肩から下腹部までを斬り裂いた。
「うぐああ!」
大量の鮮血が飛び、波止場の地面を汚してジャレティの悲鳴が響き渡る。
一方のロオンは斬り裂いたその勢いで、今度は自分の身体をクルリと回し蹴りの様に回転させ、ジャレティに追撃で横薙ぎの一撃。
更に腹部を横一文字に斬り裂かれ、大量の鮮血と共に膝からガックリと崩れ落ち、仰向けに波止場の地面に横たわる体勢のジャレティ。
そのジャレティの胸に真っ直ぐロングソードで一突きにしてしまえば、変な声が彼の口から漏れた数秒後にはピクリとも動かなくなり、彼が絶命したのがロオンにも確認出来た。
と、その時。
(……ん?)
合計3回もロングソードの攻撃を当てたジャレティの死体の胸から、ハラリと1枚の紙が落ちる。
小さく折り畳まれているそれを拾い上げて、広げて黙読で読み始めるロオン。
だがそこには、驚愕の事実が記載されていた!!
「……ええっ、これは……?」
どうやら今回の事件はまだ続きがあったらしく、その計画を阻止する為には今現在まだ逃げているであろうジェイルザートを絶対に探し出して、捕まえて事情を聞き出す必要があるらしい。
素早く紙を折り畳んでズボンのポケットに捻じ込み、ロオンはカリフォンに捜索を命じた方向に駆け出した。
(カリフォン隊長、どうか……ご無事で!!)
その紙に書かれていたのは、これからのバーレン皇国……いや、世界中の未来が変わるかも知れないと言う重要な情報が彼等の手によって手に入れられ、そして実行されようとしている内容だった……。




