28.間違っていた推理
「でも、何で領主の立場であるあんたがそんな偽の宝石なんかを売りさばいていたんだ? 領地を持っていてそれを貸し出しているから金なら入って来るだろ?」
そのカリフォンの率直な疑問の一言に、今度はジェイルザートの顔色が明らかに変わった。
「金なら入って来るだと? ふざけた事言ってんじゃねぇ。この国自体が儲かっていないんだったらその分客が落とす金も少ねぇんだよ。さっきのあんたの推理には間違っている部分もあるんだぜ。この国じゃああんまり稼げねぇからな。そろそろ他の国へと移動させて貰おうと思っていた訳でよ。ネルディアに寄ったのはその下準備の為って訳さ。御前達みたいなネズミもこうしてまだ俺達の周りをチョロチョロしている事だし……よぉっ!!」
その最後のよぉっ、と同時に拘束されているカリフォンの顔面に強烈なキックを入れる。
「ぐっへ!!」
「か、カリフォン隊長!」
口と鼻から血を流しながら悶絶するカリフォンを何とか助けてあげたいロオンだったが、ジェイルザートの部下達がそうさせようとはしなかった。
「じゃあ、俺はこれで失礼するよ。エルフィル、ハーヴィス、こいつ等を後は始末しておけ。水の皇国なら重りでもつけて、それこそ水の中にでも沈めておいてやったら良いんじゃねぇか?」
「分かりました、ジェイルザート様」
「おら達も後で追いつきますので、先に向かってて下さい」
大人しそうなイメージを与える水色のヘアスタイルをしている若い男はどうやら魔術師、そして一人称が「おら」の上半身がタンクトップの姿の青髪の男が槍使いの様だ。
この2人はジェイルザートの部下の中でも幹部クラスの人間らしい。
「と言う訳で、おら達は特に個人的に恨みは無いけど……これも仕事なんだ。悪く思わないで欲しいんだな」
「余計な事に首を突っ込むからこうしてむざむざ死ぬ事になるんだよ。残念だがここまでだった様だな」
2人の幹部は嫌らしい笑みをそれぞれ浮かべながら、ジェイルザートの指示通りに2人の隊長の足に重りをつけ始めた……その時!!
「ぐああっ!!」
「えっ? は、ハーヴィス?」
タンクトップの槍使いハーヴィスの肩に、何時の間にか2本の矢が突き刺さっている。
そしてその矢が飛んで来た方からは、バタバタと慌ただしい足音が数十人……いや、恐らくそれ以上の単位で聞こえて来た。
「全員武器を捨てて、諦めて投降しろぉ!!」
「バーレン皇国騎士団だ!! 抵抗するのなら容赦はしないぞ!!」
「あ、あれは……」
「グラルダー隊長にシュソン隊長、それからジェクト副隊長にアイリーナ副隊長とファルレナ副隊長も!」
あの時、尾行する前にカリフォンとロオンに頼まれて応援部隊を呼びに行っていた騎士団員が、多くの騎士団の部隊を引き連れて駆けつけてくれた。
「くっそお、騎士団じゃないか!!」
「ここは通さない。ジェイルザート様の邪魔をさせる訳にはいかないからな!」
去って行ったジェイルザートに騎士団を追いつかせまいと彼の部下2人は気を吐き、それぞれが愛用の武器を振り回して騎士団に立ち向かう。
数では圧倒的に不利だが、それでも抵抗するしか2人には道は残されていなかった。
だが、それも気休め程度にしかならない。
まずハーヴィスはグラルダーとアイリーナ率いる弓隊に何本も矢を打ち込まれて、全身穴だらけにされた状態で絶命してしまった。
もう1人の幹部であるエルフィルも必死になって抵抗したものの、自分達が2人しか居ない上にハーヴィスが死んだ事で残るは自分1人。
その状況で圧倒的な数の暴力の前には成す術も無く、下手に抵抗したのが仇となってシュソンとファルレナ率いる斧隊の斧の餌食になって、ハーヴィスに続いて死亡してしまうのであった。
「ふぅ危ない危ない、間一髪だったな!!」
「間に合って良かったです」
各隊長のグラルダーとシュソンが2人の重りを外し、その間にジェクトが魔術でカリフォンの顔の怪我を綺麗さっぱりと治療していた。
「でも、まだ戦いは終わっていないですよ」
「そうですね、あの主犯格と見られる2人が逃げています。追わないといけません!」
そのアイリーナとファルレナの一言で、カリフォンとロオンはハッとした顔つきになる。
「そ、そうだ、あいつ等をこのまま逃がす訳にはいかねぇ!!」
そう……幾ら部下や幹部を倒した所で、この一連の事件の主犯格であるあの男を逃がしてしまったら事件は解決した事にはならない。
「まだそれ程遠くには行っていない筈です! ここから先はまだ一本道が続く筈。ですから急いで追い掛ければ何とか追いつけるかもしれません!!」
「だったらここは私達に任せて、隊長達はすぐにあの2人を追い掛けて下さい」
「休暇を台無しにされた恨みを、今こそ存分に晴らす時ですよ!!」
「さぁ行け、後は俺達に任せておけ」
アイリーナ、ファルレナ、ジェクトと3人の副隊長にも後押しされ、カリフォンとロオンは先程そそくさとこの場を立ち去った、あの憎き2人を急いで追い掛けて走り出し始めるのであった。
全ては潰された休暇の恨みを晴らすのと、この事件をしっかりと解決する為に。




