24.弓隊隊長グラルダー
リュディガーとフェリシテを連れて来た、バーレン皇国騎士団弓隊隊長の地位についている41歳のグラルダー・セフバートは、とにかく豪快と言う言葉がぴったりな男で細かい事は気にしないタイプだ。
ただし、それは普段の生活上での話だけである。
自分が隊長を務めている弓隊においては、弓の正確さに関してはかなり細かい事で有名なのだ。
バーレンの隣国のファルス帝国とシュア王国の弓使いの事を勝手にライバル視しており、弓の鍛練は毎日絶対に欠かさない事を決めて騎士団員として日々の職務に励んでいる。
最近は弓隊の副長である女弓使いのアイリーナの事を集中的に鍛えているが、最近彼女に「隊長、身体臭いです」と言われて以来、そのショックを未だに引きずっている。
そんな彼は元々ジェクトと同じく商家の一員として生まれ育ったが、実家を継ぐよりももっと色々な世界を見てみたいと思い、世界中で活躍する事の出来るバーレン皇国騎士団に入る事を強く希望していた。
元々の趣味は狩りで、弓を使って小さな魔物を狩って来てはそれを料理にして食べていた事もあって、自然と弓の腕前も上達したのだ。
しかし、彼が騎士団に入りたいと思う理由はもう1つ存在していた。
それはその趣味の狩りの中で1回命の危険があったからである。
何時もの様にある日狩りに出かけていた18歳の彼は、川の近くの狩場で狩りをしていた所でいきなりその辺りを縄張りとする盗賊連中に襲われた。
最初は勿論逃げようとしたが結構な大所帯だったらしく、あっと言う間に囲まれて逃げ場が無くなってしまい、いきなり躍り掛かって来た1人の盗賊を矢で撃ち殺してしまった。
それが盗賊相手のバトル開始の合図。
勿論その中で、狩りの為に持って来ていた矢を人間に向かって放つ事になったのだが、単純な頭脳しか持たない事が多い魔物とは違って、知能がある人間相手には矢を上手く避けられたり武器で弾かれたりした為に、次第に1人しか居ないグラルダーは劣勢に追い込まれて行く。
が、ここでグラルダーはある作戦を思いついた。
それは近くを流れている川の中に自分から飛び込んで、上手く立ち回る作戦だった。
その場所は川の水深が浅い場所……とは言え大人の身長でも膝まで漬かってしまう様な場所だったが、しかしそれを逆に利用し、川に誘い込んだグラルダーはどっしりと安定した場所から弓を弾く。
彼を追い掛けて川に入って来た盗賊達が、水の抵抗でまともに動けなくなってしまった所を集中的に狙って確実に仕留めて行った。
同じく弓を持っていた盗賊団のメンバーでは彼の当時の弓のテクニックに敵は無く、その弓使いのメンバーから優先的に倒す様にして結果的に盗賊を追い払う事に成功。
武器を持っていても間合いにさえ入られなければ弓の方が断然有利だった事と、地形を上手く利用したその戦い方を咄嗟に思いついた事が彼の命を救った。
そうして近くの村人達が通報してやって来た騎士団員達に盗賊団達は連れて行かれ、その時の活躍が認められて皇国騎士団の弓隊へとスカウトされる切っ掛けになった。
元々騎士団への入団を強く望んでいた事もあって2つ返事でその誘いに乗った彼は、弓以外の武器も訓練してから弓隊へと正式配属され、そこから騎士団の弓のテクニックを学んで、今まで自己流だった弓の技術を更に確かなものにして行った。
そして20歳の時に、騎士団の正騎士昇格試験を突破してから今年で早21年。
趣味の狩りで培った目の良さ、それから弓の技術に山を駆け回った事で手に入れた足腰の強さを武器にして、特に野外でのミッションではその強さを遺憾無く発揮。
その功績が徐々に認められて行き、28歳の時に弓隊の隊長に抜擢されて今もその座を譲る事はしていない。
足腰の強さと同時に大柄な身体も手に入れた彼は、弓を弾くのに背筋の強さが半端では無いのだ。
それと同時にほぼ毎日、他の隊長達より2倍程の時間と量を費やして身体を鍛えているので、筋肉の付き方も服を脱げばがっしりとした体型である。
ちなみに酔うと泣き上戸になり、部下に愚痴をこぼす事が良くあるらしいのも全騎士団の中では有名な話だ。
それから野外のミッションにおいては、宰相であり軍師でもあるロナにアドバイスや作戦立案の手伝いを求められる事が多い。
前にバーレンとファルス帝国との間で戦争があった時にも、野外での活動経験が豊富なグラルダーのアドバイスがロナの戦略を更にレベルアップさせた事で、対立していたファルス帝国を苦しめる1つの原因になった。
勿論その中には自分が使った「敵を川に誘い込む」と言うテクニックも含まれており、事実川の中に誘い込まれたファルス帝国騎士団は、過去のグラルダーが戦った盗賊と同じく川の中に誘いこまれた所で、待ち構えていた弓隊に一斉射撃を食らって大きな被害を出したエピソードがある。
水の皇国と呼ばれるバーレンが、その国土の中に多数の川を有している事でグラルダーの命を救い、そしてファルス帝国騎士団に大きな被害をもたらしたので、彼は2回に渡ってバーレン皇国の自然に感謝する事になった。




