22.再会
「無事だったか、フェリシテ?」
「ええ、何とか私は無事だけど……リュディガーは?」
「平気だ。それよりもこいつ等の仲間が来ない内にさっさと退散しよう。恐らくこのネルディア全域にこいつ等が散らばっているんだと思う。俺がフェリシテを追い掛けている時に、この連中が色々な場所から御前を追い掛けに加わるのが見えた」
「そうなの? そうだとしたら確かにネルディアから逃げた方が良さそうね」
しかし妹のトリス、それからバルドを置いて自分達2人だけで黙って逃げる訳にはいか無い。
「その前にトリスとバルドと合流するのが先だ」
「そうね。だけどここは一体何処なのかしら。実は私もネルディアに来たのは初めてだから、ここの地理には全く詳しくないのよね」
事前に幾らかネルディアの情報を手に入れて調べていたとは言え、この場所に住んでいる地元の人間では無い以上、その全てを知り尽くしている訳では無い。
せめてバルドが居れば……と思いつつ、あの水色のコートの集団に見つからない様に周りを警戒して歩くリュディガーとフェリシテだったが、この世界の神はどうやらまだ自分達に試練を与えるつもりなのか? と考えさせられる出来事がこの後に巻き起こる。
それは水色のコートを着込んで再び目の前に現れた、あのオレンジ色の髪の毛の男だった。
ぶつかってお互いに謝罪したのが全然まだ記憶に新しいその男が、ようやく逃げ切って一息ついている状態の2人の目の前に現れたのは、メインストリートに一旦戻ろうと歩いている時だった。
「……!」
「あ、貴方は!」
「お見事です。いや、感心しましたよ」
パチパチと手を叩き、自分達の部下から良く逃げ切ったと称賛の声を上げるその男だが、水色のコートを着込んでいると言う事は彼もまた、その「部下達」と同じく自分達の敵であるのに変わりは無い。
しかも、今まで自分達を追い掛けて来ていたその集団が着込んでいたのはただの水色のコートだったのに、オレンジ色の髪の毛のその男が着込んでいるコートは至る所に白い模様が刺繍されている。
イディリーク帝国のダリストヴェル山脈で出会ったあの黒いコートの連中と全く同じ展開だ……と、リュディガーはデジャヴを隠し切れない。
「俺達とぶつかった時から怪しいと思っていたが、まさかあんたも俺達を狙ってこうやって追い掛けているって訳か」
「そうですよ。貴方達の情報は私達で共有していますからね。さ、大人しく捕まって下さい」
だが、このコートの集団が自分達を捕まえる目的も、捕まった先で何をされるのかも分からない以上、大人しくついて行く気は更々無いのがこの2人である。
「断る。俺達をどうしても捕まえたい理由があるのは分かるが、その理由が俺達には分からない以上はついて行く気は無い」
「そうよね。こうやって街中で騒ぎを起こしてまで私達を捕まえようとするんだから、良くない事に違いないわ。女の勘がそう告げているもの」
リュディガーもフェリシテも意見が一致していると理解したそのオレンジ色の髪の男は、やれやれと首を横に振って溜め息を吐いた。
「仕方ありませんね。ならばこちらも実力行使と行きましょう」
「実力行使だと?」
「本当にそこまでして私達を捕まえたい理由があるのなら、まずその理由を話すのが先じゃないのかしら? 理由によっては私達が貴方達に着いて行かないとも限らないわよ?」
強引にでも自分達を捕まえたい理由がある。
だけどその理由が分からないんのであれば、ここで自分達は捕まる訳にはいかない。
たったこれだけの事なので、その理由をまず話して欲しいと話を持って行こうとするリュディガーとフェリシテだが、男はどうしても話したくない様だ。
「それは今は言えません。私達に着いて来たらいずれ分かる事ですから」
「どうやら話は平行線を辿るばかりの様だ。それならば悪いがこちらもあんたと同じく実力行使で強行突破させて貰うぞ」
このまま話が進まないとイライラするばかりなので、どいてくれなければこちらも力尽くで通らせて貰う、とばかりにリュディガーは腰のソードレイピアの柄に手をかける。
それを見て、男は呆れた口調で2人に警告した。
「馬鹿な人達だ。素直に私達に着いて来れば怪我はさせない予定だったんですが……少し、痛い目を見て貰いましょうかね」
そう言い終わると同時に、彼の右手の中で何かが煌めいた。
その煌めきを見た瞬間、リュディガーは咄嗟にフェリシテを抱えて横に飛んだ。
一瞬遅れて、今まで2人が立っていた場所に向かってナイフが飛んで行く。
「ふむ、そこそこの反射神経はある様ですね。ではこれはどうでしょうか?」
左手に持っている杖を振りかざし、地面に向かって何かを描く様に横に振り払う男。
杖を持っていると言う事は魔術師だろう、とリュディガーとフェリシテは立ち上がりながら考えるものの、彼が自分達の予想を遥かに超えるレベルの魔術を使ってくると分かったのは、その彼の周りに多量の魔力が集まって行くのがフェリシテに分かったからである。




