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冒険家の子孫の成り上がり  作者: マッハ! ニュージェネレーション
ステージ2(バーレン皇国編):水の皇国
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21.ストリートチェイス

 フェリシテはそのまま足を動かして、ネルディアの裏路地へと入り込む。

 その裏路地にはゴミを入れる為のタルや木箱が置いてあり、それを転がしながら逃げる。

 それに加えて魔術師ならではの逃げ方……つまり氷の魔術を駆使して地面を凍らせ、後ろから追って来る水色のコートの連中を派手に転ばせる事から始まり、風の魔術で路地に散乱していた色々なものを飛ばしてぶつけたりもする。

 それでも数では絶対に敵わないので、どうにかして逃げ切らなければならない。


(リュディガーは一体どうするつもりなのかしら!?)

 自分を先に逃がしてくれたあの青髪の男の事を思い出しながら、自分は必死に逃げるフェリシテ。

 このコートの集団の尾行に気がついてから、リュディガーと交わした約束があった。

「良いか、二手に分かれて逃げよう。逃げ切ってしまえば何とかなると思う」

「上手く行くかしらね?」

「知らん。だがまともに真正面から戦うのは無茶だ。ここはさっさと振り切ってしまった方がお互いに安全だろう。とりあえず二手に分かれて逃げて、何処かで落ち合おう」

「分かった。それじゃあタイミングを見計らって、それぞれが上手く逃げられる様に頑張りましょう」


 こんな約束を交わしていたのだが、後ろから追って来る人間の数を考えてみるとこのまま無事に逃げ切れるかどうかは自分の方がかなり怪しい、と感じるフェリシテ。

 だがそれでも逃げ続けなければいけない。

 必死になって足を動かす彼女の目の前に、今度はそばの家の屋根に続く階段が現れた。

 このまま路地の中を逃げ続けていて、もし挟み撃ちにでもあったりしたらそれこそ逃走劇の終わりである。

 なるべく広くて周りを見渡せる様な場所に出ると、相手に見つかる可能性は高いかも知れないだろう。

 だが、その分周りの状況をしっかりと見渡して自分も逃げやすくなると考えたフェリシテは、一目散にその階段を駆け上がり始める。

 勿論、階段を氷の魔術で凍らせる事も忘れずに。


 そんな彼女から少し離れた場所から、フェリシテを追い掛ける一団を更に追い掛けるのがリュディガーである。

 細身の体格を活かして、先ほど見せた様な空中回転回し蹴りもこなせる身体能力を持っているのだが、それはこのストリートチェイスのシーンにおいても遺憾なく発揮される。

 フェリシテの放った氷の魔術に足を取られ、凍った地面で滑り倒れ込む水色のコートの集団をジャンプで飛び越え、目の前を走る1人に追いつく。

 リュディガーはその追いついたメンバーの襟首を掴み、自分の方に引っ張ってぐるりと身体を回転させ、思いっ切り路地の壁に側頭部から叩き付けた。

「ぐほっ!?」

 そのメンバーが地面に倒れる音を耳で確認しながら、リュディガーは更に走って近くの建物の壁に備え付けてあるハシゴに飛びついた。


 屋上に昇り降りする為のハシゴを一気に駆け上がると、当然その家の屋上に上がる事になる。

 路地と言う事もあって、家と家の間の隙間はそんなに広くない。

 なので、リュディガーが少し助走をつけるだけで難なく隙間を飛び越える事が出来てしまうのである。

 その繰り返しで、フェリシテの魔術で凍った狭い路地を進まずに済むのと、今のフェリシテが何処でどうやってどれ位の人間に追われているのかと言う事が確認出来た。

(向こうの方だな)

 屋上で一旦その場に止まって、ストリートを走り抜ける複数の人影を遠くに確認すると同時にそばに立てかけてあった物干し竿を手に取って、リュディガーも再度駆け出す。


 そのまま屋根の上を進んで追い掛けて行くと、フェリシテが屋上に上がってきたのが自分が進む先に見えたので、彼女を追い掛けて屋上に上がって来た連中の1人に物干し竿を投げつけてぶつける。

「ぐっ!?」

 物干し竿によって怯んだその男を屋上から蹴り落とし、フェリシテを追い掛けている残りのメンバーを目測で大体何人居るか確認して、リュディガーは次の行動に出た。

(フェリシテはどうやら向こうに向かうつもりだな。だとすれば!)


 フェリシテの向かう先が、自分が追い掛けている水色のコートの集団の向かう先でもあるので、そのルートを確認してから一旦コートの集団とは違うルートで進み出すリュディガー。

 煙突等の屋上の出っ張りを身軽な身のこなしで飛び越え、飛び降りる事が出来そうな屋根を発見して迷わずその屋根の上に着地。

 そこから今度はフェリシテの走っている方向に一直線にショートカットする形で駆け抜け、2階部分のその屋根から少し広くなっている路地に飛び降りる形で、クッション代わりにコートの集団の1人を屋根から飛び降りた勢いの凄まじいドロップキックでノックアウトした。


 フェリシテもギリギリで、何とか自分を捕まえようと手を伸ばして来るその集団を押しのけたり、杖で殴ったりして逃げ続けるが、次第に後ろから追い掛けて来る足音が小さくなって行くのが耳で分かった。

(えっ?)

 その違和感に対して思わず振り向いた彼女の目に映ったのは、自分を追い掛けている最後の1人を足払いで転ばせ、その転んだ男の腹を思いっ切り踏みつけて悶絶させているリュディガーの姿だった。

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