15.謁見を終えて
その人物と言うのは、ファルス帝国に自分の左翼騎士団を率いて乗り込んで来たリアン・カナリスだった。
リアンはバスタードソード使いとして有名な存在であり、あの特段厚みのある身体では無いのにどうやったらあんなバスタードソードを振り回す事が出来るのだろうか? と気になっていたらしい。
魔術剣士隊の副隊長であるジェクトもバスタードソードを振り回す事で有名だが、リアンの場合は結構筋肉が付いているからこそ振り回す事が出来る、と言うのをロナ自身も知っていた。
だが、リアンを実際に呼び寄せて演武を見せて貰った後に彼にその疑問を尋ねてみると、どうやら彼も同じく騎士団の制服の下はがっしりと筋肉質らしい。
そして、しっかりと力の使い方を熟知してバスタードソードを振り回すだけの筋肉がついている事が分かってしまい、何だか期待外れな結果に終わってしまったエピソードがあった。
その後は結局、自分は自分で出来るだけの戦い方をしようと言う事で、自分なりの短剣を使った戦い方を騎士団から学びつつ、魔術も組み合わせた我流交じりのテクニックとして今では鍛錬に励んでいる。
そうした生活スタイルが彼の日常だが、宰相と言う立場であるが為に、そうした鍛錬の時間も普段はほとんど取れなくなっているのが現状であり、今のカリフォンとロオンが関わり始めた事件においてこちらでも調べを進めて行かなければならない状況になっている。
元々貴族の出身であり、自分が生まれ育った貴族が宰相のポジションに近い家庭であったが為に、彼が宰相になるのはある意味当然であったとも言えるだろう。
そうして宰相になった彼は、若き君主のシェリスを支える為に今日も活動するのである。
シェリスだけでは無く、そのロナにも謁見と報告を終えたカリフォンとロオンは、自分達の持ち場である騎士団の本部へと向かう。
「良く戻ったな、カリフォン隊長」
「ロオン隊長も良くご無事で、色々大変だったそうですね」
2人を出向かえたのはそのジェクトとシュソンであり、ネルディアにおける今の状況の説明を始めた。
「今の所、そのジャレティの行方は掴めておりません。部隊を派遣して捜索に当たっておりますが……結果はまだ芳しくない様でして」
「そうですか。もしかしたらの話ですが、まだこのネルディアに辿り着いていないと言う可能性も否定出来ませんね」
「あー、成る程なぁ」
ロオンの見立てにカリフォンも腕を組んで納得する。
確かにそのジャレティと言う男がネルディアに向かったと言う情報と、現在そのジャレティがここネルディアに居る、と言う事はイコールとはならない訳だ。
「だったらよ、そのジャレティって奴の特徴を教えてくれ。背格好とか良く身につけている物とか……」
カリフォンの申し出にシュソンがああ、と頷いて答える。
「それでしたら特に目立つ部分があります。彼は中年の男で、緑の髪の毛にあごひげを生やしています」
「よっし分かった。ロオン隊長、行こうぜ!!」
「は、はい! それでは私達は見回りに行って来ます」
「ああ、気をつけて」
ジェクトにも送り出されて、ネルディアの城下町へと2人の隊長は繰り出して行く。
「とは言うものの……幾ら特徴があるとは言え、この人込みじゃあなー」
確かにカリフォンの言う事も最もだった。
ネルディアはバーレンの都であり、ヘルヴァナール鉄道の国内最大の駅もあるから人通りも自然と多くなる。
「私達2人だけでは結構かかりそうですね……ジャレティ様でしたか」
「ああそうだ。さーて、何処から探すかな?」
だがそんな2人の前に、見知った顔の人間達が姿を現した。
「あれ? カリフォン隊長じゃ無いですか」
「ロオンも。どーした御前等。休暇じゃ無かったのか?」
「確か2人一緒に帰って来るのはもっと先だって聞いてましたよ」
「あ……え、何でここに?」
「何でって、やだなぁ。見回りの最中に決まってるじゃないですか」
2人の目の前に現れたのは3人の見知った人物だった。
まずは紫色の髪の毛にあごひげを生やした中年のガタイが良い男が1人。背中には弓を背負っている。
それから茶髪の眉毛が隠れる程で前髪が切り揃えられたパッツンヘアーの女が1人。こちらも男と同じく弓を背負っている。
最後に青髪の斧を背負った目の大きい女が1人。彼女は斧を背負っている。
3人はそれぞれ弓隊隊長のグラルダー、そのグラルダーの副官で弓隊副隊長のアイリーナ、そしてシュソンの副官で斧隊副隊長のファルレナであった。
「ああ、そうか……。俺達は確かに休暇を取っていたけど、そっちには伝わって無いのか? つい先日に起きた爆発事件の事」
「爆発事件?」
思わず聞き返すファルレナだったが、それにボソッと答えたのはアイリーナだった。
「……何か、領主の屋敷が狙われたって言う話でしたっけ」
「あーあー……そういやそんな事がこの前あったなぁ。確かそれに巻き込まれた騎士団の人間って……」
「ええ、私達ですよ」
心底うんざりした口調で、ロオンは苦笑しながらその続きを言った。




