14.皇帝の家臣達
それとは別に騎士団員……特にティレフの目指すポジションには色々と求められるものがある。
まずは体力も重要だが、未来の指揮官として活動する為には戦術もそうだし、戦争の時に天候を読む力の勉強もしなければいけなかった。
これはバーレン皇国だけでは無くて何処の国でも同じ事だが、騎士団員は国民の模範となるべき人間として過ごさなければならない。
となれば儀礼も身につけておかなければ指揮官としてと言う以前の問題で、模範となる騎士団員として失格となるのだ。
儀礼の面に関しては、由緒正しい家柄で生まれ育った為にさほど苦労はしなかったが、戦略や戦術の面では敵軍の動きを見越して作戦を立てなければいけなかったり、その時その場所において利用出来る地形や条件、人員の有無等と言う様々な条件を考えて作戦を立てなければいけなかったので、臨機応変な状況判断が求められるのはティレフもなかなか苦戦していた方だった。
しかし騎士団で最年少でトップになると言う目標を持って入団したからには、そんな所でつまずいている訳には行かない。
なので彼が考えた練習スケジュールとしては、「頭を使って疲れたら身体を動かし、身体を使って疲れたら頭を動かす」と言うものであった。
その交互に勉学と武術に励む事で効率良く目標に一歩ずつ近づいて行く事が出来、限界までどちらとも疲れたら寝ると言う生活を繰り返していた。
そんな生活を15歳の入団から続ける事10年。
既に17歳で特例で正騎士に昇格をしていたティレフは槍隊の隊長に就任していたが、当時の近衛騎士団長が引退する時に彼を後継者に指名した事で、2足のわらじを履く史上最年少の近衛騎士団長への就任が弱冠25歳で決まったのであった。
(厄介だな、裏社会の大物が今回の事件に絡んでいるなんて。これは我が国の危機だ!)
そんな若き近衛騎士団長の彼に守られている立場のシェリスは、跪いているカリフォンとロオンの報告を聞いて、また厄介な事件が起こってしまったのかと頭を悩ませていた。
しかも裏社会の大物絡みの事件となると、とにかく一刻も早くそのジャレティと言う男を見つけなくてはならない。
その捜索をカリフォンとロオンに命じると同時に、ジャレティの事についてもっと調べ上げる様に宰相のロナに頼んで3人を見送ったのであった。
(また国内の厄介事が増えそうですね……)
ファルス帝国との戦争が終わってまだそんなに時間も経っていないのに、裏社会が絡んで来るとなるとまた面倒な話になりそうだ……と茶髪の宰相のロナは額に手を当てて溜め息をこぼした。
ロナ・ディクスはバーレン皇国の若き宰相として知られており、バーレンにおける魔術の分野を受け持っているのもこの男だ。
そもそも彼自身が魔術師の為に、国の政策においても魔術関係の装置や設備等の導入を魔術師の観点から進め、結果的に武術と魔術がバランス良くミックスしたバーレン皇国を創り上げて来た1人でもある。
武術の面に関しては一応彼も鍛錬を積んではいるものの、本来は魔術師なので騎士団の各隊長やシェリスと比べてしまうとどうしてもまだまだだ。
彼は基本的に宰相と言う立場の為に前線には出ないのだが、戦う時は魔術を攻撃用途として使う他に、魔力が切れてしまった場合の策として懐に短剣を忍ばせている。
また戦場では軍師としても活躍し、ファルス帝国との戦争においては地の利を活かした戦術を打ち立てた事でファルス帝国を苦しめた。
それ以外でも常に魔術の勉強は欠かさないし、ファルスやシュアの情勢にも宰相として日々目を光らせている冷静沈着な魔術師の男なのである。
勿論気にかけているのはそのファルスやシュアだけでは無く、その他の国……例えば西の国境で繋がっているイディリーク帝国もそうだし、北の方で繋がっているヴィルトディン王国だって気にかけなければいけない存在だ。
そんなこんなで、常に各国の動きに目を光らせなければならないのは別に自分だけに限った事では無く、何処の国でもそうであろう、と言うのがロナ自身の見解だ。
ただ、そんなロナは時たま大胆な事を仕出かす事がある。
そんな大胆なエピソードの1つが、隣国シュアの魔術師として知られているアーロスを自国の講師としてスカウトした事だった。
彼曰く、これは冗談でも何でも無く本気でスカウトしたつもりだったのだが、その時にはもうシュア王国の騎士団の一員であったアーロスには、自分の国の騎士団に在籍しているから……と当然断られてしまう結果になってしまった。
アーロスのスカウトに失敗した彼だったが、実はそのアーロス以外にもう1人気になっている人物が居る。
自分は魔術以外にも、いざと言う時の為に短剣を懐に忍ばせているだけで無く、その短剣の特訓でたまにカリフォンやロオンと手合わせをして貰う事がある。
しかし彼等より大きな武器を使う人間をファルス帝国との戦争の時に見かけた事があり、その人物に武器の戦い方を1度、わざわざ自国まで呼び寄せてまで見せて貰った事があったのだ。




