11.斧隊隊長シュソン
シュソン・カティレーバーはバーレン皇国騎士団で斧隊の隊長を勤めている。
基本的に斧隊は変わった人間が多いと思われがちなのだが、それはこの隊長のシュソンと副長であるファルレナのイメージによる所が大きい。
シュソンは初対面の人間曰く、真面目で物腰が穏やかそうな人と言われる事が多いのだが、実際そのイメージは真面目と言うのは当てはまっている。
しかし警戒心が強く、初対面の相手には一歩引いた感じで接するタイプでもある。その昔、初対面の相手にいきなり殺されそうになってからシュソンはそう言う性格になったのだ。
元々近衛騎士団で皇族の護衛任務に就いていた父の背中を追いかけて騎士団の門戸を叩いたシュソンは、それまで続いていた港町の平民出身の家柄をひっくり返して、騎士団の中でも精鋭部隊である近衛騎士団の任務に就いていた父を尊敬していた。
なのでそうした父の姿を見て育っていたシュソンは、バーレン皇国騎士団の中でもなるべく上のポジションに行きたいと言う意識が、騎士団に入団したいと言う気持ちと共に子供の頃からあった。
その為、父の知り合いである騎士団員に直々に稽古をつけて貰っていたのだった。
そうして小さな頃からのエリート教育の賜物で、騎士団の戦術や武術等を学んだ彼は晴れて皇国騎士団への入団資格が得られる15歳の時に、ジェクトと同じく入団を果たす事に成功。
そこから見習い騎士として訓練を積んで行ったのだが、その中でエリート教育を受けて来た彼を快く思わない人間もやはり存在していた。
当然そう言った連中からは嫌がらせや無視等を受けて来たが、何よりも父の様な強くて誇れる皇国騎士団員として活躍する事を夢見ていた彼にとって、そうした事は全く意にも介さないものだった。
だが、そのエリート教育を快く思っていなかったのは騎士団の上層部にも何人か居た様であり、平民出身でありながら近衛騎士団に所属していたシュソンの父の事を疎ましく思っている人間も存在していた。
なのでそうした人物達はシュソンの父では無く、息子のシュソンに手を回して圧力をかける事で近衛騎士段への抜擢を阻止していたのである。
そんな事とは露知らず、ひたむきに見習い騎士団員として精進を続けるシュソンであったが、騎士団の見習いの卒業が間近に迫った3年後の18歳の冬に事件が起こる。
父の知り合いと名乗る人物に「父から頼まれた」と言われて食事に連れて行って貰う事になったのだが、その父の知り合いと言う男に違和感を何処と無く覚えたシュソンは、食事の時に飲み物には最初に手をつけずに料理を食べていた。
そして父の知り合いと言う男がトイレに立った隙に、彼の飲み物と自分の飲み物が入ったグラスを交換した。
丁度同じ飲み物だった事が功を奏し、帰って来た父の知り合いが交換した飲み物を飲むといきなり喉を押さえて血を吐き、悶え苦しみ始めた。
「えっ……え?」
そう口からは言葉が出たものの、内心ではこうとも思わざるを得なかった。
(やっぱり毒か……)
調べを進めて行くとその男はそもそも父の知り合いでも何でも無く、シュソンが将来未来の近衛騎士団員になる事を妬んでいた人物の1人であった事が発覚した。
その時は父の知り合いが自分で毒を飲んで倒れたと言う事になったのだが、容疑は完璧には晴れる事は無く、結局彼の近衛騎士団への道は閉ざされてしまった。
しかし、シュソン自身が騎士団の中でも努力していた事は認められていたので、きちんと正規の騎士団員への登用が認められ、結果として1番得意な武器である斧を使う斧隊への入隊が決まった。
その後更に判明した事実によれば、シュソンを殺す事が出来れば賞金が手に入ると言う話も妬んでいた連中の中で出ていた様だが、これは今となってはもう定かでは無い。
この初対面の人間に殺されそうになった事件を切っ掛けに、相手が信用出来る人間と分かれば打ち解けるらしいが、信用出来ないと分かると余所余所しくなってしまう。
武術の面に関しては、その細身の身体からは想像出来ない程の怪力を持つ斧使いである。彼曰く「鍛えても筋肉が表面には出難い」らしい。
副長のファルレナもそうした同じギャップを抱えている為に、そう言った所においても斧隊がギャップの激しい部隊であると見られがちだ。
腹筋も一応割れているが、着やせするタイプと言う事もあってなかなか筋肉質には見えないので、パッと一目見て体格が良い人を見ると羨ましくなる、とシュソンは語っている。
ちなみにファルス帝国の右翼騎士団副団長カノレルと、シュア王国の第2騎士団副団長バリスディとは斧使い同士旧知の仲である。
だが、前にファルス帝国とバーレン皇国の間で戦争があって国が対立している関係もあり、カノレルの方とは現在は絡む事が殆ど無くなった。
それでも、帝国騎士団員の身分を隠したカノレルがお忍びでバーレン皇国にやって来る事もあるので、その時はシュソンも自分が心を開いている数少ない人間の1人として接している。




