表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険家の子孫の成り上がり  作者: マッハ! ニュージェネレーション
ステージ1(イディリーク帝国編):20歳の若者、冒険者になる
8/593

5.日課の訓練

「俺達が行動するのは怪しまれがちだから、この作戦の軸はパルスとヴィンテスがなるべきだと思う。2人は側近とは言え立場としては部隊長だから、指示を飛ばす為に走り回っていてもおかしくは無い。それからローレン様とジャックス様には、城の中に怪しい動きをしている人が居ないかのチェックを御願いしたいのです」

「わかった。密偵にもその事を伝えておこう」

 ローレンとジャックスの任務は即日決行、そしてヴィンテスとパルスは1週間後の任務の日までジアルと一緒にローレンとジャックスの補佐をする事になった。

 ラルソンも勿論それに加わり、まずは王宮内の捜索からスタートだ。

 ……とは言うものの、表向きには今までと変わりの無い生活を続けて行かなければならない。


 会議終了後はそれぞれ持ち場へと戻り、今まで通りの職務に付く。

 兵士部隊のラルソン、ジアル、ヴィンテス、パルスはこれから朝の訓練へと向かう。騎士団の毎朝の日課だ。

 3つの騎士団が合同で訓練に励む事もある為に演習場はとても広く、数千の兵士達が一堂に入っても大丈夫な様に造られているのであった。

 また、訓練場も1つでは無く合計で3つあり大勢の騎士達が訓練出来る様になっている。

 ラルソンとジアルはその内の1つである第1訓練場へ向かう。毎朝訓練場の1つで、隊長と副隊長が日替わりで訓練の指導をしているのだ。


 この国の騎士団の内訳は兵士部隊が全部で約3万、近衛騎士団約2万、そして王宮騎士団が約1万の計6万人となっている。

 毎日約5000人ずつで午前と午後に分けて合計1万人、訓練場3つで3万人ごとの訓練として行なっており、午前のこの最初の訓練では兵士部隊15000人で3つを使う。

 そして午後は王宮騎士団5000人、近衛騎士団1万人の15000人で3つだ。

 残りのそれぞれ半分の部隊は翌日の訓練になり、1日置きのローテーション制になる。

「良し、全員集まったな。……まずは準備運動として剣の素振りから始めるぞ」


 指導としては剣の他にも槍、弓、斧、馬術等一通りの武術の訓練をしておき、得意な武器はあれど苦手な武器は無い、と言うレベルにまで育てる方針を採っている。

 訓練は剣の素振りから始め、その後に日替わりで様々な武器と馬術の特訓をしていく。

 今日のメニューは素振りの後に槍と馬術の訓練だ。

「よーし、素振り止め!! 槍の特訓に移る!! 隣の者とペアを組め!!」

 ジアルの声が響き渡り、今度は槍をそれぞれ武器庫から取りに行く。その間にラルソンとジアルも槍の用意をする。


 ラルソン・フィターティルは兵士部隊の副隊長を僅か27歳と言う若さで勤めている男だ。

 平民出身ではあるが、その若さでこの立場に居るだけの事はあるので実力は並大抵の物では無い。

 入団資格が得られる15歳になるとすぐに騎士団の門を叩き、毎日座学や礼儀作法、武術に馬術を学んだ彼はその努力が実り徐々に地位をステップアップさせて行く。

 そして3年前、遥か遠くのヴィーンラディ王国からここまで流れ込んで来た、不法移民が主体となっている大規模な盗賊を壊滅させる為に前線に出向いた彼は、そこで今の上官となっている腐れ縁のジアルと一緒に果敢に立ち向かった。

 その結果として、兵士部隊の中でジアルに続いて2番目に盗賊の討伐数が多かったのである。

 その功績が認められ、24歳の若さで帝国兵士部隊の副総隊長に就任。

 余り口数は多くないが正義感と真面目さが人一倍強いラルソンは、その地位に恥じない活躍をしようと現在でも知略と武術の両方で勉強と鍛錬を欠かしていない。


 最初は並び順が隣同士と言う事もあり必然的にジアルとラルソンの戦いになるが、特訓でもお互いに手は抜かない。

 2人の内、槍となればジアルが有利だ。

 ジアルは槍の扱いが得意なのに対し、ラルソンは片手剣の扱いが得意なのである。

 的確に打ち込んで行くジアルに対しラルソンは不慣れな槍で苦戦を強いられるが、それでも今まで槍の扱いも特訓して来ただけあって、端から見ている分には互角の戦いだ。

 柄の部分でジアルの槍をガードして、それから素早く身体を捻って攻撃態勢へと持ち込む。


 カン、カンと小気味の良い音が鍛練場に響き渡る。

「ふん、なかなかやるじゃないか」

「それはお互い様だろ……うっ!」

 ジアルの鋭い突きをギリギリでまた回避したラルソンは、そのまま地面に向けて自分の槍をジアルの槍に押し付けて彼の体勢を崩しにかかる。

 テクニックでは自分の方が劣っている分、トリッキーな戦法を使わないと勝てないと思っているからだ。

 予想通り、押し下げられた槍に引っ張られる形でジアルの体勢が前のめりに崩れ――


「っ!?」

 前のめりに崩れたのは自分の方だった、と気が付いた時には、視界がグルンと反転して仰向けに地面に倒れ込んだのが背中の痛みと共にじわじわと実感出来た。

「ほら、御前の負けだ」

 顔の横でジアルの槍の先端が地面に突き刺さっている。

 ラルソンに押し下げられると判断したジアルは咄嗟に槍から手を放し、ラルソンが前のめりにバランスを崩した所で足払いを食らわせ、彼を地面に倒して素早く槍を拾い勝負をつけたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ