6.ややこしい問題
増援を呼びに行く様に配下の騎士達に指示していたロオンのおかげで、戦いの後に駆けつけて来たこの町のその騎士団達によって経営者である絶命した2人とこの違法賭博場の客全てが全員逮捕一掃された。
そして何故あの爆発事件の現場から水色髪の男が不自然な冷静な態度で立ち去ったのかと言う事についてだが、その後の調査で色々と分かった。
2人が町の住人や、賭博場の逮捕された客から聞き出した事を纏めるとこうだった。
その爆発があった場所はこの町で最も大きな屋敷らしく、周りの人間や居合わせた兵士達によればこの辺りの一帯を収める領主の屋敷だったらしい。
「しかし、その領主とやらはあの賭博場でイカサマをして勝ちまくっていて、凄く恨まれていたと言う事か……」
「そうですね。そしてその領主に恨みを持っていたのはあのハルバードのエサシェルと言う方、それからあなたと戦っていた双剣のノースフェンと言う方もそうでした。あの2人はあそこの経営者だったそうですが、その領主様は偽の宝石を売りさばいて資金を得ていた様でして」
「……え?」
「どうもこの事件には、もっとややこしい問題がある様ですね……」
「偽の宝石? どう言う事だ?」
考え込むロオンの発言に目を丸くするカリフォンに対して、更にロオンは続けてこんな事を話し始めた。
「それなんですけど、偽の宝石は今バーレンで出回っている様です。それも中には私達騎士団員達が見破る事が出来ない、まさに宝石職人が精巧に作った様な偽物まであるそうだと、屋敷の使用人達からそう聞き出しました。後ろめたいとは分かっていた様なのですが、結構な大金をその宝石を売りさばく事によって儲けていたらしく、使用人達もやはりお金に目がくらんだりして中には加担していた人間も居ましたのですでに逮捕しております」
「その事実を聞き出した使用人は逮捕したのか?」
「はい。ですが金を握らせて口止めされていたそうですから、偽の宝石の製造に加担していた使用人の方より罪は軽くなると見られております」
「そうか……」
更に言えば、あの賭博場で賭けで負けた時に金の代わりにその精巧な偽の宝石を代金代わりにと言われてあの経営者達に渡していたと言う事実も調べられていた。
そうなれば確かにロオンの言う通り、あの違法賭博場の人間が偽の宝石を掴まされた事で怒るのも恨むのも仕方が無いと言えるだろう、とカリフォンは考える。
「で、当の領主様は爆発事故の現場から見つかったのか?」
だが、そのカリフォンの質問には驚愕の回答がロオンからされた。
「いいえ、領主様の遺体は見つからなかったみたいです。しかしそれとは別に報告しておきたい事がありましてですね。あの賭博場の客の中にジャレティ様の姿を見つけまして。でも、あの戦いの中で逃げられてしまった様です。捜索によればネルディア方面の列車に乗る姿が確認されたとか」
「何だって!?」
バーレン皇国の裏社会を牛耳る存在では無いか、と噂されているのがロオンがあの賭博場で見かけたジャレティと言う男だった。
まさかの発言にびっくりするカリフォンだが、当然ロオンはもう手を打っていた。
「ああ、心配は要りません。城に鷹を飛ばしまして手紙を届けさせております」
「そ、そうか。でも俺達も関わっちまった以上、どうやら休暇は終わりの様だな」
「そうですね。しかし仕方ありません。私達もネルディアに向かいましょう!」
「ああ、勿論だ!!」
と言う訳で休暇を切り上げて、カリフォンとロオンは皇都ネルディアへと舞い戻る事にしたのである。
(ジャレティだか何だか知らねーけど、俺達のせっかくの休暇を台無しにしやがって!!)
そんな怒りをカリフォンは胸に秘めながら、ロオンと一緒にバーレン皇国にも通っているヘルヴァナール鉄道を使ってネルディアへと向かう。
魔力のエネルギーによって動いているこの鉄道は、ヘルヴァナールの世界中を幾つもの路線が通っている人々の足だ。
2人が滞在している町にも鉄道の駅があるので、そこからネルディアまでの路線に乗り込み一直線にネルディアを目指して行くのだ。
勿論馬の方が機動力は高いのだが、レールの上を走って目的地まで一気に辿り着けると言う事に関しては列車の方が断然速い。
だからこそ、馬では無く2人が列車に乗って移動をしている理由が「時間短縮」である。
「しかしそのジャレティって奴は、何であんな場所に居たんだ? それが俺には良く分からない」
それにはロオンも同感だ。
「確かにそれは私も同じ考えです。違法な賭博場ですから、たまには賭け事に興じてみたいと言う裏社会の大物の考え……と言う理由しか私は今の所では思い浮かびませんね」
「まぁ、その理由はそのジャレティとやらをとっ捕まえてやれば分かる事さ。絶対に捕まえてやるんだよ……休暇を台無しにされたんだからなぁ!!」
メラメラと気持ちが熱く燃え盛るカリフォンを、苦笑いしながら隣に座るロオンが見つめながら、2人を乗せた列車はネルディアへと走って行くのであった。




