3.剣士隊隊長カリフォン
そんな熱血漢で有名な剣士隊隊長のカリフォン・ヴィディバーは、元々旅人だったと言う過去を持っている。
今でこそバーレン皇国剣士隊の隊長を務める程の人物だが、16歳から2年間はファルス、シュア、そしてバーレンの3カ国を回って自立の為に旅をしていた。
熱血で直情的で表情が読み取りやすく、常に「自分が最強」と思っている自信過剰な性格で、「負け知らず」とは彼の為にある様な言葉で剣の腕も一流。
旅をする上で、魔物等の強い相手との戦いに備えて剣術を磨く事が何よりも大切であると考えた彼は、14歳の時からひたすら剣術の修行に明け暮れて木剣を振るう日々を過ごしていた。
それから2年経って剣術に自信がついた彼は、バーレンからスタートして次にファルス帝国へと馬車を使わず自分の足で進みながら、商隊の護衛をしたり日雇いの用心棒で生計を立てて、シュア王国に入ってそこからまたバーレンへまた戻って来た。
結果的にファルスで1年、シュアで1年過ごして戻って来た彼であったが、ファルス帝国に住んでいた時に国主催の剣術大会に参加しなかなかの好成績を収めた。
だが、その大会に特別参加して来たファルス帝国宰相のカルソンに敗北した事が未だにに心残りとなっており、何時かリベンジをしたいと意気込んでいる。
またシュア王国に住んでいた時にひょんな事から知り合った現在シュア王国騎士団の第2騎士団長のエリフィルとは、お互いに剣の腕を認め合ったライバル同士なのだ。
そんな旅人時代を過ごし、カルソンに負けた事もあって更に剣術を磨き続けたカリフォンは18歳の時にバーレンに戻って来てから皇国騎士団の門を叩いた。
そこで彼は剣士隊の入隊試験を受けて見事突破し、騎士団での生活がスタートする事になったのである。
自分の剣に可能性を信じて、それだけを頼りにして剣士隊の中でも目覚ましい成果を徐々に上げる様になって行ったカリフォンはその成果を認められ、5年後の23歳の時に剣士隊の隊長に任命された。
各部隊の隊長の1人として期待される若手のホープでもあるのだが、騎士団に入ってからは馬術や部下の育成方法、戦術の勉強も勿論して行かなければいけないので、29歳になった今でも頑張ってそうした方面の勉強を続けている毎日だ。
しかし、やはり剣術には絶対の自信を持っているカリフォンは、どんなに日々の仕事が忙しくても剣の鍛錬の時間を1日に1回は絶対に取る様に決めている。
なのでその剣を使って負ける事だけは、絶対に自分のプライドにかけても許さないとも決めている。
ただ、やはりカリフォンも1人の人間なので勇猛果敢に戦うと疲れが溜まるのは普通の事。
最近は任務で、西のイディリークからやって来たとされる魔物の集団を討伐しに平原を駆け回っていた為に、疲れを癒す目的でロオンと休暇を取ったのであった。
「あの時の魔物はやばい位の多さだったからなー。こっちにも結構被害が出たし、最近の魔物の繁殖力と来たら全くやんなっちまうぜー、全くよ」
「今の時期は繁殖のシーズンですからね。だからこそ気が荒くなっている魔物も多いし、あの時の平原とかで人々が襲われるからこそこの時期の出動も多くなったりするんですよねぇ」
その任務の事を思い出してぼやくカリフォンとロオンだったが、せっかくこうして休暇を貰ったのだから今はとにかく身体を休める事に集中する事に。
この休暇はまだ後3日残っているので、ゆっくりと休むつもりでここまでやって来たカリフォンとロオン。
だが、家にばかり居てもつまらないので、身体を訛らせてはいけないとトレーニングも含めてカリフォンはロオンと手合わせをして貰う事にした。
使うのは勿論真剣では無く、騎士団でも使っている訓練用に刃を潰したロングソードである。
「たまには身体を動かさないとな。うっしゃー、行くぜ!」
「なるべく全力で行きましょう。後、魔法はどうします?」
「別に使っても良いぜ」
「分かりました。でもそれだけは手合わせですから軽いものにします」
「りょーかいりょーかい。じゃあ、行くぜ!!」
先に突っ込んだのはカリフォンだった。低い体勢からまるで獲物を狙う獣の如く素早く突っ込んで行く。
しかしロオンもそのまま立ち尽くしている訳では無い。
しっかりとカリフォンの突っ込みを避けつつ反撃に転じるが、カリフォンもまたそれをブロックしてキックを繰り出す。
旅人として活動している中では我流仕込みの剣術を使っていたので、その時の経験が今になっても存分に生きている。
対するロオンは騎士団で仕込まれた正統派のスタイルでの戦い方であり、非常に洗練されたテクニックを持っている。
プラス、カリフォンには使う事の出来ない魔法を使う事が出来るのでそう言った面でカリフォンと差をつける事が出来るし、回復魔法も使う事が出来るので前衛でも後衛でも活躍出来るオールラウンドタイプだ。
それでも、カリフォンの若手ならではの勢いのある攻撃に若干押され気味なのは、年齢増加による体力の低下や動体視力の低下もあるだろうが、それでも長年培って来たその経験がカリフォンになかなかチャンスを与えようとはしなかった。




