2.皇国騎士団員達の休暇
ヘルヴァナール世界の中において、国の中を何本もの川が流れている事から「水の皇国」と言われているのがバーレン皇国。国自体の経済力は全世界中でも下から数えた方が早いのだが、それでもこの国の人間は穏やかな性格の人間が多い為にその経済力の事を感じさせない平和な情勢を保っていた。
しかし、そんな情勢がある事件を切っ掛けに崩されて行く事になってしまう。
事の発端はバーレン皇国のある町においてその事件が起こり、そこから大きな問題がこの国に降り掛かって来たからであった……。
今年で40歳になった、バーレン皇国騎士団魔法剣士隊隊長のロオン・クラディスは礼儀正しい性格で、側近として自分達の主君であるバーレン皇国の皇帝シェリスに武術を教える事もある。
また宰相であり軍師でもあるロナが戦争中に忙しい時には、彼の代わりに兵士達の指揮を執った経験も持っている。
武器としては大きめのロングソードを使うが、それでも動きは結構速い方。その代わり魔法の詠唱は遅めで、その詠唱の弱点を突かれてファルス帝国右翼騎士団団長のラシェンに敗北した過去を持つ。
またシュア王国の宰相であるアルバスの我流混じりの剣術に興味を持っており、何時か手合わせしてみたいと思っているらしい。
シェリスの武術の師匠と言う事で剣術に関しては抜群だが、魔法剣士隊の隊長を勤める事もあって魔術の腕もそれに引けを取らない程高い。
そんな彼の生まれは皇都ネルディアであるが、10歳の時に親の仕事が国外に転勤になると言う事で一時期親戚の家がある田舎に預けられていた。
その田舎で生活していたある日、森に遊びに行った時に魔物に襲われると言う体験をする。
その魔物から必死に逃げている時に、丁度辺りを見回っていた騎士団の小隊に助けられた事が切っ掛けとなって、自分も騎士団員を目指そうと心に誓ったのが今のこの立場の自分に繋がっている。
それからと言うもの、皇国の騎士団の要は魔法剣士隊と言う情報を手に入れたロオンは主に剣術を中心とした武術の特訓、同時に魔術の特訓を日々する様になった。
そうして騎士団の入団が認められる15歳になるとすぐに騎士団の見習い試験に挑み、5年間の特訓の成果を出し切って見事魔法剣士隊に入隊。
そこから更に特訓を積み、武術も魔術もそれから戦術も儀礼もひた向きな姿勢で学んで来たのだ。
その結果として、入隊から10年後の25歳の時に魔法剣士隊の隊長に任命される事になったので、この瞬間ロオンの目標は見事に達成されたのであった。
今では部下や若手を育てる事に力を入れており、副隊長のジェクトとは騎士団でも長い付き合いになるのでコンビを組んでいる事でも知られているし、実際に割りと大きな事件でロオンとジェクトのコンビが活動している事も多い。
そんなロオンは現在休暇を取って、皇都ネルディアから離れたアサルークの街においてゆっくりと疲れを癒していた。
(最近は凄く忙しかったからな)
たまにはこう言うのも良いか、と羽を伸ばす事にしたのであったが、休暇を取っているのは実は彼1人では無かった。
「ロオンたいちょー、これって何処に置くんだっけ?」
「ああ、それはそっちですよ」
アサルークの街にある彼の別荘である簡素な造りの家に、1人の男が入って来た。
銀髪をオールバックにして背中の真ん中辺りまで伸ばし、赤い上着を着込んだまだ若さを残す男だ。
彼はロオンを手伝う代わりに一緒に休暇を取ると言う約束をして、こうしてやって来た同じバーレン皇国騎士団所属の隊長の1人である。
ロオンの容姿に関しては黒髪をうなじ辺りまでやや伸ばした長髪で、背はそこそこ高い方だが、この銀髪の男の方がロオンよりも更に頭1つ分位高い。
今はそんな銀髪の男に、ロオンが長く留守にしていた自分の別荘の掃除を手伝って貰っている所なのだが、その留守にしていた期間が期間なのでホコリが舞い散るので窓を開けて作業をしていたのである。
主要部隊の隊長が2人も同時に留守にして良いのか? との疑問が騎士団の中から上がったりもしたが、現実問題としてそれでも騎士団が上手く回ってくれるのなら問題は無い、と言う事と、彼等の主君であるシェリスからも休暇の許可が下りた。
なので、ロオンと銀髪の男はこうして騎士団の任務を休んで皇都から離れたこの地まで休暇にやって来たのだ。
そもそも彼等が休暇を取ったのは、ある1つの大きな事件が解決したからであり、その事件の疲れを癒す為にゆっくりと身体を癒すを機会が欲しかったからだ。
その銀髪の男はカリフォンと言い、皇国騎士団の一部隊である剣士隊の総隊長を勤める男である。
基本的に各部隊の隊長は余り前線に出て行かないのがバーレン皇国騎士団の特徴なのだが、カリフォンはそんな皇国騎士団のイメージを引っくり返す程に熱血漢で勇猛果敢で、積極的に前線に出たがる珍しいタイプとして知られている。
また剣の腕だけでは無く馬術や体術に関しても、バーレン皇国騎士団の各部隊の中では経験豊富なトップクラスの部類に入り、武勲の数も相当多い。




