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冒険家の子孫の成り上がり  作者: マッハ! ニュージェネレーション
ステージ1(イディリーク帝国編):20歳の若者、冒険者になる
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4.不穏な帝国

 かつて、冒険家ルヴィバー・クーレイリッヒが発見したこの地域はそのまま彼の名前が付いた。

 現在、そこに存在しているのはイディリーク帝国。200年前に発見されたこの地域を現在まで統一して来た帝国だ。山、渓谷、森、川があり、平原もあり、そして帝都がある。

 帝都ではそれらの自然から採れた資源、そしてこの世界に存在する「魔力」を使って独自の文化を発展させて来た。

 しかし、現在の皇帝は若い。それに伴って力不足の所も出て来て、権力は騎士団が力を持つ様になった。

 と言っても騎士団は3つ存在しており、1つは帝国中を駆け回る王宮騎士団。1つは帝国の王族等を守護するのが主な仕事の近衛騎士団。最後の1つが騎士団の下に位置し、王宮騎士団や近衛騎士団の補佐に当たる兵士部隊だ。

 その兵士部隊に所属しているラルソン・フィターティルもまた、騎士団の異変を感じ取っている1人であった。


「……ラルソン?」

「え?」

「ボーっとしてるが……様子が変だぞ?」

 考え事をしていた彼に話しかけて来たのは、彼の上官であり友人でもある兵士部隊総隊長ジアル・ベリウンであった。

「ああ、すまない。少し考え事をしていた」

「しっかりしてくれ。まだ見回りは終わっていないんだからな」

 ラルソンは兵士部隊の副総隊長であり、ジアルからすると副官に当たる。

 見回りを終えて、兵舎の自室へとラルソンは戻って休息を取る。副総隊長ともなれば、自室で剣の素振りをしたりランニングをしたりと言った一通りのトレーニングが出来る程の広さになっているが、部屋自体は簡素な造りである。

 そんな部屋で休んでいるラルソンには、最近疑問に思う事があったのだ。

(いくら権力が俺達より上だとは言っても、最近の奴等の横暴ぶりは目に余る物がある。これはジアルと、それからローレン様にも対策を強化してもらう様に進言してみるか)

 そう、騎士団の権力を振りかざして好き勝手にやる輩も多く、一般人に危害を加えたりと言う事も最近では多くなって来ているのが現状である。

 ついこの間も、酒場で騎士団と傭兵達が乱闘を起こしたばかりだった。


 そしてその翌日、ラルソンは近衛騎士団の団長であるローレン・ロクエルの元へとジアルを引き連れて向かった。

 コンコンとドアをノックすると、落ち着きのある声が返って来る。

「ローレン様、ラルソンとジアルが参りました」

「入れ」

「失礼します」

 ガチャリとドアを開けると、そこには赤い髪の毛に金色の目、近衛騎士団の証である黒い軍服、そして団長の証である金の勲章を胸にぶら下げた男が、革張りの椅子に座って待っていた。

「話は大体聞いた。しかしこちらも対策を進めているのだが、それ以上の権力がどうも裏で動いている様でな……」

「権力?」

 聞き返すラルソンに、近衛騎士団団長のローレン・ロクエルは黙って頷いて続ける。

「俺達より上の王宮騎士団の連中が1枚噛んでいるという話が、ジャックスから寄せられている。

 近衛の奴を5人程密偵として向かわせているのだが、面白い事実が判明した」

「事実……ですか」

「ああ」


 そこまで言うと、ローレンは机の引き出しの中から1枚の地図を取り出す。

 それはこのルヴィバー・クーレイリッヒの地図であった。その地図にローレンは羽根ペンに赤いインクをつけ、印を書き加えた。

「どうもだな……ここの東にある森が怪しいと言う話だ」

「ここですか?」

 そこは古代の遺跡がある為に、定期的に王国では調査団を派遣している。何でここが怪しいと言う結論になるのだろうとラルソンもジアルも疑問を隠せない。

「ローレン様、何故ここが怪しいと?」

「密偵が、この森に入って行く王宮騎士団の連中を見かけたらしい。今の時期は調査団を派遣してはいない筈だからな」

「そうか、なら……」

 そこを重点的に調べれば、と言うジアルの続きの言葉があったが、それをローレンは否定する。

「それをしたいのは山々なんだが、まだ証拠が足りない。そこで、だ」

 ローレンが2人に出した提案は、1週間後に国の中央に存在しているダリストヴェル山脈の調査が兵士部隊と王宮騎士団によって行なわれるので、その時に怪しい行動をしている奴が居ないかどうかをこっそりと調べるのはどうか、と言う物であった。

 それまでは時間があるので、まずはジアルの側近であるパルス・セレラークとヴィンテス・ティクザード、そして会話の中にも出て来た近衛騎士団副騎士団長のジャックス・ラスバートの3人と打ち合わせをする事に。


 ローレンとの会話の後、部屋を出た2人はすぐにその3人に声をかける。ジャックスは盗賊だった過去を持ち、ローレンとはその頃からの付き合いでもあると同時に彼の副官でもある男で、言うなればラルソンと同じ様な立場だ。

 パルスはヴィンテスとコンビを組んでおり、ジアルの側近として心強い男。ヴィンテスも全く同じだが、パルスが熱くなりやすいので彼のブレーキ役になっている。

「私がここに呼ばれたのは……ローレンからの指示だな?」

「そうです、ジャックス様」

「僕もパルスも話は聞いた。協力させてもらうよ」

「そうそう、俺達も王宮の奴等にはうんざりしているんだ!」

「おいパルス、声を控えろ」

「す、すまない……」

 ジアルに注意されたパルスは口を閉じ、ラルソンはジアルと共に作戦会議を開始する。

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