59.戦いの終焉と皇帝の決断
カルヴァルが倒され、ジェバーも倒された結果私兵団のメンバーは諦めたかと思いきや、まだまだ諦めずに最後まで戦い抜くつもりの様だ。
それに対して、兵士部隊の生き残っている兵士達も最後までやる気は満々であり全力で私兵団に立ち向かって行く。
カルヴァルやジェバーはリュシュターの前へと引っ張り出され、後は戦闘が落ち着くのをひたすら待つのみだ。
だがその中で、助け出されたリュシュターの顔に複雑な表情が浮かんでいるのを彼を助け出したモールティは見逃さなかった。
「陛下、いかがなされました?」
「いえ……このままで良いのかと思いまして」
「え?」
リュシュターの意味深な言葉に、宰相のモールティも同じく複雑な表情になる。それを見たリュシュターは、ゆっくりと体内に大量の空気を吸い込み始めた。
そしてそれぞれがまだ戦っている森の中に、思わぬ所から大きなストップの声がかかった。
「皆さん、待って下さいっ!!」
「……陛下?」
声を荒げたのは、この国の皇帝であるリュシュターであった。
「全員ストップです。少し、私の話を聞いていただけませんか」
そのリュシュターの言葉に、戦いを止めて全員が彼の方を見る。
「ローレン団長とジャックス副団長から、カルヴァル将軍達の目的を聞きました。そこで私なりに少し考えてみたんですけれども、このままカルヴァル将軍達を見逃そうと思います。国外に追放すると言う形でね」
その思ってもみなかったリュシュターの提案に、ラルソンとジアルは即座に反対の意を示した。
「へ、陛下! 何を仰るのです!?」
「そうですよ! この者達は我がイディリークに反旗を翻した大罪人です!!」
しかし、そんなラルソンとジアルをリュシュターは手で制する。
「私の話を聞けと言っているのです。黙りなさい」
その皇帝の低い声に、2人は押し黙るしかなかった。
「さて、カルヴァル将軍……貴方は私の国に反旗を翻そうとした。それは間違いありませんね。私が皇帝であるのが不満だから、自分が皇帝になろうとした。それは確かに許される事ではありません。……はっきり言ってしまえば、将軍は国が欲しかったと言う事ですね?」
「……」
しかし、カルヴァルは黙ったまま唇を噛んで答えない。それにイライラしたリュシュターは、そんな彼に向かって鋭い声を上げる。
「どうなんだよっ!! カルヴァル将軍っ!!」
口調まで変化したリュシュターのその声に、カルヴァルはふうっとため息を吐きながら答えた。
「……ああ、確かにそうだ。御前みたいな若いのに国を任せていては、この先が不安だと思ってな。それは前に滅ぼした北の国も同様だった。御前と同様に若い王だったから、国内の統制が取れていなくて滅ぼすのも簡単だった。今回も同じ様にするつもりだったが、やられちまった。俺がこの帝国を欲しがっていたのは事実だ……。御前を誘拐する計画をローレンが提案して来た時には、これしかチャンスが無いって思ったよ。それと一緒にあのダリストヴェルで発見された、危険な鉱物を帝国全土に撒いてやると脅せば帝国は降伏すると思ったが……まさかそれが罠だったなんてな」
それに続けて、今度はジェバーが告白を始める。
「まさか、私達を一網打尽にするメンバーに国王や宰相も絡んでいたとはね。だったら誘拐の時にやけにあっさりしていたのも頷けるよ。警備が少ない所を狙っていったのと、私達は王宮騎士団だと言う事でその実力に自惚れていたのかも知れない。それが祟って、あっさり誘拐できた事に何の疑問も抱かなかったのは私達の大きなミスだったよ。それにローレンやジャックスが、内通者の振りをして私達にあの計画を持ちかけてそれでボロを出させようなんて。あっさり引っかかった私達は、まだまだ国を治める資格が無いって事かもしれないな」
そんなカルヴァルとジェバーの告白にリュシュターは目を閉じる。
「……分かりました。貴方が国が欲しいと言うのであれば、私に提案があります」
「何?」
「隣国のラーフィティア王国だった所を御存知ですね?」
その問いかけにカルヴァルはああ、と首を縦に振って答える。
「確か去年、謎の天変地異で滅んだ国だろう?」
そして目を開き、リュシュターはその言葉に続けた。
「ええ。そしてそれによって国外に逃げ出す人も多数。このイディリークにも移民が多くやって来ています。現在では王国自体が消滅し、すっかりそこの地域は荒れ果てて民ももう居なくなったその国です。……その地域で、本当に貴方に国を治める事が出来る程の能力があるのかどうかを見たい」
その言葉に、カルヴァルははっとした顔になる。
「そうか。御前はそこを俺に再建して欲しいと言う事か」
「はい。本当は首を刎ねたい所ですが、国自体には殆ど被害が出ていません。ですからこの処置と、王国の再建まで貴方達をこのイディリークに入国禁止とします。……ああそれから最後に1つ。もし王国を再建しても武力行使に及んで来る事があればその時は全力で迎え撃ちます」
「……分かったよ」
カルヴァルはその発言に、ふっと笑みを浮かべた。
そうしてカルヴァルを始め、ジェバーや私兵団のメンバーはそれぞれ武器を捨ててこのまま帝都へと兵士部隊、それから近衛騎士団の手によって連行される事になった。それから王宮騎士団の大部分の騎士達もまた、帝国に反旗を翻したと言う事で大部分が一掃されて国外へ追放と言う形になった。




