53.帝国の未来を決める各地の戦い(その2)
すぐさま短剣を振り回してジレフィンとの距離を取り、先程と同じ様に飛び掛かって行くパルス。
連続で前蹴りを繰り出し、更に短剣の攻撃もセットでジレフィンに隙を与えない位の速さで攻め立てて行く。
「く……!!」
そのスピードの速さにジレフィンも困惑気味だ。
そして余りにもその動きに集中しすぎてしまったジレフィンは足元の張っている木の根に足を取られてしまい派手に尻から転倒。
「うおっ!?」
それは明らかに大きな隙であり、それを見逃す筈が無いパルスは一気にジレフィンに向かって飛び掛った。
だが次の瞬間、咄嗟に飛び掛って来たパルスに向かって蹴り出されたジレフィンの足が、パルスの腹部にクリーンヒット。
「ぐほあっ!?」
同じく後ろにしりもちをつく形でパルスも転んでしまい、2人は同時に素早く立ち上がってバトルを再開する。
「このやろおおおっ!!」
「おらあああっ!」
武術とは言えない様な荒っぽい戦い方が2人のバトルになっているが、それでも決着はつけなければならない。
パルスが前蹴りを繰り出してジレフィンを蹴り飛ばせば、お返しとばかりに脇腹にジレフィンの回し蹴りが入った。
が、次の瞬間パルスはその脇腹にヒットした咄嗟に足を掴んで自分の方へと引き寄せる。
そしてある程度まで引き寄せ、ジレフィンの股間目掛けて右のパンチを突っ込む。
「おごほおっ!?」
奇妙な声がジレフィンの口から漏れ、悶絶して頭を下げる格好になった所に思いっ切り右の拳骨を振り下ろすパルス。
「ぐへっ!」
そして止めのもう1発に、渾身の威力を込めて肘を振り下ろした。
「がっ!」
同時に足を離されて、どさりと地面に崩れ落ちたジレフィンは見事に気を失った。
(結局俺、攻撃魔術使わなかったなぁ……)
パルスはそんな事を考えながらも、荒縄でせっせと素早くジレフィンの身体を縛り上げるのであった。
ジアルは目の前から襲い掛かって来るジェバー相手に苦戦を強いられていた。狭い森の中ではこの槍は戦い難いのである。
だが、広場で戦おうとすればまだまだ大勢の兵士達が戦っている為に、自分が見えない死角から隙を突かれてやられてしまう可能性が大だと思い、木々の間でこうして戦っている。
「う~ん、まだまだですねぇ~?」
「ちっ!」
得意の攻撃魔術を、まるで息を吸ったり吐いたりするかの如く当たり前に盛大にジアルに放つジェバー。
そしてジアルが彼に近づこうとすれば素早い動きで逃げられてしまう。それに時折舌を出したりおどけた表情をして挑発して来る。
クールな性格のジアルはそこまで気にならないのだが、とにかく馬鹿にされている事だけは良く分かる。
(腹が立つのは確かだが、だったらその態度を逆に利用してやるのも良いかもな)
そうジアルは考え行動を開始する。まずはとにかく、ジェバーの注意をこちらに引き付ける事が先決だ。
だがまともに近づこうとしても逃げられてしまうので、ジアルは時折木々の間からフェイントをかけて自分がどこから来るのか分からない様にジェバーの気を散らす。
「そうやって私の気を逸らそうとしても、無駄ですよ~!」
ジェバーのそんな声が聞こえて来るが、ジアルは気にせずにその行為を続ける。
先程から自分にされていたジェバーの挑発行為と同じ様に、小さな事でも山となれば段々腹が立つのは人間の気持ちの問題だ。
後は何処までジェバーが乗って来るのかと思うジアルであったが、そんな行為を繰り返す内にある事に気が付く。
(そう言えばあいつ、魔術をさっきからあんまり使わなくなって来ているな?)
もしかしたら……と1つ思い当たる節があるジアルは、それを確かめる為に次の行動を起こす。この予想が当たっていれば自分にも勝機が見えて来る筈だと予想しながら。
ジェバーは主に火属性の魔術を使って来ている。
森が火事にならないのが不思議な位だが、相手もその事を警戒しているのか威力の小さな魔術ばかりを使うのだ。
が、その威力の小さな魔術を始めとしたどんな魔術でも例外無く、この世界の人間の身体の中には必ず存在している『魔力』が魔術のエネルギーとして使われる。
なので魔術を使い過ぎる事によってその魔力が無くなってしまえば、身体を休めて魔力が回復するのを待つしか無いのだ。
だからこそ、ジェバーは出来る限り魔力を温存してここぞと言う時に一気に決めようとしているのではないかと言う仮定を、ジアルは心の中で組み立てる。
(これがもし当たっているのであれば、チャンスは確実にこっちに回って来ている。後はその残りの魔力を使った1発勝負の魔術を、奴にどうやって俺に向かって使わせるかがポイントだが……)
そこで少し危険な賭けであるが成功すれば良し、失敗すれば敗北と言うこちらも思い切って勝負に出る事にするジアル。
まずは木々の陰から飛び出し、ジェバーに自分の姿を見せる時間を長くする。するとジェバーは予想通り自分に対して魔術を使って来た。
「ちょこまかと……!」
それを幾度と無く繰り返し、ジェバーの魔力を減らした所で槍を構えてジアルはジェバーに突進して行く。




