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冒険家の子孫の成り上がり  作者: マッハ! ニュージェネレーション
ステージ1(イディリーク帝国編):20歳の若者、冒険者になる
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2.新たな冒険日誌

 冒険日誌の原本は、今でもイディリークの皇帝が居る城の地下にある書物庫に保管されており、そのコピーがイディリークのみならず世界各国の図書館に並べられて誰でも読める様になっている。

 その冒険日誌に、新しい物が見つかったとなれば世紀の大発見と言っても過言では無い。

「読んでみても良いか?」

「勿論さ。その為に御前にこうして渡しに来たんだからよ。ただし読み終わったら一緒に城まで持って行くぞ。地下の書物庫に保管しなきゃならねえからな。その後でコピーしてもう1度渡すよ」

 とにかく1度読んでみろ、とバルドが急かす様な口調で言うので、リュディガーは1ページ目をペラリとめくってみる。


 だが、そこに書かれているのは思いもよらない事であった。

「ぜ、ゼッザオ……?」

 誰かの人名だろうか、それとも何処かの地名だろうか?

 謎の単語が出て来た事で1ページ目から少し混乱を覚えるリュディガーだが、それはこの先を読み進めて行けば分かるかも知れないと思い更にページをめくって行き、内容を頭の中に記憶しに掛かる。

「この世界の何処かに、まだ見ぬ陸地があると言う事を私は聞いた。しかし、その陸地は未だに見つかっていない。私の命ももうそんなに長くは無いだろうが、その陸地を見つけるまでは冒険者として頑張るつもりでいる……」

 朗読して行く内に何だか気が重くなるリュディガー。


 それはそばで聞いていたバルドも同じ気持ちの様だ。

「何か、初っ端からヘビーな話じゃねえか?」

 その問いかけに無言で頷くリュディガーだが、彼が気になっているのはゼッザオと言う単語とこの冒険日誌を書いたルヴィバーがその陸地を結局見つけられたのかどうか、と言う事だった。

「気になるか?」

「……分かるか?」

 それなりに長い付き合いでもあるこの友人は、自分の事は割と何でも知っているらしいとリュディガーも分かっている。

「ああ。長年御前を見ていりゃ、今のこの本を食い入る様に見つめていて、表情が少し変わったのがちゃ~んと分かったからな。バルド様を舐めるなよ」

「そうか」

 ポーカーフェイスで冷静に呟くのみのリュディガーだが、内心では自分の生い立ちにも深く関係のあるこのルヴィバーが、最終的にこの国を建国するまででどうなったのかを知りたいと思い始めている。


 そもそも、リュディガーの親戚の祖先がそのルヴィバーなのは周知の事実だ。

 勿論バルドも知っているものの、だからと言って彼を特別扱いしたりはせずに1人の人間として接している。

 このイディリーク帝国を建国した王族の家柄ではあるものの、貴族が所有する様な大きな邸宅では無く、下町にある小さめの一軒家に妹と住んでいるので自分が特別な存在だと思った事も特に無い。

 両親が死んでしまってからは傭兵として生計を立てて来たし、妹だってもう働きに出ているのだから王族の生活には興味が湧かないのも当たり前と言えば当たり前なのかも知れないと自分でも思っている。

 一応、王族関係者ではあるので複雑な生まれにはなるが、自分は自分だと割り切って今まで生活して来たしこれからもそうだと思っている。

 しかし、その王族関係者である事で書物庫に保管される前に一足早くこうしてルヴィバーの冒険日誌を目にする事が出来たのだからその点には感謝している。


 そんな彼と長い付き合いのバルドが、彼の思っているであろう事を口に出して訊ねてみる。

「気になるんだったら、自分で旅に出たらどうだ?」

「……!」

 冒険日誌を読んでいたさっきの表情の変化は、それこそバルドの様に長い付き合いのものしか分からない様な微々たるものだった。

 だが、今度は誰の目から見ても分かる位にハッキリとリュディガーの顔が変化したのだ。

「図星か。今までずっと傭兵として食い扶持を稼いで来ていたとは言え、このイディリーク帝国から出た事が無かった御前も、そのルヴィバーの血を少しでも引いているんであれば冒険に対して少なからず興味があるって所だろうな」

「……別に、そんなんじゃない」

 ただ単純に、自分はルヴィバーが残したこの冒険日誌の真実を知りたいだけなんだと思っているリュディガー。


 何れにせよ、こうして見つかった新たな冒険日誌のおかげでまた1人、新たな冒険者が誕生しようとしていた。

 そんな新米冒険者になる決意を固めたリュディガーだが、このイディリーク帝国から……それも帝都周辺をテリトリーにしている為に他の国はおろか、帝国各地の事も余り良く分かっていない様な彼1人をこのまま放り出すのはバルドとしては気が引ける。

「丁度良い機会だ。旅から戻って来たばっかだが、また俺も旅に出るよ。今度は御前と一緒だからな」

「は? まさか……俺について来る気か?」

 啞然とした表情のリュディガーに対し、ガタイの良い大斧使いの茶髪の冒険者である友人は当然だと言わんばかりに腰に両手を当てて胸を張った。

「当たり前だろ。俺の趣味は旅行だ。食い扶持なんて日雇いの仕事でもして色々稼げば良いんだ。それに世界中を旅するに当たって、イディリークから出た事の無い御前よりも確実に俺の方が世界各地の事を知っている。……そう思わないか?」

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