40.採集活動と挨拶回り(?)と信じられない光景
それに対して反応したのはバルドである。
「それなんだけど俺達もびっくりだ。リュディガーも表情には出さないが結構びっくりしているんだろ?」
自分達もまさかあそこまでペラペラと良く口が回り、そして機転が利いたものだとびっくりしているバルドに対して、リュディガーはポーカーフェイスで頷くだけだった。
寡黙でクールと言うよりは無口で暗い性格のリュディガーではあるものの、傭兵として戦場を駆け回って来ただけあってこうした交渉事にも割と慣れている様である。
そのリュディガーとバルドは、ギルドからのミッションである薬草の採集活動をさっさと終えてしまおうと思い、フェリシテにも手伝って貰ってあのリーダー格の部隊長が書き込んでくれた地図を頼りにしつつ、夕暮れの登山道を登って行く。
「おっ、あれが他の部隊だな」
部隊長が地図に書き込んでくれた場所に行ってみると、確かにそこには自分達が先程まで拘束されて、騎士団員達と話をしていたあのテントと同じものが広げられている区画があった。
そしてあのリーダー格が言っていた通り事前に通話魔術で連絡がされていたらしく、リュディガーとパルドの姿を見つけたそこの騎士団員達が話し掛けて来る。
「ああ、あんた達が俺達の仲間に加わりたいって言う冒険者か?」
「そうだ」
「なら話は早いね。それに確か薬草を探しているんだって?」
「そうだよ」
「ふうむ、 これだったらここからもう少し上に行ってみるとある筈だから確かめてみろ」
「分かった。どうもありがとう」
自分達が敵だとみなされていなければ、こんなにもスムーズに事が進むのだと実感しているリュディガーとパルド。
考えてみれば、こう言うスムーズな展開になる事を事前に見越してフェリシテはあの耳打ちをしたのだろうか?
そう考えてみると、もしかしたらかなり頭の切れる女なのかも知れないと2人は思っていた。
しかしそれをストレートにバルドが彼女に聞いてみた所、全く予想外の答えが返って来た。
「えっ? ううん……全然そんなつもりは無かったけど。ただ単純にこうすれば上手く行くんじゃないかって思っただけよ」
「それが出来るだけでも凄いよ」
素直に感心の声を上げるバルドの横で、リュディガーも無言で頷く。
こうやってスムーズに事が運んでいるのも、陛下暗殺計画を立てている騎士団員達に自分達を仲間だと彼女が思い込ませてくれたおかげなのだから。
そのスムーズな展開に感謝しつつ目的の薬草も2箇所、そして3箇所と依頼書に従って採集して行くリュディガーとバルド。
おかげで、日没前に薬草採集のミッションを終える事が出来たのだった。
「よっしゃ、これで終わりだな」
「ああ」
依頼書に書かれている種類の薬草を全て集め終わり、残るは橋の建設のミッションだけだ。
しかし、それは前に決めた通り後回しになる。
問題はここからの話で、リュディガーとバルドがフェリシテから手に入れた陛下の暗殺計画をどうやって活かすかである。
どこにどの程度の部隊を配置しているのかがあのリーダー格が書いてくれた地図で分かるのだが、実際にその暗殺計画を実行するにあたってどうやって動くかまでは聞き出せていない。
それが分かれば、いずれここにやって来るであろう兵士部隊や近衛騎士団員達に情報を流して一網打尽にしてくれるだろうと2人は考えていた。
だがそれをバルドがフェリシテに話すと、彼女は何だか渋い顔になった。
「何だよ、その顔は」
「一網打尽は難しいんじゃないかしらね? だってこれだけの広範囲の山だもん。多数から襲いかかられたら結構厳しいものがあると思うわ」
「俺もそう思う」
「リュディガーまで……」
でも、良く考えてみれば確かにそれもそうかも知れない。
とりあえずまずは何処にどれだけの部隊が配置されているのか、それを把握する事から全てを始める3人だったが、この時点でまさか最後に思い掛けない光景を見る事になろうとは思いもしていなかった。
「どうやら、こいつ等が殺す予定のターゲットが明日の夕方頃にはここに辿り着くらしいんだ」
「となるとかなり速い進軍ペースだな」
「まぁ、私達は色々と寄り道をして来たから遅いのも当たり前よね」
部隊の駐屯地を回りながら頂上まで上がり、リュシュター陛下を追い込む作戦を立てると言う遺跡の前の広場までやって来た3人は今までの情報を纏めてみる。
明日の夕方頃にこのダリストヴェル山脈までやって来る騎士団員達、それから兵士部隊の隊員達を襲ってこの遺跡の前に追い込んで一気に殺害する作戦だと聞いたのだ。
「良し、とりあえず作戦の内容も駐屯している部隊の規模と位置も分かったから、後はこれを何とかして明日ここにやって来る部隊に伝えなければな」
それで全てが終わる。リュシュター陛下の暗殺をこれで食い止められる。
そう信じてまずはこの山からどうやって脱出するかを考え始めたリュディガーは、持って来た荷物の中から望遠鏡を取り出して山の状況を確認する。
しかし、その望遠鏡の中に見えたのはまさかの信じられない光景だった。
「……!?」
「どうした、何か見えたか?」
バルドが横からそう問い掛けると、珍しく感情を露わにした震え声でリュディガーが呟いた。
「何で……あいつがここに居るんだ?」




