38.意外な展開
テントの中に連行された2人は、持ち物を王宮騎士団の団員達に全て回収されてしまった。
その荷物と言うのは、さっき下で回収したあの岩場の薬草も例外では無い。
「荷物は私が見ているから、みんなは尋問をお願いね」
「分かった。……さて、御前達は一体何者だ?」
ここの駐屯地のリーダー格らしき騎士団員がそう尋ねるものの、フェリシテに先程耳打ちされた内容に従って、この時点から作戦を開始するリュディガーとバルド。
「俺達は……あんた達と同じ考えを持つ人間だ」
「何?」
「そのままの意味だよ。あんた達と同じで、俺達も今の陛下にはうんざりしているんだ」
リュディガーに続いてバルドも同じ事を言い出す。
勿論これは本心では無いのだが、フェリシテに耳打ちされた作戦を上手く完了する為には必要なセリフなのである。
「要するに御前達も反乱軍に入りたいと言う訳か?」
「そ、そうだよ」
「ここで王宮騎士団の人間が陛下を殺すと言う作戦を、俺達は別の騎士団員から聞いたんだ」
ここまでフェリシテに「上手く仲間になりたいと伝えて」と耳打ちされた内容を話しているが、自分達の台詞としては99パーセントがアドリブである。
「それは何処の誰にだ?」
「えーと……平原で野営をしていた部隊長からだ」
「ああ、平原の方に向かわせた、パールリッツ平原に通行制限を掛ける様に指示した部隊の事だな」
リーダー格らしい騎士団員の今のセリフからすると、どうやらあの川に流されて行った部隊長の部隊よりもこちらの部隊の方が格としては上らしい。
「それじゃあ、通話魔術で実際にその部隊長に確認してみても良いか?」
「えっ?」
まずい。
通話魔術で連絡されてしまったら、そんなやり取りなんかしていないのがすぐにバレてしまう。
それは止めて欲しいと言いかけたバルドだったが、そのリーダー格の騎士団員のセリフを荷物のチェックをしていたフェリシテが聞いていて、咄嗟に彼女はこんな事を言い出した。
「ちょっと待って。その部隊長なんだけど、彼は川に流されてしまったわ」
「何だって!?」
フェリシテが言った「川に流された」と言う今の話は事実であるが、そんな事を言えば当然こうやって驚かれるのも無理は無い。
「川に流されたって一体どういう事だよ?」
「と言うか、君はその部隊長と確か同じ部隊に居たよな? 何で君1人だったんだ?」
「もしかして、その部隊長が川に流されてしまったって言うのが関係してるんじゃないのか?」
リーダー格の騎士団員以外の騎士団員からも次々に疑問の声が上がるが、フェリシテはチェックをしていた荷物を一旦隅にどけて口を開いた。
「魔物に襲われたの」
「平原のか?」
「そう。パールリッツ平原でスムーズに作戦が進行出来る様に私達王宮騎士団員が魔物を討伐していたけれども、やっぱり自然だから……おそらく仲間の魔物が仕返しの為に襲撃して来たんだと思う。それで部隊長は魔物に襲われて、勢い余って川に流されてしまったの。他に討伐していない魔物が居ないかどうか確認しに行ったんだけど、その時に運悪く魔物に私と部隊長が襲われちゃったの。かなり広い範囲まで討伐していたから、私たちの部隊のメンバーも散り散りになっていたからね。とりあえず駐屯地に戻らなきゃって思って戻ったんだけど、その途中で他の団員達も魔物に襲われてて……私1人の力じゃどうしようも無かったの。帝都に戻ればおびき出した兵士部隊の連中と鉢合わせする可能性があったから戻るに戻れなくて……だからこうやって馬を全速力で飛ばしてここまで来たのよ。そうしたらこの2人がこの駐屯地をこっそり覗き見していたみたいだから、私が捕まえてさっきみたいに突き出したって訳」
ペラペラと良く回るフェリシテの口から出るそのセリフは、パーセンテージで言えば70パーセントは嘘である。
魔物に襲われた、部隊長が川に流されたと言うのは本当であるが、それ以外はまるで嘘。
そしてその嘘を口から吐き出すフェリシテのその目は、どう見ても嘘をついている様な目には見え無かった。
(良くこれだけの嘘が咄嗟につけるもんだ)
(すげーな……女は演技が上手いって何処かで聞いた様な覚えがあるけど、今のフェリシテの姿を見たらそれもあながち嘘じゃないのかも知れないな)
囚われの身となっているリュディガーとバルドは、自分達があくまでもその部隊の事とは無関係であり、ここで初めて出会ったと言う展開になっているのに気が付く。
そしてこの王宮騎士団の部隊に加わって上手く仲間になり、内部事情を更に探ろうと言う作戦だと理解した。
「そうか……それでその部隊長は見つかったのか?」
「いいえ。川に流されて行っちゃって、私もその後に魔物に襲われたから安否の確認なんてとても出来無かったわ」
「なら仕方無いか……とにかく、この2人をどうするか決めないとな」
「王宮騎士団の部隊に加わりたいと言う気持ちは分かるけど、部外者をそう易々と簡単に俺達反乱軍に入れる訳にもいかないしなぁ」
ついに王宮騎士団の1人のその口から出た「反乱軍」と言う単語。
勿論3人はそれを聞き逃さ無かった。




