37.夕暮れのキャンプ地
ようやく身体を休められると思いながら目的の場所まで一気に進む3人だったが、やはり夕暮れ時ともなると討伐されていない魔物が活発化して3人の行く手を阻む。
「バルド、そっちに1匹行ったぞ」
「了解」
「こっちのは私が片付けるわ」
まだまだぎこちないものの、それでも3人のチームワークは徐々に洗練されたものになってきている。
場数をこなせば動きがスムーズになると言うのはどうやら本当らしい。
バラバラと行く手を阻む様に現れた多数の魔物達を、3人はそれぞれの役割を自分で理解しつつ的確に仕留めて行く。
「やっぱり魔物が活発化して来ているな。急いでその広い場所に向かうぞ」
リュディガーがリーダーとなって、とにかく一刻も早くその広い場所に入ってキャンプを張る事を目的とする3人。
マップで確認しつつ進んで行くと、その場所はさっきの薬草を回収した岩場からさほど離れていない場所に存在する広場だった。
やっとの事で身体を休められると思っていたのだが、その近くまで来た時に何故か広場の方から武器と武器を打ち合わせる音が聞こえて来る。
どうやら誰かが戦っているらしい。
「おい、様子が変だぜ」
「俺も同感だ」
「もしかして、もうリュシュター陛下がここに着いてしまったのかしら?」
パールリッツ平原でキャンプを張って休んで、それからこの山脈に入る前の村でも少し休んだとは言え、ここまでの時間を考えると帝都アクティルから辿り着くのは余りにも早過ぎる。
何か様子がおかしい。
「妙だな……」
ちょっと様子を探ってみようと考えたリュディガーは、広場の近くにある岩壁の陰からそっと広場の様子を窺ってみる。
するとどうやら、自分達よりも先にキャンプを張っている人間たちがいる事が分かった。
「あの集団は一体……」
ここからだと遠目なので見え難い部分があるし、夕日で反射して見えない所もある。
そんなリュディガーの後ろから、ヒョコッとフェリシテが顔を出して一緒に確認する。
と、ここでまた彼女が活躍してくれる事になった。
「あれ? あれって私たち王宮騎士団の野営用のテントじゃない」
「ん、そう言えば……」
目を良く凝らしてみれば確かに彼女の言う通り、彼女と出会った時に見かけたあの王宮騎士団の野営に使われるテントだと言う事が判明した。
さっきの武器の音は、暇な騎士団員同士で軽く手合わせをしている音らしい。
「もしかして、あいつ等もここでキャンプを張っていると言う訳か?」
「そうとしか見えないわね」
まさか先手を取られる事になってしまったとは思いもしなかった3人だが、ここでもたついていたら他の王宮騎士団の部隊に見つかってしまう可能性がある。
かと言って、ここ以外に進む事が出来そうなルートは見当たらないし、今更下に戻って麓からまた別のルートを探すと言うのも時間的に厳しい。
「どうする、引き返すか?」
「そうだな。それ以外に俺達が取る方法は無さそうだ」
しかし、可能性として敵に見つからずにやり過ごす方法はやはり引き返すしか無い様だ。
せっかくここまで登って来たのにまさか引き返す事になるなんて……と肩を落としながらリュディガーが先頭で引き返そうとしたものの、その前に見つかるのが早かった。
「おい、そこに居る貴様等!!」
「っ!?」
どうやら、自分達から見えている騎士団員達とはまた別の方向に居た、野営の準備をしている王宮騎士団員に見つかってしまったらしい。
だが、ここでフェリシテが素早く2人に耳打ちをする。
「ここは私に任せて」
「え?」
「上手く行くかは分からないけど、とりあえず私の言う通りにして。自然な対応を頼むわよ」
フェリシテはまず、2人に武器を捨てる様に素早く耳元で囁く。
「大丈夫、後で必ず返すから」
「……信用できないが」
「任せてって言ってるでしょ」
何故か若干イライラした様な口調ではあるものの、ずんずんと肩で風を切って大股で歩いて来る王宮騎士団員の団員達を目の前にして、ここはその作戦とやらに一旦付き合ってみる事にするリュディガーとバルド。
「あれ? お前はフェリシテじゃないか。何で一人なんだ?」
「うん、ちょっと色々事情があってね」
どうやらここに居る王宮騎士団員達と彼女は知り合いの様だ、と今の会話を聞いて判断するそんな2人の目の前で、フェリシテは思わぬ事を言い出した。
「怪しい2人を発見したわ。おそらく冒険者の類だと思うけど、このキャンプを見張っていたみたいだから色々と調べた方が良いかも知れないわね」
「ここを見張っていただって?」
「そうよ。だからとりあえずテントの中に運びましょう」
彼女の意図する事が全く分からない2人だが、そんな彼等にフェリシテはまた耳打ちをする。
「ここは素直に従って。これから先の移動をスムーズにするための作戦があるから」
この流れから考えると、そう言って自分達を騙して敵に寝返る……いや、元々彼女はこっち側の人間では無かったのかも知れない。
彼女と出会ってまだ数日しか経っていない上に、彼女は王宮騎士団の団員なのからこちら側の王宮騎士団と繋がっていても何ら不思議では無い。
迂闊に自分達のパーティーに加えてしまった事を心の中で後悔しつつ、リュディガーはバルドと共に王宮騎士団の駐屯地に連行されてしまう事になった。




