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冒険家の子孫の成り上がり  作者: マッハ! ニュージェネレーション
ステージ1(イディリーク帝国編):20歳の若者、冒険者になる
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36.採集活動も並行します

 だが、せっかくこうしてダリストヴェル山脈までやって来たのだから、事前に3人で確認しあった通りにミッションの1つである薬草の採集もし始める。

 採集する薬草の種類は依頼書に書いてあるのだが、この広い山の中から探すとなるとなかなか骨が折れそうだ。

「目当ての薬草が多く生息している場所の詳細もこの依頼書に書いてあるとは言え、そこが王宮騎士団に占領されていない事を祈るだけだな」

 自分達が今こうして進んでいるルートも、既に先行している王宮騎士団員達の支配下に置かれていると言っても良いだろうとリュディガーは考える。

 現在、まだその王宮騎士団員に出会った訳では無いので確証は持てないが、非常にその可能性は高い。


「とにかく集められそうな奴はさっさと集めちまおう。ここから1番近い場所と薬草は何が何処にあるんだ?」

 馬同士で隣に並ぶバルドに対し、リュディガーは自分の右上を指差した。

「事前に確認した地図によれば、このままもうすぐ行くと分かれ道がある筈なんだ。そこを右に行くと岩場があって、その岩場でしか採れない薬草が1番近いかな」

「よし、ならそこから行こうぜ」

 敵陣の真っ只中に居るとは言え、敵がいない今だからチャンスとばかりに3人はその岩場に向かう。

 やはり先立つものが無ければこの先を旅は続けられないと思っているので、チャンスは最大限に生かすべきだろう。


「おっ、あれかな?」

「おそらくそうだろうな」

 馬で移動出来るのが幸いして、少しきつめの傾斜でありながらそんなに時間も掛からずに目的の岩場に辿り着く事が出来た3人。

 そこには確かに、目当ての薬草が岩場の間から顔を覗かせている区画があった。

「良し、さっさと集めちまおうぜ」

 馬から降りた3人はせっせと持参した袋にその薬草を詰めていく。

 どれ位の量を採集すれば良いか依頼書にも書いてあるので、ミッションを完了するだけならば必要最低限の量を持って行けば良いが、もしかしたらこの先で王宮騎士団と戦ってせっかく集めた物を落としてしまう……なんて事になるかも知れないのでなるべく多めに採集しておく。


「こんなもんで良いか?」

「あー、そうだな。多く持って行くのは良いが、あんまり多く持って行ってかさばるのも嫌だし。まだ他にも集めなきゃいけない薬草があるわけだからな」

 適当な所でその薬草の採取を終わらせ、2つ目の薬草を求めて再び山脈の道を上に登って行く3人。

 しかし、山脈を登って行く時点で気がついた事がある。

「なあ、リュディガー」

「何だ?」

「この山、こんなに魔物の数って少なかったが?」

「俺は良く分からないな。俺は余りこっちの方に来ないし。それに俺に聞くんじゃなくてもっと詳しそうな人間が後ろに居るだろう」

 ややつっけんどんな言い方ではあるが、確かに自分の後ろにこの違和感を説明してくれそうな人間が居ると言うリュディガーの指摘は当たっている。


 なのでリュディガーの言う通り、バルドは彼と横並びになっていた自分の馬を少しスピードを落として、今度はその事情を知ってそうなフェリシテの馬の横に並べて同じ質問をしようと考えた。

 とは言うものの、この距離で今のリュディガーとバルドの会話もバッチリ聞こえていたフェリシテにとっては、すぐにその質問に答える事が出来た。

「ここに王宮騎士団の面々が来ているとなれば、陛下の殺害計画に思わぬ邪魔が入ったら困るだろうから、やっぱりそれなりに駆除は進んでいると思うわ」

「さっきのカーレーヴェン渓谷と同じパターンってわけだな」

 自分達が通ってきた時も、いつもとは明らかに生息している魔物の数が少なかったカーレーヴェン渓谷を思い出して、納得する表情を見せるバルド。

 それでも100パーセント魔物が駆除されていると言う訳では無いので、リュシュターの殺害で考えられる王宮騎士団の待ち伏せもそうなのだが、自然に生息している魔物の脅威も考えて進まなければならない。


 そして、それ以外にもまだ考えなければならない事はある。

 それを言い出したのはリュディガーだ。

「後少ししたらまた日が暮れる。魔物の動きも活発化するだろうし、何処かでまたキャンプを張るしか無いだろうな」

「そうだな。できればどこか広そうな場所がいいんだけど」

 平坦な場所が続いて開けた視界が多いパールリッツ平原とは違って、ダリストヴェル山脈は見ての通り険しい山道だ。

 だからこそ、視界一杯に広がっている木々や岩場と言った自然の遮蔽物にその視界が遮られてしまう。

 しかも王宮騎士団によって本来生息している筈の多数の魔物が幾らか討伐されているとは言え、完全に居なくなった訳では無いので視界の悪い場所でキャンプを張るのは自殺行為に近い。

「ええと、この地図で見てみると……もう少しだけ上に登ってみればちょっと開けた場所があるはずなんだけど……」

 この山脈に入る前のあの小さな村で、食料や武器と一緒に買っておいたこの山脈の地図を広げて、夕日が地図と顔に照り付ける中で確認するパルド。

「ならそこまで行こう」

 リュディガーがそう言ってその開けた場所を目指し始め、この日の進軍はそこで終わりになりそうだった。

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