35.リュディガーの妹トリス
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メイン登場人物紹介にフェリシテ・ルッセルを追加。
バルドの口から突然出て来た、リュディガーの妹の話にキョトンとするフェリシテ。
「な、何でそこで妹さんが出て来るの?」
「ああ、リュディガーの妹は弓とナイフが得意なんだよ」
兄であるリュディガーは勿論の事、その妹のトリスとも付き合いの長いバルドが説明を始める。
「俺達もそうなんだけど、リュディガーの妹……ああ、名前はトリスってんだけど、トリスは王宮騎士団員と面識があるんだよ。と言ってもあんたは恐らく所属している部隊が違うだろうから面識は無いかもな」
「うん。確かに無いわね」
自分の記憶を探ってみても、やはりそのリュディガーの妹だと言うトリスと自分は面識が無い事に気がつくフェリシテ。
「それならそれで良いんだ。実際に俺達も君とは面識が無かった訳だからな。俺達が面識があるのはその一部の王宮騎士団員と、それから兵士部隊の隊員達だけだから。で、トリスはその兵士部隊の隊長であるジアルとか副隊長のラルソンに頼んで、いざと言う時の為にナイフ術とか弓術を教えて貰っているんだ」
「そうなの? だったら確かにその彼女がここに居ればかなり戦力になると見て間違い無いわね」
とは言っても、実際に今はトリスがいないのだからしょうがない。
それに良く考えてみれば、ここで魔物相手に時間を食ってばかりもいられない。
魔物に邪魔をされた結果、リュシュター陛下の殺害を食い止められなかったと言うのが一番最悪な展開だからだ。
なので、ここは別に倒さなくても良い魔物はなるべくスルーして先に進む事にする。
自分達の行く手を阻むものを、全て真面目に相手をする必要は無いからだ。
「ここは馬も通れるんだし、さっさと通り抜けて先に進もうぜ」
「ああ、そうしよう」
言いだしっぺのバルドが馬を駆けさせ一気にスピードを上げたのを見て、リュディガーとフェリシテもそれに続く。
今まで相手をしていた鳥類の魔物はそんな3人に置いすがって行こうとするが、魔物達にもそれぞれのテリトリーと言うものがあるので、ある一定の地点まで追い掛けて来た所で自分の生息テリトリーから外れると魔物達が判断した場合、そのテリトリーに引き返す習性がある。
こう言う魔物達独自の習性があるおかげで、一気に3人はこの険しい渓谷を馬を使って駆け抜ける事ができた。
馬に乗ったまま通れない様な部分は必然的に徒歩になってしまうものの、そう言った場所は少なめだったのも幸いした。
「はー、ようやく渓谷を抜けたな」
「ああ。だが、ここから先が本番だからな。気を抜くんじゃないぞバルド」
「分かってるさ」
カーレーヴェン渓谷を抜けた先には 、この渓谷とダリストヴェル山脈の間にテリトリーを作って暮らしている小さな村があった。
その村で少しだけ身体を休める事にして、ついでに食事や弓も買い込んでおく。
ダリストヴェル山脈に入るに従って、さっきよりも確実に鳥類型の魔物が増えると予想されるからだ。
「魔物対策も良いが、俺達の目的はあくまでもダリストヴェル山脈で行われようとしている反乱軍による陛下の殺害を食い止める手助けをする事だ。俺達は3人しか居ないから、どう考えてもその大群と思われる王宮騎士団の人員には数では敵わない」
村で休み始めたリュディガーが、バルドとフェリシテにここから先の提案をする。
「そこで、俺達は人数の少なさを逆に活かした作戦で進むべきだと思う」
「人数の少なさ……それは動きやすさとか身の隠しやすさとか?」
「そうだ」
フェリシテの問い掛けにリュディガーが頷く。
「何度も言うが俺達は3人しか居ない。人数としては確かに圧倒的に不利な状況だ。しかしそれは裏を返せば、3人しか居ないからこそ山脈の中では木々の間に身を隠しやすいと言うメリットもある。それからいざという時に逃げ切れやすいという利点もあるだろう。もっとも、王宮騎士団は大勢だから人海戦術で俺達を追い掛け回す様になったら一気に不利になるが、その前に逃げ切ってしまえば問題無い」
「それは分かるけど、逃げるって言っても何処に逃げるんだよ? 山の中だと逃げられる様な所も限られて来ると思うけどな」
バルドの指摘に対し、リュディガーはもう1つの作戦を考えていた。
「それは俺にも考えがある。人が隠れるのに凄く良い場所がある。勿論、この作戦にはスピードが関わって来るから時間は掛けられないと思ってくれ」
「スピードね……」
作戦を立てるのは良いが、実際の所ダリストヴェル山脈ではその王宮騎士団の動向を探るのが目的なので、立てた作戦を使わない可能性もある。
あくまでこの先の旅路の中でそうなってしまった時の対処法の1つとして考えてくれ、とリュディガーが最後に付け加えて、準備を整えた3人は村を出ていよいよダリストヴェル山脈へと入っていく。
この先に何が待ち受けているのか。
そしてこの山脈を中で一体何が行われようとしているのか。
それを探るべく、3人は足元と周りの気配に注意しながら馬が進めるルートで山脈を登り始めた。




