31.進軍計画の裏側
そのリュシュターが狙われている、しかも自分達が最後に向かう目的と一緒の場所に向かうと言うのであれば、彼と何処かで鉢合わせる確率は高いだろう。
フェリシテなら王宮騎士団と近衛騎士団がどうやって動くのかを知っているかも知れないので、その進軍計画について聞いてみる。
すると、予想外の答えが返って来た。
「ああ、明日の朝には陛下に見送られる形で出発する予定よ」
「えっ?」
「リュシュター陛下が一緒に騎士団と行動するんじゃないのか?」
「ううん、私はそんな話は一言も聞いていないわよ」
王宮騎士団上層部の計画を知ってしまった彼女だが、その計画の中でリュシュターが帝都を離れるとは一言も聞いていないらしい。
「うーん、それって変な話だな。陛下と面識のあるリュディガーなら分かると思うけど、近衛騎士団の連中まで一緒にこっちに進軍するってなると、当然陛下も一緒に来る筈なんだよな?」
「ああ。近衛騎士団は基本的に王城の警備がメインだし、その中でも陛下の身辺警護や世話をするんだ。だから陛下が絡まない話は基本的に王宮騎士団と兵士部隊の話になると思うんだが……」
近衛騎士団が動く案件となれば、リュシュターに動きが無いのはかなり不自然である。
しかし、それを聞いていたフェリシテが口を挟んで来た。
「ちょ、ちょっと待ってよ。まだ私の話は終わっていないわ」
「え?」
「計画によると、確か部隊を2つに分けるとかって話だったのよ。それで……最初に出発する部隊は兵士部隊がメインの方で、王宮騎士団の計画を阻止する為に密かに動いているって言うジアル総隊長とラルソン副隊長を確実に殺す為に、こっち側と通じている王宮騎士団員を多数入れているのよ」
「要するにあんたが言いたいのは……その部隊で兵士部隊と一緒に動く王宮騎士団は味方だと思わせておいて、何処かで裏切らせるって事か?」
「そうなるわね」
フェリシテの話から何を言いたいのかを何となく察したリュディガーが確認すると、彼女もコクリと神妙な面持ちで頷きながら焼けた肉を頬張る。
「それなら、もう1つの部隊の方でリュシュター陛下と一緒に近衛騎士団が動くって話になるのか?」
「そこまでは聞いていないわ。リュシュター陛下が動くって言う情報までは掴めていないけど、考えられるのは2つの可能性ね。1つは貴方の言った通り、もう1つの部隊の方で近衛騎士団と一緒にリュシュター陛下が動く様に仕向けた上でダリストヴェル山脈で事故に見せ掛けて殺すパターン。それからもう1つは近衛騎士団だけを動かして、警備が手薄になった城で殺すパターンだけど……近衛騎士団の行動範囲を考えると2つ目の可能性は低いと思うわ」
「確かにそうなるよな」
フェリシテの言う通り、近衛騎士団とリュシュターはセットで動くものだと考えているバルド。
それはリュディガーも同じだが、リュシュター陛下を動かす云々は抜きにして兵士部隊のラルソンやジアルを殺すなら何処で王宮騎士団の連中が動くのか? と言う事が気になっている。
その疑問を少ない言葉数でフェリシテに聞いてみると、彼女は食べ終わった肉の刺さっていた鉄串をそばの地面に突き刺して答える。
「私はあの部隊長が率いていた工作部隊の人間なんだけど、もし私が実行部隊の立場だったとして……兵士部隊のメインの隊員をこうやって一思いに殺るのは難しいわね。ラルソン副隊長もジアル総隊長も、王宮騎士団の並みの団員では敵わない程の実力は持っている筈だから。だったら何処か動き難い場所に誘い込んで、そこで一気に仕留めるのが最も有効だと思うし、あの部隊長もそう言う作戦で実行部隊は動いていると話していたからね」
だがそれを聞いていたバルドが疑問の声を上げる。
「おいおい、ちょっと待ってくれよ。その話はその話で良いとして、君は何であそこで捕まっていたんだ? だって君も工作部隊のメンバーの1人なんだろ? なのになんであそこのテントの中に捕まっててしかも俺達にああやってぶつかって来たんだ? 確か君はこう言ってたよな。この話がバレたらあなた達も終わりね……みたいな事をさ。だとしたら何処かで自分が計画をバラすって事がバレてしまったと言う事なのか?」
フェリシテはまたコクリと頷いた。
「そうよ。私は別にリュシュター陛下に不満を抱いている人間では無いからね。だからそんな計画を聞いてやっぱり黙ってはいられなかった。そこで工作部隊の1人として一緒に行動してもっと情報を集めようと思っていたんだけど……その情報を纏めた紙を部隊長に見られちゃって、それで危うく殺されそうになってたんだけど何とか脱出したの。そうして脱出したら貴方達が居て、貴方達を王宮騎士団の仲間だと思って思いっ切りタックルしちゃったの」
あの時、いきなりタックルして来たのはどうやら自分達まで仲間だと思われていたかららしいとこの時リュディガーもバルドもようやく理解出来た。
「でもあんたは慌て過ぎだ。王宮騎士団の制服や鎧で見分けはついただろうに」
「それもそうね……ごめんなさい」




