28.魔物の知能
色々と疑問を頭の中で浮かべつつも、パールリッツ平原での魔物討伐も兼ねて進まなければならない現実は変わらない。
この平原はかなり広いのでなかなか山脈まで辿り着く事が出来ないし、騎士団によって通行制限が掛けられて魔物の討伐が行われたとは言え、その全てが討伐された訳では無い。
それはリュディガーの手元にあるギルドの依頼書からも分かる通り、この世界において自然と魔物は切っても切れない関係があるのだ。
だったらいっその事、ダリストヴェル山脈に辿り着くまでの間にその依頼書に記載されているターゲットの魔物と出合った場合、依頼の遂行も一緒にやってしまおうと言うのがバルドの意見だった。
リュシュターの命が狙われているのなら急がなければならないだろうが、まだ今の時点で騎士団の進軍は始まってもいないし、どのみち自分達も依頼の関係でダリストヴェル山脈に向かわなければならないのだから。
今の平原では通行制限が掛けられているとは言え、その制限を掛けた張本人がバルドと一緒に馬に乗っている状態で、しかもその張本人以外の騎士団員は全滅してしまったので行く手を遮るものは何も無い。
「……バルドっ!」
「魔物か!」
そう、魔物以外は。
ターゲット以外の魔物もかなり多く出て来るが、その全てをいちいち相手にしていたらキリが無い。
しかも武器も防具も耐久力がある事を考えると、その魔物との戦いで酷使した結果、いざと言う時に壊れてしまう様な事になったらまさに命取りだ。
なのでなるべく用の無い魔物との戦いは避けるべく、魔物が出ていない時は普通のペースで進み、魔物が出たらペースを上げて突っ切ってしまう作戦だ。
これから段々と夜になるに従って魔物も活発化する時間になるので、その場合はキャンプを張ってサッサと身体を休めたい。
今の様に魔物が目の前に現れたと分かれば、その魔物が討伐対象のターゲットかどうか馬の上から確認した上で、そうじゃなければ馬から降りずに一気に突っ切る。
今回の魔物集団の中にはターゲットが居ないらしいので、そのまま馬を進ませて集団を横目にペースを上げて先に進む。
無駄な戦いを避ける事で、武器や防具だけでは無く自分の疲労も抑えるのが大事だ。
やがて日も暮れ、自分達もそろそろキャンプの準備をしなければと考え始めた矢先、ようやく大きな川が見えて来た。
「あれを渡れば渓谷まで後少しだけど、今日はここでキャンプを張ろう」
中途半端な所まで進むよりは、キリの良いここでキャンプを張った方が良いと言うバルドの指示に従って、一行は馬を降りた。
だが、そこでまるで見計らったかの様なタイミングで魔物が現れたのだ!
「なっ!?」
「待ち伏せか!?」
魔物の中には知能が高いものもおり、そうした魔物が指揮を執ってこうして待ち伏せをしたり集団で連係プレーをしたりする。
今回はこの川のほとりで待ち伏せを食らってしまったらしい。
恐らく、通行制限を掛けた騎士団によって仲間が討伐されている事を知った魔物達が独自のネットワークを使い、その首謀者である部隊長を狙ってここで待ち伏せを仕掛けたのだろうと推測するリュディガーに対して襲い掛かって来る魔物達。
リュディガーもバルドも部隊長を守ってやる様な義理は無いが、ここで彼を殺されてしまうとダリストヴェル山脈での計画の内容が分からなくなってしまうので、せめてそこまでは生かしておく事にしたのだ。
魔物の数は全部で10匹程。
大きいのから小さいのまで様々な大きさとタイプの魔物軍団で、1匹の攻撃の隙をカバーする様にして別の1匹が攻撃をして来るのでかなり厄介である。
「おらああっ!」
バルドが自分に飛び掛かって来た大トカゲの魔物を、空中で叩き切る形でバトルアックスを振り下ろす。
その横から蛇の魔物がこっそりとバルドに噛みつこうとしていたので、リュディガーが足で踏んで蛇を止めてからソードレイピアで地面ごとその身体に穴を開ける。
縛られている帝国騎士団の2人を気にする余裕は無く、リュディガーとバルドも魔物達と同じくお互いの隙をカバーするスタイルで抵抗を続ける。
(1匹1匹はそんなに大した実力でも無いが、これだけ数が多いと厄介だな!!)
個々は小さな力でも、数が集まればそれはもう立派な戦力だ。
それでも抵抗を続けて確実に魔物の数を減らして行くと、ようやく集団のリーダーらしき魔物が姿を現した。
その魔物を見た瞬間、リュディガーもバルドも表情が変わる。
「……!」
「あっ、こいつはまさか……依頼書のオオカミか!?」
野ウサギ3匹、大型オオカミ1匹、大蜘蛛2匹と言う依頼内容の内、討伐出来たのはまだ大蜘蛛1匹だけ。
それから先は全然魔物が見つからない状態でこうして夜を迎えた訳だが、まさかここに来てターゲットの1匹に出会えるとは。
王宮騎士団と戦って、それから魔物の集団と戦った上でまだこのオオカミを相手にしなければならないのは骨が折れるが、せっかく見つけたターゲットを目の前にして逃げ出す訳にはいかない。
リュディガーとバルドがそれぞれ武器を構えるのに呼応して、オオカミが唸り声と共に飛び掛かった!




