26.奴等の行き先
そして2人が回復したので、情報を聞き出す為に質問を開始するヴィンテスとパルス。
「俺達と同じく、隊長も副隊長も襲われたんですね?」
「ああ。俺もジアルも角笛の音が聞こえて来たかと思ったら、一緒に来ていた王宮騎士団の連中が突然襲い掛かって来たんだ。そこら辺に沢山倒れている見慣れない男達と結託してな」
ラルソンがそこも、ここもと言う様に指を差して行く先を見て、ヴィンテスとパルスも頷く。
「俺達も下の方で角笛の音と共に襲われました。同じ服装の襲撃者達や王宮騎士団の連中にも。またあの尾行の時に見た、カルヴァル将軍と密会をしていた奴の姿もありましたし、お2人が言っていた黒髪に赤い上着の男の姿も。これは恐らく……」
「間違い無いだろうな」
ヴィンテスがそこまで言った所で、ジアルが確信の声を上げた。
「王宮騎士団の連中は、その見慣れぬ襲撃者と結託している。俺達をここで殺そうともした。だからこそ、あいつ等は野放しにしてはおけない」
「ですね。ではすぐに、奴等の足取りを追いましょう!!」
「ああ!」
問題は彼等がどこに向かったのかと言う事であったが、実はもうラルソン達には目星は付いていた。
この登山道を登って行くと、その先の山頂には森が広がっているのだ。
そしてその山頂の森の奥には古びた遺跡があり、身を隠せる場所と言えばそこしか無いと言うのが現状だ。
遺跡の前には広場があり、かなり広い場所なので今の隊員全員がスペースに余裕を持って休める場所でもある。
「シュロウェンの森」と名付けられたこの森は、次第に奥に行くに連れて木々の数が多くなって行く事で有名な森である。
つまり奥に行くに従って迷う可能性が出て来るのだが、そこは帝国があらかじめその先にある遺跡までのルートを1本道で造って置いた為に、迷う人も出なくなった。
そもそもこの山頂までの道を造る過程で発見された遺跡、名前をアルトザと言うのだが、このアルトザの遺跡からは奇妙な物体が発見されているのだ。
もしかしたら王宮騎士団はそれを狙う意味もあって、わざわざここを拠点にしているのかも知れないと考える。
「ところでさ、ここの遺跡から何が見つかったんだっけ?」
ラルソンがその遺跡の事について尋ねてみるとジアルが顎に手を当てて内容を思い出し始める。
「確か……ああ、ドラゴンの部位の化石か何かじゃなかったかな? 相当古いものだって話だから色々と解析が進められているみたいだけど、どうにも詳しい事は分かっていないらしい」
兵士部隊の体調であるジアルでさえも詳しく分かっていない事なのだが、まだその話には続きがある。
「それに、アルトザの遺跡はまだ最深部まで探索が終わっていないんだよ。だからここの調査も王宮騎士団と俺達兵士部隊で何度も調査しているだろ?」
「そうだな、それは知ってるよ」
もしかしたらその遺跡絡みの話かも知れないが、詳しい話はまたカルヴァルヤジェバーに出会って聞き出さなければならないだろう。
「そこに行けば、奴等が居る可能性が高いと言う事ですね」
「そうだ。だけど森での襲撃も考えられるからな。各自気をしっかり引き締める様に」
おおおっ、と兵士達の雄叫びがダリストヴェル山脈の中に響き渡る。
奴等の行き先の見当はもう付いている。後は奴等を追い込むだけだ。
ラルソンもジアルも、ヴィンテスもパルスも、帝国に反乱を起こしたカルヴァル将軍やジェバーをどうしても許す事は出来ない。
だからこそ、ここでもう決着をつけなければならない事は登山道を歩き続ける誰もが分かっているのであった。
登山道は1時間弱で登り切る事が出来るので、そこから先は森の中へと入って行く事になる。
足元の悪い登山道を1時間近くも歩き続ければそれだけで足がパンパンに膨らんで痛くなってしまうので、森の入り口付近で一旦休憩を取って各自身体を休める事に。
時間が無いのは重々承知の上だが、無理して突っ込んで返り討ちにされてしまうよりはここで体力を回復させておいた方が良い。
(絶対に俺達は負けない。何があろうと、誰が来ようとな!!)
そうラルソンは心の中で決意して、拳を力強くギュッと握り締めた。
帝国の未来を決める決戦の時は、もうすぐそこまで来ている。
休憩もして、体力を回復させた一行は森の中へと足を進めて行く。
奴等がこの先の遺跡に待ち受けている筈である。
「いよいよだ……。武器のチェック、体調、各自大丈夫だな?」
そう背後の隊員達にジアルが問うと、ラルソンを始めとする兵士部隊の隊員達から肯定の声が次々に上がった。
「良し、では行くぞ」
そうして森の中へ1歩1歩足を進めて行くと、段々と周りの空気が変わって来るのが兵士部隊の人間達に分かる。
これは先程のダリストヴェル山脈の中と同じもの……殺気だ。
だが、そこへ行くまでの道のりにおいては常に殺気を感じているので気を抜く事が出来ず、我慢を強いられる隊員達。
(何処だ……何処から来るっ!?)
武器をそれぞれ構え、あの集団が何時来ても良い様に臨戦体勢で進んで行く兵士部隊のメンバー達。
こうしてこのまま進んで行く事が出来ればそれで良いのだが、そうも行かないのが現実なのであった。




