24.vs近衛騎士団
ローレンはジアルに向かって行き、愛用のハルバードを振りかざす。
ここで注目したいのはその実力差。ジアルは兵士部隊の総隊長、ローレンは近衛騎士団の団長である。
幾ら団体のトップに立つ人間だからと言っても、その実力差には天と地程の差があるのは戦っている2人も観戦している2人も分かり切っている事である。
だがそれでも、ジアルはこの目の前の裏切り者を到底許す事は出来ない、と言う表情をしている。
副総隊長であるラルソンとは兵士部隊の門を一緒に叩いた同期であるが、実際は自分の方が3つ年上であるジアル・ベリウン。
兵士部隊に入隊した当初からの腐れ縁として、年の差はあれども普段はコンビを組んで活動している。
実家は代々農業をしている家系であるが、3兄弟の三男である彼は農業は継がずにその農業の手伝いで培った体力を活かせる仕事に就きたいと思い、18歳の時に兵士部隊に入隊。
そこからラルソンと競う様にお互いに切磋琢磨しあい、3年前の盗賊討伐任務の時にトップの成績を残す事に成功。
その27歳の時に総隊長に就任した彼も現在30歳。そろそろ結婚も考えているがなかなか相手が見つからないらしい。
農作業ではクワを振っていた彼も今では剣を始めとした武器を振るう様になっているが、剣よりも槍の方が自分ではしっくり来ると言う事で、主に槍を愛用の武器として使っている。
冷静沈着な性格であり、戦場においてはクールに的確な判断を下す事で有名である。
「くっ!」
「どうした、その程度かジアル?」
ハルバードの斬撃をギリギリで受け止めるジアルだが、それによって若干体勢を崩した彼にローレンの左ミドルキックが腹部に綺麗に入った。
「がはっ!」
後ろに吹っ飛ぶジアルだが、その先には岩の壁。
背中をしたたかに打ち付け、一瞬意識が飛びそうになるが気合いで何とか持ち堪えた。
しかしローレンの凶刃はまったく休まる事を知らずに、ジアルに隙を与えない様にする為にも素早く襲い掛かって来る。
必死になって自分の槍でかわし、受け止めて弾くジアルだが、疲れ具合は明らかにジアルの方が出て来ている。
(まずい、このままでは非常にまずいぞ!!)
それを証明するかの如く、苦悶の表情を浮かべるジアルの顔には汗が流れて来ていた。
対するローレンは汗の一滴もかいていない上に、余裕の表情でジアルの動きを分析する。
「足元がふらついているがな?」
疲れと痛みと焦りで、肉体的にも精神的にも限界が来そうになっているジアルの足元がおぼつかないのを指摘され、それが更にジアルの劣勢を認識させるものになった。
そんなローレンの言葉が自分の耳に届いたかと思った瞬間、ハルバードで足を払われるジアル。
仰向けにジアルは転がり、そこにハルバードの先端を突き立てようとするローレン。
が、すんでの所で横に転がってかわしたジアルは、そのまま横になった体勢でローレンの足を蹴りつけた。
「ぐっ!?」
思いもよらない所からの反撃で一瞬ローレンの動きが止まる。
それを見逃さなかったジアルは、槍の先端をローレンの腹目掛けて突き刺す。
「がはあっ!?」
軍服の下には鎧を着込んでいるのでそれほど痛みも感じないローレンだが、明らかな隙が出来る。
ここからジアルは、ローレンに対して猛ラッシュをかけて行く。
槍を突き出し、足を払い、飛び蹴りをかましてローレンに隙を与えない様にする。
速さに速さをかけたコンビネーション技だ。
ローレンも防いではいるものの、先程とは違い彼もまた疲れて来ているのでだんだんと動きにキレが無くなって来ている。
(くそ……っ!!)
ローレンの顔にも、先程までには無かった焦りの色が浮かんで来ている。
だが、それを横合いから邪魔する影があった。
ヒュッと風を切る音が聞こえたかと思うと、1本の矢がジアルの右太ももに突き刺さったのだ。
「ぐああああっ!?」
その矢を放ったのは、今まで観戦していた筈のカルヴァルである。
「まだまだだな、ローレン。さっさと止めを刺すんだ」
それを聞き、ローレンは頷くとジアルに向かってハルバードを構えた。
ジアルとローレンが激しいバトルを繰り広げ始めた所で、ラルソンとジャックスの副官同士のバトルも始まった。
ラルソンはロングソード、ジャックスは両手剣を使うのだがパワーとスピードの両極端な勝負になりそうだ。
速さであればラルソンのロングソードに分があるが、パワーとなれば明らかにジャックスの両手剣が有利である。
なので2人の戦い方も対極的なものになる。
スピードで翻弄しようとするラルソンに対して、ジャックスは我慢をしてから隙を見つけてパワーで反撃に出ているのだ。
ローレンがガンガン攻め立て、ジアルが防御に徹しているもう1つのバトルとは逆の展開になっている。
「くっ!」
ラルソンの剣がジャックスの腹を掠めるが、軍服が少し切れただけで問題は無い。
だが、攻撃の手を少しでも緩めようものなら間違い無くジャックスは自分を殺りに来るだろうとラルソンは考える。
それを避ける為にも絶対に攻撃の手を緩めてはいけないのだ。




