22.認めたくない存在
ハイテンションで気に触る喋り方をするジェバーだが、推理自体は当たりだ。
「くそっ……!」
思わず苦虫を噛み潰した様な顔になるラルソンだが、ジアルはあくまでクールな顔をして将軍に問いかける。
「だけどその会議の中に飛び込んでまで殺す事はせずに、ここで俺達を一気に殺そうとするのは、王城の中で俺達だけを殺すよりも手っ取り早いと思ったからですよね? 俺達と繋がりのある兵士部隊の隊員を、この作戦の中で一気に殺した方が……」
その推理に、再びカルヴァルは肯定の返事をした。
「まぁ、間違ってはいないな。本当はそこで殺しても良かったんだが」
が、曖昧だとも聞き取れるこの返事に対して、更にラルソンが問い詰めて行く。
「何だかその返事にはまだ別の意味がある様に聞き取れますね、将軍」
「ほう、察しが良いな」
ラルソンの追い込みに感心しつつ、薄ら笑いを浮かべながら返答するカルヴァル。
「御前達が集まって何かの会議をしていると言う情報は、密偵を通して俺やジェバーの元にも入って来ていた。まさかその中に皇帝のリュシュターや宰相のモールティも入っていると言う事までは想定外だったがな」
そこまで言うと、今度はジェバーがさっきと同じテンションでそのカルヴァルの話に自分の話を嬉しそうに続けた。
「ですけど~! それを私達は逆に利用してしまおうと考えた訳ですよ! 皇帝がメンバーに加わっているとなれば、それを利用して揺さぶりをかける事も出来る訳ですからねぇ?」
その言葉に、ラルソンとジアルの2人はハッとした表情になる。
「まさか、あんた等……」
「そ~う! 察しが良いぞ~! 今頃は貴方達の大事な大事な皇帝陛下が荒縄で縛られて、御供の宰相は薬で眠らせられてるんじゃないですかねぇ~?」
その楽しそうな、だが残酷な内容の発言にラルソンとジアルは愕然とした表情を浮かべた。
「貴様等……。これだけの事をして、ただで済むとでも思っているのか?」
次の瞬間もはや敬語も何も関係無しに、明らかにジアルの表情には怒りの色が浮かんだ。
が、そんな表情を見てもジェバーはお構い無しと言った感じである。
「思ってますねぇ~!! だって、この国はもうすぐ私達の物になるんですから!」
べーっと舌を出して嘲笑うその表情に、ラルソンとジアルの怒りも爆発寸前だ。
そして止めに、カルヴァルが意味深な事を2人に言う。
「そう言えば……もう1つの部隊はどうしているんだろうな? もしかすると今頃、全員奴等にやられてしまったかもしれないな」
その言葉に怒りの表情から、再びはっとした表情に切り替わるラルソンとジアル。
「まさか……」
「お、おい御前等!! すぐに下に行って部隊の様子を見て来るんだ!!」
部下の生き残った兵士達にそう指示し、彼等が駆け下りて行った所を見た所で、再びラルソンとジアルは2人の首謀者に向き直る。
「フン、今更気が付いたとしてももう時間切れかもしれないがな」
カルヴァルは余裕の表情を浮かべつつ、いよいよ自分の武器に手をかけた。
彼は剣、弓、斧を使いこなすオールラウンドタイプの戦士であり、まさに将軍の名前に恥じ無い実力の持ち主である。
そしてジェバーも。
「では、私達もそろそろお暇させてもらうとしましょうかね」
ジェバーは王宮魔術師であり、攻撃魔術も回復魔術も使える実力のある男だと言う噂が飛び交っている。
この2人はその昔コンビを組んで、北の方にあるラーフィティアとはまた別の小さな国を滅ぼしたと言われる位の武勇伝もある。
こうして目の前にしても、その実力はとんでもなく高いのが分かる。
だが、その前に何かを思い出した様な表情を浮かべてカルヴァルは2人にこんな意味ありげな事を話し始めた。
「さっきの話の続きなんだけどな……」
「何だ」
「ここで俺達が直接手を下さなくとも、御前達はここで死ぬ事になる。俺達は更に御前達を不利にさせる事が出来る秘策を持っているからな」
そのカルヴァルの発言に、ラルソンとジアルも武器を構える。
「どう言う意味だ」
ラルソンが低い声でカルヴァルに問いかけるが、ジェバーが代わりに答えた。
「ふふふ……、私達にこの襲撃のアイディアをくれた優秀な人物が居るんですよ。それと貴方達の会議の様子を伝えてくれた密偵と言うのも、その人物なんです」
「会議の様子?」
その時、ラルソンとジアルの中で線が繋がりそうになった。
「まさか、いや、でも、しかし……」
まさかの事実。認めたくない現実。
でもジェバーの言う事が本当だとすれば、その話は紛れも無く真実だと言う事になる。
「心当たりがおありの様ですねぇ~?」
ジェバーが嫌らしい笑みを浮かべながら、ニヤニヤと2人を見つめる。
その視線を感じながらジアルが結論を導き出した。
それはジアルにとっても、ラルソンと同じく最も導き出したく無い結論であったが。
「俺達の中に、裏切り者が居ると言う事だな?」
「ぴ~んぽ~ん! 大正解~!!」
あの会議のメンバーの中に、認めたくない裏切り者が居る事になる。
それは一体誰なのだろうか?




