19.採集活動のつもりが……
ラルソン達兵士部隊と騎士団のその後は特に何も無く、1日が過ぎて2日が過ぎる。
そうしてやっとパールリッツ平原を抜け、エーヴィド川を渡り、日が落ちて行く頃にはカーレヴェン帝国も通り過ぎてダリストヴェル山脈へと辿り着いた。
「よーし、今日はここで夜を明かす! そして明日から山脈の探索に移るぞ!」
カルヴァルの声で、王宮騎士団と兵士部隊がそれぞれ野営の準備をする。
その中で、これから先の事についてラルソンはじっと考えていた。
(一体この山脈で何が見つかったんだろう? ジェバーは危険な物だとしか言ってなかったけどな。それに、王宮騎士団がそれを利用する可能性もある。……だったら、この作戦を必ず成功させないといけない。危険な物の正体が分からない以上、早々に王宮騎士団の動向を探らなければいけないな)
その事を考えつつ、夕飯を食べて早々に眠りにつくラルソンであった。
そして翌日から、ダリストヴェル山脈への進軍と調査が始まった。
カルヴァルの命令で部隊を2つに分け、半分ずつ王宮騎士団と兵士部隊がミックスした部隊になる。更に分かれた先でその2つに分けた部隊をまた分け、各自分担して調査をするのだ。
ラルソンとジアルは山脈の中央部の担当となり、ヴィンテスとパルスは麓周辺の担当になる。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ……この最短ルートだと傾斜の関係で馬で登れないから、結構きついんだよなこの山は」
「そうだな。だけど山頂まで行く訳じゃないんだし、中腹までだからまだ気が楽だ」
王宮騎士団の後に続き、登山道を登って行くラルソンとジアルとその部下達。
だがこの後に、彼等には思いもよらない自体が巻き起こる事になる。
山頂まで歩けるルートをしばらく歩き、開けた場所に出て来た時にそれは起こった。
「よーし、この辺りで捜索を開始しよう。ジェバーが言うにはまだまだ鉱物が眠っている筈だから、各員手分けして探すんだ。良いな」
カルヴァルの命令が再び下され、そこから調査が始まった。
部隊が分けられたとは言え、ラルソンとジアルは同じ部隊での活動になる。
が、彼等は何とも不穏な空気を感じ取っていた。
「……ジアル」
「ああ、わかってる。この感じは……」
この身体中が痺れるような、戦場に出た者であれば誰でも1度は感じる事のある気配。
……殺気だ。
そして次の瞬間、右側の林から何の前触れも無く角笛の音が響き、それに呼応して大量の兵士が飛び出て来た。
「な、何だ!?」
「くそっ!!」
ラルソンはロングソードを腰から引き抜き、ジアルは槍を構える。
そうして突然の戦闘が始まる。
いきなりの事であった為、兵士部隊の兵士達も驚きはしたもののすぐに武器をそれぞれ構えて戦い始めた。
剣と剣がぶつかり合い、槍が振り回され、弓が引き絞られ、斧が振り下ろされる。
更に、敵は突然出て来た兵士達だけでは無かった。
何と、一緒にここまでやって来た王宮騎士団の騎士達も兵士部隊に向かって武器を向け、襲い掛かって来たでは無いか。
「なっ、どう言うつもりだ!?」
まさかの裏切り行為。
しかし、敵が増えただけで兵士部隊がやる事は変わらない。
(数が多すぎるが、落ち着いて対処すれば良い!!)
普段、クールな槍捌きで有名なジアルからその様に教えられた事もあるラルソンは、目の前の敵を1人、また1人と斬り捨てて行く。
しかし、戦いはこれだけでは終わりでは無かった。この山脈にはもう1つの部隊が来ている。
突然の出来事に対応していたのは彼等だけでは無かったのだ……。
ラルソンやジアルが山の中腹部で戦っている頃、ヴィンテスとパルスは山脈の探索を進めていた。
「見つかったら、ジェバーに持って行けば良いんだっけ?」
「ああ、そう言う手筈だ」
せっせと山脈を掘って行く2人とその部下達であったが、彼等もまたふと異様な気配に気が付いた。
「……ん!?」
「おい、これって……」
「何だかやばそうだな」
もしもの時の為にヴィンテスは弓に手をかけ、パルスは腰の短剣をしっかりチェックする。
「殺気だな」
「ああ。俺達に向けられているのが丸分かりだ」
そんな殺気を発している主は次の瞬間、角笛の音と共に大勢で襲い掛かって来た。
「くっ! 敵襲だ!」
「総員戦闘開始! 迎え撃て!」
それと同時にヴィンテスとパルスもそれぞれ武器を構えるが、敵はその殺気の主だけでは無い事をすぐに思い知る事になる。
一緒の部隊で行動していた筈の王宮騎士団のメンバーが、武器を構えて敵として襲い掛かって来たのだから。
何故王宮騎士団の面々がこんな暴挙に出たのか?
そして、こんな事をする王宮騎士団の目的は何なのか?
何が何でも自分達が生き残り、王宮騎士団のメンバーにその事を問いたださなければ成らない。
その為にも2つの場所で兵士部隊の面々が王宮騎士団の団員相手に奮闘するものの、数で勝っている筈の兵士部隊の隊員達が徐々に押され気味になっている。
まだまだ粗削りな動きの多い兵士部隊の隊員達に比べ、王宮騎士団の団員達は無駄な動きを最大限に無くした隙の無い戦い方をしているのだ。
その戦い方の質の差が、こうして兵士部隊が劣勢に追い込まれる結果として表れているのだった……。




