18.事情聴取
「さて、俺達をこんな事に巻き込んだ君の事を色々と話して貰わないとな」
無口で暗い性格のリュディガーだが、こればっかりはきちんと腹を割って話さないといけないので必然的に口数も多くなる。
結果的に騎士団のリーダー格らしきあの男以外は全員この世から消えてしまったので、そのリーダー格の男を縛り上げた上で何をするつもりだったのかを、別の場所でバルドがバトルアックスで脅しながら聞き出している。
よって、この謎の女についてはリュディガーの担当になった。
「まず、君の名前から聞こうか」
名前も分からないままで色々と話を聞くのは何だか気持ち悪いので、なるべく穏便な口調を心掛けたつもりのリュディガーだったが……。
「人に名前を尋ねる時は、そっちから名乗るのが常識じゃないかしら?」
その態度にリュディガーはカチンと来たものの、ここでカッカしても話が進まないだろうと判断して名乗っておく。
「……俺はリュディガーだ」
「フェリシテよ。フェリシテ・ルッセル。イディリーク王宮騎士団の第4師団所属」
「騎士団員なのか?」
フェリシテと名乗ったこの女。まさかこうして自分を助けてくれた……いや、元々のバトルの発端になった女までが騎士団員だなんてどうすれば良いのだろう、と思ってしまうリュディガー。
「だったのよ。今はもう王宮騎士団には戻れそうに無いわね」
「何で?」
「私が内部の証拠を握っちゃったからよ。この国の王宮騎士団は全て腐敗しているわ」
内部の証拠とは一体何なのだろうか?
いきなり言われてもさっぱり意味が分からないので、そこだけはハッキリさせて貰いたい。
「待て、意味が分からんぞ。証拠とは何なのだ? それから腐敗って?」
「その言葉通りの意味よ。王宮騎士団の目的、貴方は聞いた事は無いかしら?」
「それなりに街の噂にはなっているが……いざこざがどうのこうのって」
自分が王族に近い人間だと知られたら色々面倒な事になりそうなので、あえて「街の噂」とする事でそれを悟られない様に濁すリュディガー。
だが、フェリシテのリアクションは大きかった。
「そう、それよ! 私はその証拠を掴んじゃったの! だからそれを皇帝陛下に直に差し出しに行こうとしたんだけど、その前にあそこで尋問されているあの隊長に見つかっちゃってね。このままだと皇帝陛下が危ないのよ!!」
「え……?」
だんだん話が大きくなって来たらしいリュディガーだが、だからと言って自分達がどうすれば良いのだろうか?
これは嫌な予感がするが、「違う」との答えが返って来るのを期待しつつその疑問を口に出してフェリシテに伝える。
「まさか、巻き込んだ俺達にまでその皇帝陛下を身の危険から救ってくれ、とか言うんじゃないだろうな?」
「そのまさかよ」
こういう時に悪い予感は的中するものだ。
してほしくなかったその悪い予感がドンピシャだった事で、溜め息を吐きながらリュディガーは額に右手を当ててかぶりを振る。
「勘弁してくれ。俺達が何故そんな事をしなければならないんだ?」
「しなければならないんじゃなくて、もう貴方達も証拠を掴んでしまったから私の仲間と言う事になったわ」
言ってる事がもうメチャクチャだ。
「とにかく俺達はバーレン皇国に向かうんだ。皇帝陛下の命は大切だが、それが本当だと言う確証が無いだろう」
もしかしたらこの女が自分達を陥れる為に、わざとこうしてメチャクチャな事を言って混乱させようとしているのかも知れない。
しかし、そんなリュディガーの予想は次に聞こえて来たバルドのセリフで裏切られる。
「おいリュディガー、大変だ!」
「どうした?」
「こいつ等、リュシュター陛下の命を狙う為に山脈で罠を色々と張り巡らせているらしい!! このままだと陛下の命が危ないぞ!」
「……」
やっぱり話がどんどん悪い方に進んでいるらしい。
そう言えば、バルドが尋問していた隊長が横倒しにされて伸びてしまっている。
「おい、そいつは生きているのか?」
「生きてるよ。ただ、こいつが言っている事が余りにもゲスだったからぶん殴っちまった」
「手が早いんだよ、御前は……」
このままバーレン皇国方面に進むとなると、どうやらその王宮騎士団との接触は避けられない様だ。
そこでリュディガーはハッと気が付く。
「まさか、通行制限が掛かっている理由って……!?」
平原に突如掛けられてしまった通行制限の理由が謎のままだったが、この一連の騒動を通してやっと何があったのか全てが繋がった。
「もしかして近衛騎士団が動き始めているって噂がある理由も、通行制限も、それからこの隊長から聞き出した罠ってのも、恐らくはリュシュター陛下を狙って……」
バルドの予想に頷くしか無いリュディガーだが、かと言って自分達だけではどうしようも無いし、こんな面倒臭い事に巻き込まれるなんて思いもしなかった。
そのリュディガーの呟きを聞いていたフェリシテが、「ん?」と首を傾げる。
「ねえ、近衛騎士団が動いているって何で一般人の貴方が知っているの?」
「え……」
元々かなり少ない独り言が、更に悪い方向へ事態を進ませて行くのをリュディガーは感じ取った。




