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冒険家の子孫の成り上がり  作者: マッハ! ニュージェネレーション
ステージ1(イディリーク帝国編):20歳の若者、冒険者になる
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15.パールリッツ平原での魔物討伐

 その話はひとまず置いておき、今考えるのはどんな魔物が討伐対象なのかと言う事である。

「そんなに数も多くないから、肩慣らしには十分って感じだな」

 依頼書を確認しながらそう言うバルドの視線の先には、討伐対象として「野ウサギ3匹、大型オオカミ1匹、大蜘蛛2匹」の文字がある。

 バルドの言う通り、確かに肩を鳴らすには絶好のターゲットだろう。

「内容は問題無いが、どうやって戦うかの役割分担は必要だな」


 リュディガーの使うソードレイピアは突くだけで無く横切りも可能だが、細身の武器なので余り大きな魔物相手にはパワー負けしてしまう。

 一方のバルドが扱うロングバトルアックスは、そのバルドの体格に見合ったパワー重視の武器で攻撃範囲も広いが、細かい動きを必要とするトリッキーな相手に対しては苦戦を強いられる。

 リュディガーとバルドで、お互いの実力を確かめる時に何度も手合わせをしているが、その時も武器の特性から自分の戦い方を考えていた。

 パワーと広い攻撃範囲で押し切ろうとするバルドに対して、リュディガーは相手の隙を突く様な嫌らしい動きで対抗していた。


 そうした手合わせを何度もして来た事により、お互いの戦い方は分かっているつもりではあるが、こうした実戦のシチュエーションは初めてである。

「良し、俺は狼をやる。御前は小さい奴を任せるぜ」

 でかい相手ならパワーで押し切れば良いだろうと考えるバルドだが、リュディガーは首を横に振った。

「待て、もし俺が小さいのに囲まれたらどうする?」

「その場合は……ああそうか、魔物は集団で行動する奴も居るもんな」

 それにターゲット以外の魔物が近くに居ないとも限らないので、とりあえずそのターゲットを見つけ次第また考えようと言う事になった。


 そうして馬を進ませる事、およそ半日。

 まずは1つ目のターゲットを発見し、馬を降りて近づく2人。

「あれが大蜘蛛だな」

 2人の視線の先には、普段の生活で家の中に出没する蜘蛛よりも遥かに大きな、体長およそ80cmの黄色い身体の色を持つ蜘蛛がウロウロしている。

 カサカサと音を立てて徘徊しているのを見る限りではこちらには気がついていないらしいので、一気に仕留めてしまおうと画策した2人はまずリュディガーがその蜘蛛の前に飛び出して注意を引く。


 予想通り、リュディガーに気が付いた蜘蛛は脚をシャカシャカと動かして一気に彼に肉迫して行くので、その後ろからバルドが足音をなるべく忍ばせつつ近づき、大蜘蛛の攻撃を避けているリュディガーに当たらない様にバトルアックスを全力で振り下ろした。

「フンッ!!」

 グニャッと柔らかめの手応えと共に、バトルアックスによって真っ二つに切断された大蜘蛛はそのまま息絶える。

「良し、これでまずは1匹だな」

 そう言いながらバルドは折り畳んである大きな麻袋を懐から取り出して、その蜘蛛の残骸をせっせと袋に詰めて行く。


「俺は他の依頼対象が居ないかどうか見回ってみる」

「ああ、頼んだぞ」

 バルドが証拠品の回収をしている間に、ボーッと突っ立っているのも何だか時間が勿体無い気がしたリュディガーは周囲を見渡して少し歩き回ってみる。

 この平原はかなり広いので少し歩くだけでも魔物と遭遇する確率が高いと思うのだが、魔物の駆除が進んでしまっているせいか今は余りその姿を見かける事は出来ない様だ。

 それでも依頼は依頼なので、しっかりこなさなければ傭兵としての信用問題に関わる。

(ううむ、居ないな……)

 討伐対象の魔物を探すだけでも結構な時間が掛かりそうだ、と考えるリュディガーだったが、そんな彼の目に気になるものが飛び込んで来た。


(ん、何だありゃ?)

 今の自分が居る場所からだとうっすらとしか見えないのだが、視線の先に広がる森林に慌ただしそうに動き回る複数の影を見つけた。

 大きさからすると小型の魔物では無い……いや、あれは人間だ。

 それは良いのだが、問題なのはその動き回っている影の数である。

「おい、バルドちょっと来てくれ」

「ん、どうした?」

「……あそこ」


 リュディガーが指差した先を見たバルドは、腕を組んで鋭い目つきになった。

「ありゃー人影だな。あんなに慌てて一体何やってるんだ?」

「行ってみるか?」

「ああ、通行制限の理由を知っている奴が居るかも知れないからな。ついでに魔物がもっと居そうな場所を知っているかどうかも聞いてみようぜ」

 分からなかったら知っている者に聞けば良い。

 そう考えた2人は一旦馬に戻り、未だに慌ただしそうな人影の元に向かってその馬を進ませ始める。


 だが人影が徐々に近づいて来るにつれ、ただの集団では無い事がリュディガーにもバルドにも分かり始める。

「……おい、ありゃあ……帝国騎士団の連中じゃないのか?」

「本当だ。しかも服装を見ると王宮騎士団だな。こんな所で野営の準備……にしてはまだ時間が少し早い様な気がするんだが」

 夕方に近づいて来ているとは言え、準備に掛かる時間を考えてもまだまだ日没までは余裕がある筈。

 そもそも通行の邪魔になる訳でも無いのに、わざわざ開けた場所では無く森林の中にキャンプを張るのは魔物が迂闊に近づいて来ない様にする為だろうか?

 ……何だか、怪しい。

 そう考えた2人は騎士団員達の元に向かったが、それが大きな間違いだった。

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