13.動き出す2つの勢力
お互いの知らない所で動き出している冒険者と帝国軍だが、このまま2つのグループが進めばいずれぶつかるルート上に居るのは間違い無い。
何故なら、目指す場所が一緒だからである。
兵士部隊や王宮騎士団の人員達とは面識があるリュディガーだが、極秘ミッションの為に色々と動きがある事までは伝わっていない。
バルドもそうした情報は仕入れてはいないものの、王宮騎士団からの情報でこんな事を聞いていた。
「なぁ、そう言えば王宮騎士団の連中の話……知っているか?」
「ああ、きな臭い動きをしているんじゃないかって言うあれか?」
「そう、それだよ。俺達は騎士団の連中とも関わりがあるからそう言う話もちらほら入って来るんだけど、俺達がこれから向かうダリストヴェルの山で、何やら採集活動が行われるってのをここの所ちょくちょく聞く様になってさ」
「採集活動……」
リュディガーはしばし考えるが、それは別に問題が無い事であるとの結論を出した。
「いや……不自然じゃないと思うが。あの山は鉱物が良く採れるから、兵士部隊の隊員達が採集活動をしに行っているってのは帝都の住人なら普通に知っている事だぞ」
だが、バルドが言いたいのは今回のその採集活動についてだ。
「ああ、それは分かるよ。それだけなら何も不自然じゃないんだが、こっからが重要なんだ。あくまでも噂なんだけど、普通だったら兵士部隊がメインで採集活動に向かって、付き添いで王宮騎士団の何人かも一緒に向かうって感じだろ? だけど、今回は何故か近衛騎士団の連中も一緒に向かうんじゃないかって話が出てるんだよ」
「えっ、近衛が?」
「な、おかしいだろ?」
近衛騎士団と言えば、王宮騎士団とも兵士部隊ともまた違う皇帝陛下の専属護衛騎士団として知られている。
主に王城の中、それから王城の敷地内をテリトリーにして活動している為、城下町まで出て来る事すらなかなか無いレアな存在だ。
噂でしか無いにせよ、その近衛騎士団が何故採集活動に出る必要があるのだろうか?
「うーん、それは確かに妙な話だな。近衛騎士団の任務はリュシュター陛下の身の安全を確保する事だろう?」
歩きながら腕を組んで頷くリュディガーに、隣を歩くバルドも同じく頷き返す。
「そこなんだよ。皇帝陛下がそこに一緒に向かわない限り、近衛騎士団も動く必要が無い。何で近衛騎士団が動いているのかって言うと……」
「つまり、リュシュター陛下がその場所に向かったって事か?」
まさか皇帝陛下が脱走してダリストヴェル山脈に向かったのか?
それとも、何の変哲も無い様な採集活動にわざわざ一緒について行ったのか?
リュディガーとバルドのそれぞれの頭の中で、何故近衛騎士団が動かなければならないのかと言う理由を探してみる。
しかし、それもすぐに終わってしまった。
「待て、俺やバルドが考えた所でどうせ俺達には分からないだろう」
「それもそうか。俺達はバーレン皇国に向かうのが目的で、別に皇帝陛下の動向を探りに行く訳じゃないもんな」
イディリーク帝国民として冷たい結論かも知れない、とバルドは思うがリュディガーの言う事は事実なので、もし山脈で出会う様な事があればその時は跪いて挨拶をするだけだ。
そう考えるバルドはリュディガーを引き連れ、事前に手配していた帝都の近くの村で馬を2頭借りて一気にパールリッツ平原を抜けてしまう事に決めた。
「パールリッツが1番長いし、魔物の討伐が目的でもさっさと逃げる為の移動手段を用意しておかなきゃな」
バルドのセリフにリュディガーは無言で頷く。
実際、自分も魔物の討伐に傭兵として出向いた事は何回もあるのだが、魔物の大群に囲まれてしまった事も1度や2度じゃなかった。
その時の経験から、何時如何なる時でも生きて帰れる様に準備を整えるのが大切だと思い知ったのである。
まして、バーレン皇国まではかなり長い距離……バルドの言う通りパールリッツ平原が1番長いので、そこを突っ切る為に何処かで馬を借りようと思っていた矢先にこのバルドの計らいだったので、元々の性格故に言葉数は少ないものの感謝しておくリュディガー。
「すまない、助かった」
「良いよ別に気にしなくても。俺だってあの平原を抜けるのに馬が必要になると思っていたから丁度良かったよ。それよりもさっさと帝都を離れちまおうぜ。何時トリスちゃんが追って来るかも分からねえ」
「そうだな」
トリスは無駄に行動力のある女なので、遥々ダリストヴェル山脈まで追いかけて来ないとも限らない。
バルドが話していた騎士団の動きも気になるものの、それは実際に山脈に向かってみないと分からないので今は進むだけだ。
「パールリッツで討伐する魔物の事、それから渓谷の橋の事も考えておかなきゃな。騎士団の連中がその橋を通らずに、もしかしたら山の中にある別のルートからダリストヴェル山脈に向かうかも知れねえからその場合はそっちを俺達も通るとしよう」
橋の依頼に関してはキャンセルがまだまだ可能なので、残る2つの依頼だけはしっかりやっておこうと再確認して2人は馬を走らせ始めた。




