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冒険家の子孫の成り上がり  作者: マッハ! ニュージェネレーション
ステージ3(ヴィルトディン王国編):隣国間の戦争
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24.不審な影

 リュディガーがかなり遅めの誕生日プレゼントを貰ったその翌朝、一行はヴィルトディン王国の南東に存在しているクーイトリック山脈に辿り着いた。

 王都のクリストールから列車を使えば半日も掛からない距離なのだが、馬で移動して複数の町で情報収集をしていたので何日もの時間を要する事になったのである。

「はー、ようやく着いたな!!」

「でもまだ気は抜けないわよ。これからここで戦争が始まるんだから」

 目的地に辿り着けて安心している様子のバルドに、未だ険しい表情のトリスが忠告する。

 このクーイトリック山脈を越えた先に渓谷が存在し、そこに自分達が目指しているドラゴンに関係する遺跡がある筈なので、最終的な目的地であるそこに辿り着くまでは油断が出来ない。


 それに、4人は自分達がエスヴェテレス側についていない事を証明する為にヴィルトディン側の布陣の準備を手伝わなければならない。

(全く、何で俺達がこんな事……)

 心の中でブツブツと文句を言いつつ、リュディガーはテントの準備をしたり予備の武器や防具をメンテナンスしたりと忙しい。

 勿論、他の3人もそれぞれ防御魔壁を騎士団員達に掛けたり、エスヴェテレス帝国軍を引っ掛ける為にトラップを設置したりと、まさに騎士団員と同じ舞台で仕事をしている。

(それもこれも、全てはあのコートの集団が悪いんだわ!!)

 自分達はただ単に各国を冒険したいだけなのに、何故ここに来て戦争の準備を手伝わなければならないのかしら、と心の中で毒づきながら、フェリシテも自分達がエスヴェテレスと無関係だと言う事を証明するべく自分に与えられた仕事をするしか無かった。


 通話魔術による王都からの連絡によれば、エスヴェテレス帝国軍はクーイトリック山脈を進軍して来るグループと、王都に向かって直接攻め込みに掛かるグループの二手に分かれて侵攻するらしい、とエスヴェテレスに放った密偵からの情報が入った。

 クリストールから出発する前、リュディガー達は戦闘には参加しないと言う約束をリルザやエルガーとかわして来たのだが、事と場合によっては強制的に戦闘に加わる可能性も出て来てしまった。

 上手く前線から脱出して遺跡に向かいたいのだが、そこかしこでヴィルトディン王国騎士団員の監視の目が光っているので、ここから離れるチャンスを見つけるのはなかなか難しそうである。


 悶々とした感情を抱きつつ、ようやく開戦準備が整ったのでリュディガー達4人は後方へと下がって待機する。

「貴様等はここに居ろ」

 やけに傲慢な態度の部隊長に、物資補給用のテントを設置している行き止まりの場所に追いやられた4人は、ここで回復役と物資の供給役を兼ねて後方支援に回る事になった。

「はあ、ようやくひと段落出来るな」

「戦争なんて勝手にやっててって感じよねー。何で私達まで巻き込まれないといけないのかしらね」

 大きく息を吐くバルドと、ブツブツと文句を言うフェリシテの横でハイセルタール兄妹は食事の準備をしていた。


「ほら、軽いものでもとりあえず腹に入れておけ」

「今度は何時食事を摂れるか分からないからね」

「ああ、ありがとよ」

 兄妹から出された食事をバルドとフェリシテも受け取り、一時の休息を満喫する。

「これから先、私達はどうなっちゃうのかしら……?」

「さあな。だが、今の戦争で死ぬつもりは無いのは確かだ」

 相変わらずのぶっきらぼうな返答ではあるが、リュディガーはトリスに対してそう答えつつふと上を見上げる。

「そう言えばこの行き止まりって、若干なだらかな崖になっているんだな」

「そうみたいね。崖の上に上がろうと思えば上がれるんじゃないかしら?」


 もしかしたら、ここから敵が攻めて来る事も出来るかもね……と崖の遥か上に広がる森を見つめながら呟くトリスの視界の中で、森の間をヒュッと何かが駆け抜ける姿が一瞬見えた……様な気がした。

「……えっ?」

「どうした?」

「い、今……上の方で何か通り抜けた気がするんだけど……お兄ちゃんは見えなかった?」

「いいや、俺は全然。どんなものが見えたんだ?」

「一瞬だったから良く分からないけど、鳥……では無い気がするわ。そこまで小さくなかったもん」


 遥か上の方の森で一瞬見えただけの、その不審な影。

 その影を見た瞬間、何故かトリスの背中にゾワッと寒気が走ったのだ。

「お兄ちゃん……一緒に上に来てくれない?」

「えっ?」

「さっきの影がとても気になるのよ。何だか凄く嫌な予感がする。何かは分からないけど……」

 昔から面倒事を避けて受け身の姿勢で堅実に生きるタイプの妹が、自分からこうやって行動を起こすのは自分を追い掛けて来た時以来では無かろうか? とリュディガーは思ってしまう程の事だ。


「御前が自分からそんな事を言い出すなんて、かなり珍しくないか?」

「うん……それ位やっぱり気になる事だから。この崖を登って上の様子を確認して、何事も無ければそれで良いから」

 この崖の上にはヴィルトディン王国軍の布陣は無かった筈だ。

 単なる動物であれば良いのだが、もしそれ以外となると命の危険もある。

 それでも妹の頼みを断り切れずに、後の2人にここを任せてハイセルタール兄妹は崖を登り始めた。

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