11.決行当日(騎士団編)
そして、それを黙って聞いていたラルソンがここで挙手した。
「俺は賛成です」
「ラルソン!? 御前、何言って……」
ジアルが珍しく驚きの声を上げるが、それに構わずラルソンは続ける。
「俺は陛下の言う通りだと思います。ですから俺は、全力でその作戦をサポートしたいと思います」
そのラルソンの言葉に、ローレンが真剣な眼差しで問いかける。
「ラルソン、御前には陛下を全力で守ると言う気持ちがあるか?」
ローレンの質問に、ラルソンもまた真剣な眼差しで返答する。
「勿論です、ローレン様。俺はこのイディリークに身も心も捧げました。ですから、今回の作戦を必ず成功させたいと思う気持ちには嘘も偽りもありません」
それを横で聞いていたジアルは、何を思ったか突然ラルソンの横に歩み寄る。
「ラルソンがそこまで言うなら、俺もその作戦には賛成です」
そしてヴィンテスとパルスも乗って来た。
「俺も賛成です。しかし危険を伴いますから、事前に計画をしっかり立てましょう」
「俺もヴィンテスに同意見です。絶対に成功させましょう」
最後に、その4人を見たモールティも頷いた。
「皆さんがそこまで仰るのであれば、それしか無い様ですね。私も王宮騎士団を止める為に全力を尽くしますから、その作戦に乗らせて頂きたい」
その兵士部隊の4人と、宰相の決意を聞いてローレンは目を閉じて頷いた。
「わかった。ジャックスが出してくれた意見もあるからそれで行くとしよう。だがヴィンテスの言う通り計画はしっかりと立てなければいけない。決行の山脈調査の日迄はもう後数日しか無い。今すぐに意見を出し合おう」
そうして毎日極秘に会議が開かれて、作戦が練り上げられて行くのであった。
そして決行当日になり、王宮騎士団とその手伝いとして兵士部隊が参加する事になった。
まずはダリストヴェル山脈まで進軍するのだが、メンバー達の作戦は既に帝都を出る前から始まっているのだ。
「良いかラルソン、気を抜くなよ」
「勿論だ。ジアルもな」
さらにこの2人以外にヴィンテスとパルスが王宮騎士団の騎士達の後に続き、その後に大量の兵士部隊の兵士が控えている。
王宮騎士団と兵士部隊の合同任務ともなればその数は多い。
そもそも今回ダリストヴェル山脈で何を調べるのかと言うと、山脈で珍しい鉱物が発見されたのだが、それが危険な物であると言う王宮魔術師のジェバーからの指摘を受けて、王宮騎士団が調査に乗り出す事になったのである。
言いだしっぺのジェバーが行くからには、長い付き合いであるカルヴァルも一緒に行く事に。
ダリストヴェル山脈までは行軍のスピードで3日程。
帝都を出てからパールリッツ平原を超えて、大きなエーヴィド川を渡って、カーレヴェン渓谷を抜けてやっとダリストヴェル山脈だ。
と言っても長いのはパールリッツ平原だけであり、地図上で見れば東へと向かって歩いて行く。
なのでエーヴィド川もカーレヴェン渓谷も横切るだけだし、その為のルートもきちんと作られているのだ。
計算すると、パールリッツ平原を抜けるのに今の行軍のスピードで大体食事や睡眠も入れて2日半程だ。
後、注意するべきなのは魔物の存在であるが、このイディリーク帝国はバーレン皇国に近い領土の右側に自然が集中している為に、そちらの方に行かない限り魔物の姿も余り見かける事が無い。
だから、安心して旅が出来ると旅行者からも評判の帝国なのである。
そして、作戦の決行もまだまだ先の話になっているので今はとにかく我慢の時だ。
「抜かりは無いよな」
「ああ。あれだけ作戦の内容を練ったんだ。成功しなきゃ困るさ」
ヴィンテスの心配そうな声に対してパルスが静かに、けれども力強く返す。
ジアルの側近を務めているヴィンテス・ティクザードは現在29歳。
ラルソンもジアルも不在の時は、同じ側近のパルスと一緒に部下達の指導をする。
何時も謙虚な姿勢を忘れずに、基礎練習を重点的にする事で応用に繋がると言う考え方を持っている彼は、鍛錬場で基礎練習に長い時間取り組んでいる姿が度々目撃されている。
普段の性格に関しても謙虚な姿勢を忘れないその姿勢は部下からも上官からも尊敬を集めており、側近として上官であるラルソンとジアルのサポートに回る時も一歩引いた形を取る事が多い。
彼の武器としては得意なのが弓と回復魔術で、回復魔術に関してはその有効範囲の広さが自慢出来るポイントだ。
弓に関しては余り飛距離が伸びないものの、基礎練習を怠らないおかげでその命中率と矢をつがえるスピードが恐ろしく速い。
なのでなるべく相手を引き付け、そこから一気に急所目掛けて矢を打ち込むスタイルを定番の戦法としている。
家は帝都で代々続く貴族の家系なのだが、その家は長男が継ぐ事になっているので次男の彼は兵士部隊に入団した過去を持っている。
だからと言って、傲慢な貴族の様に家柄で人を差別したりしないのがその性格からも見て取れる。
謙虚な姿勢を何時も持つ事で人は成長出来ると信じている彼だが、そんな彼は成長云々よりも何か得体のしれない不安をこの進軍中に覚えるのだった。




