10.この国を背負って立つ人間
「……以上です。これ等の事から合わせますと、見知らぬ者達と何かを画策している可能性が高いと見えます。それにこの件には現時点ではまだ確定出来ませんが、尾行の結果もありますので可能性の1つとして」
ジアルがリュシュター、モールティ、ローレン、ジャックスへの報告を終え、席に座る。
「お疲れ様でした。では次に、ローレン団長とジャックス副長の報告を」
モールティが2人にそう促し、ローレンが立って報告を開始する。
「はっ。私とジャックスは密偵を王宮騎士団に送りましたので、その調査結果と合わせて報告致します。調査の結果、王宮騎士団の面々はカルヴァル将軍の私兵団と関わりがある者が多いと言う事がわかりました。密偵が、王宮騎士団の騎士と私兵団の者達との接触を見たと言う証言を幾つもしております」
「私兵団……ですか」
そのローレンの報告に、リュシュターが訝しげな声を上げた。
「はい。ですがまだ証拠は掴めておりません。私の報告も、ジアル隊長の報告もまだ怪しい事をしているのでは無いかと言う過程の段階です。ですから、確固たる証拠が掴めるまでにはもう少し時間が掛かると思います。私からはこれで以上です」
そう言ってローレンは報告を終え、椅子に座った。
「しかし、王宮騎士団絡みの事件が多発しているのもまた事実……。これは早急に手を打たなければいけない問題ですから……」
モールティがそう発言したのをきっかけに、パルスからも声が上がる。
「でしたら、将軍の私兵団の連中を一斉に逮捕して洗いざらい話してもらいましょう!」
「それは無理だと思うがな……まだ証拠が無いんだぞ」
パルスの提案はジャックスによって即却下された。
何か良い案は無い物か……と頭を抱える調査部隊のメンバー8人。
だが、その中でラルソンが発した言葉がきっかけで事態は急展開を見せる事になる。
「奴等にボロを出させる様にしたいんだけどな……」
その言葉を聞いたリュシュターが、ふと顔を上げてラルソンの方を見る。
「ラルソン副長」
「はい?」
「今、何と仰いました?」
「え、奴等にボロを出させる様にしたいと……」
「それだ!」
リュシュターの声色と口調が変わったのを見て、他のメンバーも彼の方に注目する。
「どう言う事でしょうか、陛下?」
「ラルソン副長の言った通りですよ。彼等にボロを出させる作戦が良いと思うんです」
「ほう」
ローレンとモールティは、そんな事を言い出したリュシュターをじっと見つめる。
「その内容については、どの様にお考えでらっしゃいますか?」
そのジャックスの言葉にリュシュターの動きが止まる。
「それをこれから考えるんじゃないですか……」
シュンとして席に座ったリュシュターをモールティは哀れみの目で見つつ、内容を考える様にメンバーに再度促す。
「ではその作戦で行くとして、内容を考えましょうか」
またうーん、と頭を抱えるメンバー達。
端から見ればこいつ等、一体何をやっているんだろうかと言うメンバーばかりである。
国のトップである筈の皇帝はシュンとしてるし、何があったのかを小1時間程問い詰めたくなってしまうだろう。
そうしてメンバーが悩む事約5分。
ここで、シュンとしていたリュシュター自身が口を開いた。
「……囮作戦、と言うのはいかがでしょうか?」
「囮ですか?」
「はい。それが最も手っ取り早い方法かと」
そうして、その後にリュシュターから驚愕の作戦内容が語られる。
「……それは、私は賛成致しかねますね、陛下」
作戦内容を話し終えたリュシュターに真っ先に反応したのは、隣に居るモールティであった。
「俺もです。余りにも危険過ぎますよ」
ジアルも同じくその意見には反対である。
リュシュターの出したその囮作戦は、未だかつて見た事も聞いた事も無い様なまさしく『前代未聞』な内容のものであった。
が、それに対してジャックスがこんな事を言い出す。
「確かに危険な内容ですが、少しやり方を変えてみるのはいかがでしょう?」
そうしてジャックスが、そのリュシュターの作戦に内容を付け加えた事でメンバーの空気が少しだけ変わった。
「私もそれなら安心ですね」
「いやいや……リュシュター陛下、俺もパルスもまだ危険だと思いますよ、それは」
内容を聞いていたヴィンテスから声が上がる。
「俺も同意見ですね、陛下。幾らその内容だとしても、想定外の事態が起こる可能性も充分にある訳ですよ」
パルスも何とか説得しようと必死だ。
が、リュシュターは首を横に振る。
「私はこの国を背負って立つ人間です。その為には、これ位の危険な橋も渡らなければいけないと思っています。そうしなければ、国民の支持なんて得られません。それも出来ないのに何が皇帝ですか。こうしている間にも王宮騎士団の問題は増えていくばかり。それは何としても止めなければいけません。国を引っ張る人間が、国内の問題を解決する為に動かなければいけないのは当然の事です。それに私は生い立ちが特殊ですから、それは尚更の事だと思っているんですよ!」
皇帝陛下の力強い言葉が会議室に響き渡り、その発言にメンバーが押し黙る形になった。




