30.事件の決着
一方のカリフォンはロオンと別れた後に波止場を探し回っていると、丁度ジェイルザートが小船に乗り込んでここから逃げ去ろうとしている所だった。
「待ておらぁ!!」
「ちっ、役立たずな奴等だ!!」
今から小船を漕いでの逃走は無理だと思い、ジェイルザートは小船には乗らずにやって来たカリフォンに対して、鉄球の付いた鎖を取り出した。
しかし、それを振るう前にまずはウィンドカッターと呼ばれる上級魔術をカリフォンにお見舞いして彼を苦しめる。
「ちいっ!!」
ウィンドカッターはその名前の通り、魔力を纏わせて刃物の様に切れ味を鋭くした風を相手に向かって吹き付けると言う魔術である。
その風をまともに食らってしまえばカリフォンはひとたまりも無いので、横っ飛びで風から逃れつつロングソードを引き抜いて迎撃態勢に入る。
対するジェイルザートは変則的な動きの鎖を振り回して、トリッキーな戦い方でカリフォンを仕留めに掛かって来る。
しかし戦場で培った反射神経と経験、そして我流交じりの剣術でカリフォンもギリギリでかわしたりガードしたりする。
「てゃあ!」
ジェイルザートの攻撃の隙を突いて、一気に間合いを詰めたカリフォンの放つ左回し蹴りをそのジェイルザートは屈んで避ける。
空振ったカリフォンの足は、その先にあった木箱に直撃して穴を開ける。
お返しに飛んで来たジェイルザートの右ローキックを今度はカリフォンが左足で受け止め、そのまま続けて飛んで来た左のキックを精一杯屈んでかわす。
だが、左のキックの勢いで身体を半回転させたジェイルザートは、そのまま前に出た右足でカリフォンを思いっ切り腹から蹴り飛ばす。
「ぐおぅ!」
蹴られた勢いを利用して一旦距離を取り、体勢を立て直して再びジェイルザートに向かい、右のハイキックを繰り出したカリフォン。
そんな彼にカウンター気味でジェイルザートの左のハイキックが飛ぶが、それを身体を仰け反らせてカリフォンは避け、お返しに右のパンチ。
「ぐっ!」
続けてお返しとばかりに左のハイキックを繰り出すが、それを屈んで避けたジェイルザートはまた右のパンチをカリフォンの腹へ。
「うぐ!」
膝をついたカリフォンの顔面を左足で蹴り飛ばすが、カリフォンもこれしきの事でへこたれない。
まだ襲い掛かって来るジェイルザートに、今度はさっき自分が足で穴を開けた木箱を投げつけ、それによって彼が一瞬怯んだ所に助走をつけてドロップキックをぶちかます。
「ぐえ!」
床に背中から倒れ込むもののすぐに起き上がるジェイルザートに、間髪入れずに左ハイキックから連続でロングソードで斬り掛かって行くカリフォン。
だが大振りになってしまった攻撃の隙を突かれて背中に回り込まれ、首を羽交い締めにされる。
「ぐっ……うぅぅう、らあああ!」
ロングソードから左手を離して、そんなジェイルザートに容赦せずカリフォンは肘打ちを何発も連続で叩き込むと、ジェイルザートはその脇腹の痛みに耐え切れずにカリフォンの拘束を緩めてしまった。
「ぐ!」
若干前屈みになって彼から離れたジェイルザートの背中に左の回し蹴り、そこから連続して右の回し蹴りで、最初のカリフォンの左の回し蹴りでぶっ飛んで行く筈だったジェイルザートの身体が今度は逆方向に飛ぶ。
その身体目掛け、カリフォンは左のミドルキックを彼の腹へ。
「ぐあ!」
地面に叩き付けられた彼にカリフォンは追撃の手を緩めず、起きあがりかけたジェイルザートの胸に右のキック。
それでも持ち堪えるジェイルザートに今度は左ハイキック、続けて右の回し蹴り。
そして屈んで避けて体勢を立て直した彼の顔面に、全力の左ストレートが炸裂。
「ぐうぇあ!」
ジェイルザートはそのまま後ろによろけ、それを見たカリフォンは思いっ切りロングソードを振り被って、彼の腹を横一文字に斬り裂いた。
「ぐぶっ……」
その斬り裂きでジェイルザートは呻きながら倒れ込み、止めを刺そうとしたカリフォンだったが……。
「カリフォン隊長、待って下さい!!」
「えっ、え!?」
突然後ろから聞こえて来たのは、自分と別行動で波止場に逃げたもう1人を追っていた筈のロオンの声だとカリフォンは気が付いた。
「ロオン!? 一体どうしたんだよ?」
「その方にはまだ聞かなければいけない事があるんです!!」
そう叫びながらロオンはジェイルザートのそばへと駆け寄り、自分と戦ったジャレティから落ちたあのメモを息も絶え絶えの彼に見せる。
「この紙に書いてある事なのですが、心当たりがありますね?」
「……ああ、それ、か……」
だが、もう魔術で止血しても間に合わない程に大量出血しているジェイルザートは、自分を見下ろしている憎き存在のカリフォンとロオンにただ一言だけ告げた。
「計画は失敗……だ。俺がここで死ん、だらもう……その計画は進まない……から、なぁ……っ!!」
そのままゆっくりと目を閉じ、ジェイルザートは息絶えた。
「終わったのか……」
「そうですね……。一先ず、このメモの事はシェリス陛下に報告しなければなりませんね」
カリフォンとロオンも立ち上がり、自分達の居る場所に駆けつけて来た騎士団員達に後始末を任せて、一旦城に戻る為に歩き出した。




