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Another view ~商業ギルドの受付嬢

短いです。別視点です。

朝の6時、ギルドに出社。


商業ギルドの利用者は朝が早いため、出社してすぐ受付に座り、お客さん対応。

内容に応じて書類を書いてもらったり別の受付に案内したり質問に答えたりと列をどんどんさばいていく。


2時間もすると、ようやく落ち着いてくる。

お客さんがいなくなると、今度は溜まっていた事務仕事に手を付ける。

慣れた作業で、どんどん書類の山を片付けていく。




書類と格闘していると、カウンターに人の気配。


「えっと、ギルドに所属したいのですが…」


どうやら登録希望者のようだ。

まだ少年と言っても通用するような青年がカウンター前に立っている。

黒髪に起伏の少ない顔つきと、このあたりでは少し珍しい。


申請書では、探索を仕事とするようだ。

禁止ではないが、良い選択とは言えない。素直に冒険者ギルドに登録した方が良いと思うのだが。



いろいろ注意事項を説明したが、問題ないということで、そのまま登録を行った。

ギルドとしてもあまり利用者に口出しできない。

安全な森の入口近辺で狩りをする分にはそうそう危険なこともないだろう。




この日、やはり彼は最寄りの森の浅いところで探索していたようで、日が暮れる前にピローキノコの買取をしに来ていた。

あの森では、あまり大きな儲けも期待できないだろう。

商業ギルドで冒険者としてやっていくのは、とても大変だ。

近いうち、限界を感じて仕事を変える決断を迫られることになるだろうが、それまでに大ケガや死ぬようなことが無いように願うばかりだ。




それからも冒険者希望の青年は、毎朝ギルドに顔を出すようになった。

探索の出発前に寄るようにしているらしい。

最初は掲示板を眺めたり資料庫を覗いたりするだけだったが、次第にギルド職員や他の利用者に挨拶したり、話しかけたりするようになった。


はじめのうちは、みんな彼の行動を気にかけることなく、無視をするか軽く流す程度であった。それでも彼はめげずに愛想よく挨拶や声掛けを続けていた。


そんなことが数日続くと、ギルド職員の中から、青年に声をかける人間が出始めた。

彼の幼い外見や邪気のなさそうな笑顔に、警戒心が薄れたのだろう。

次第に、彼と軽い雑談を交わす職員や利用者が目につくようになってきた。




それからさらに数日が過ぎ、彼から相談を受けた。

仲良くなった農家さんに畑仕事を依頼されたようで、その仲介を頼む、とのことだった。珍しいことだが、特に問題はなかったので、すぐ処理を行う。


通常、こういった仕事は冒険者ギルドに依頼することがほとんどだ。補助金のおかげで、安い依頼料でも受けてくれる冒険者が多いからだ。

どうやら今回のことは、いろいろな仕事をしてみたい、という彼の希望を農家のおじさんが聞き、気を回してもらえた結果のようだ。かなり気に入られたようで、報酬も冒険者ギルドに出す依頼より少し高い。それでも、彼の手取りはそう多くはないが………


それからも何度か農業の手伝いをしたり、商店街の店の番を頼まれたりしている。物覚えもよく、何より頼まれた仕事を真面目にこなすため、依頼人からの評価はとても高い。

他にも、商業ギルドの査定担当のトハリギさんから解体の指導を受けたりと、二か月もしないうちにずいぶんとギルド内では知られた存在となった。彼の頑張りの結果だろう。




日雇いの仕事を頼まれたり解体の指導だったりは、冒険者ギルドに所属していれば普通にサービスとして提供されていることだが、商業ギルドでは一般的ではない。彼はそれを自力で実現したらしい。


彼の行動力、コミュニケーション能力、スキルは、冒険者よりもむしろ商人に向いているのではないかと本気で思う。大怪我をする前に、早めに仕事を変えてくれることを切に願う。


最近では、冒険者でもほとんど訪れることのない南の森を一人で探索をしているらしい。トハリギさんがポイズンスパイダーの査定をしたことを心配そうに教えてくれた。


全く、あれほど1人で行っちゃダメ、って言ったのに…

どうやら、もう少し厳しく指導しなければいけないようだ。



「ソール君、今日はもう終わりでしょ? 私ももう少しで終わりだから、ちょっと待ってて。

晩御飯一緒に食べましょ!話もあるし!」


「お疲れさまです。

え~、怖いな、またお説教されそう…」


失礼な!

どうやら今日はじっくりお話する必要があるみたいね。

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