表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/25

4.街の外へ~初めての戦闘

2018.9.28 書きにくかったので、主人公の性格を若干変更し、それに伴い、セリフを修正しました。

「冒険者かい。うちじゃ毒は1種類しか取り扱いはないよ」


そういって、風邪薬のル〇くらいの大きさの瓶を棚から出してくれるおばあさん。

瓶の側面にはどくろマークが書いた紙が貼ってある。色も緑でドロドロしており、すごい色合いだ。もう文句なしに毒薬だろう。


「それください」


「あいよ。食用に向くモンスターに使うときは、肉に残るから気を付けな。熱にも強いからね」


「了解しました! ありがとうございます!

それと、他に状態異常を引き起こすような薬ってありますか? 麻痺とか睡眠とか」


「睡眠薬はあるよ。あんまり強くないが、このあたりのモンスターならある程度有効だろう。

これは熱で分解するから、肉に使っても焼けばまぁ食えるよ。食いたくはないが。保存にも気を付けないとすぐ効かなくなるから気を付けな。


あとは、そうだねぇ…

麻痺はないが、こんなもんはあるよ」


そういって、少し黄色味がかった液体の入った小瓶を取り出す。


「それは?」


「こいつは、このあたりの森に住んでるピローキノコってモンスターから採れる材料を使って作った疲労薬さ。

ホントは低品質のスタミナ回復薬の材料になるんだが、ちょっと作り方を変えると逆にスタミナを減らす疲労状態にする。あんまり出回ってないけどね

モンスターにもスタミナの概念はあるから、特殊な技や行動を制限できる。

まぁ、ちょいと使い方が難しいが、上手くすりゃ狩りが楽になるだろう」


「疲労、ですか。それも買います」


いいものが手に入った。

HPを減らす毒とスタミナを減らす疲労。珍しい状態異常だが、反転すれば間違いなく有用だろう。ラッキーだったな。


「あいよ。睡眠薬はどうする?」


「もちろんそちらもお願いします。

おいくらですか?」


「毒は1本7000ギル、睡眠薬は4000ギル、疲労薬は1000でいいよ。試しに作った売れ残りだ」


「はい」


ギルドカードを出す。

薬はそこそこの値段するようだ。

パン屋や商店街の店を覗いた感じ、ギルはだいたい円と同じくらいの価値だと思われる。つまり3本で12000円。


ちなみに、管理人さんがおまけでくれたお金は、およそ10万ギルほどになった。そこから初期登録や年会費、薬代を抜いても、まだ半分ほど残ってる。

お金をもらえたのは本当に助かった。今のステータスで10万稼ぐのは至難の業だろう。


「あいよ、ありがとさん。

回復薬は持ってるかい? 間違って自分でかからないように気を付けなよ」


カードをおばあさんのカードに合わせると、支払いは完了。

それぞれの頭の中や状況を読み取って勝手にお金をやり取りしてくれるなんて、どんな仕組みなんだろうね、このカード。


商品を受け取って店を出る。早く薬を飲みたいが、一応目立たないところで飲もう。

薬屋の脇の細い路地に入り、先ほど購入した薬を飲む。まずは毒薬だ。


「ング、ング、ング、っぷは~!げっろまず!!!」


予想に違わず、ものすごくまずい…

しかし、良薬口に苦し。俺にとっては、今後一生HPを自動で回復させてくれる、伝説のポーションのようなものだ。


「次は…… 疲労薬だな。

ゴク、ゴク、ゴク、ふぃ~!

あれ、ちょっと美味しいな」


甘味と爽やかな酸味があり、粘度も低く飲みやすい。色も相まってパインジュースみたいだ。


「最後に睡眠薬だな。

ん、ん、ん、っふー。これはほとんど水みたいだ。

お、なんか頭がすっきりしてきた感じだ」


どこかで装備を出してステータスを確認したいな。街中で突然武器を出しても大丈夫だろうか。

街の中心に向かって歩きながら、周りの様子を伺う。

ちらほらと冒険者らしき人も歩いており、鎧を付けていたり、大きな槍を背負って歩いている人もいる。大丈夫そうだな。


目立たないよう、刃渡り25cmほどの短剣をイメージしながら手を開く。

すると、想像したとおりの長さの短剣が開いた手の上に現れる。ドワーフ風管理人さんに聞いていた通りだ。

この状態でステータスを開く。


名前:ソール・フモーケ

種族:人

状態:毒(反転)、疲労(反転)、睡眠(反転)


HP:168

MP:158

SP:170


STR:12+71

VIT:13+71

DEX:21+71

MAG:1+71

MND:15+71

SPD:14+71


ATK:142

DEF:142


全属性攻撃30%付与、全属性防御30%


装備:変幻自在(ユニーク装備)


スキル:アイテムボックス(Lv.6)


ユニークスキル:状態異常反転、成長促進、状態異常付与


おお!!一気に数倍になった。

HPも三桁を超え、だいぶ死ににくくなったような気がする。


ちなみに、だいたい初心者冒険者は30前後のステータスを持っているらしい。

やはり、もともと俺は平均以下のスペックしかなかったようだ。さすが、温室育ちの白豚おじさん。運動不足のメタボは伊達ではなかった。


装備の性能的にはどうなのだろう。そのうち鍛冶屋にも行ってみて、初心者向けの装備の性能もチェックしておこう。

ドワーフさんの言葉を信じるなら、すでに初心者装備よりは強いはずなのだが。


それから、状態異常はしっかり反転しているようだ。

それぞれの異常に視点を合わせてみると、詳細が表示された。


毒(反転):HPが自動で回復する。回復量は最大HPに依存する

疲労(反転):SPが自動で回復する。回復量は最大SPに依存する

睡眠(反転):思考がクリアになり、眠気を感じなくなる


好きな時にこのバフが付与できるというのは、かなり強力なのではないだろうか。


しかし、念には念を入れて、ギルドの資料庫や書店などを巡って情報収集をしておこう。ゲームと違ってセーブ&ロードができないのだ。

最初は慎重すぎるくらい慎重に行動しよう。


……


…………


……


「うりゃ!!」


軸が枕みたいにふっくらとした体長50cmくらいの黄色い傘のキノコに、両手で持った槍を突き刺す。


「グェッ…」


軸の中心のでかい口に槍を刺されたピローキノコがうめき声を上げ、そのまますぐに動かなくなる。これで10体目だ。


ここは街から1時間ほど歩いたところにある森の中だ。

この森は、奥に入らなければ厄介なモンスターがほとんどいない上に、低級の薬づくりに使用される薬草なんかもたくさん生えている、まさに初心者向けといえる森で、冒険者になりたての人間はだいたいここで冒険のイロハを学ぶそうだ。

特にこのピローキノコは動きが遅く、遠距離攻撃も持たないので、安全に狩りができる初心者御用達のモンスターとなっている。


森に入って2時間ほどで、すでにピローキノコを10匹討伐している。剥ぎ取りの仕方はよくわからなかったので、とりあえず倒したモンスターは全てアイテムボックスにぶち込んである。


薬草や木の実や果物なんかもとりあえず採取してアイテムボックスに入れている。

このあたりで採取できる素材については商業ギルドの資料庫で確認できたので、目についたものはとりあえず持って帰ってギルドで買い取ってもらおう。


「お、槍スキルゲット。だいたい2時間くらいか」


森に入ってからは、ずっと槍を使っていたが、ようやくスキル獲得だ。

といっても、槍スキルのような基本的な武器スキルは、獲得すること自体は比較的簡単らしいが、ここからレベルを上げていくのがとんでもなく大変なんだそうだ。


しかし、レベルが1でも、スキルがあるだけでとても大きな効果があり、また、スキルを得ることで、そのスキルがどんなスキルか何となくイメージできるようになるらしい。


というわけで最初の方針は、いろんな行動をとって、とりあえず取れるスキルを手当たり次第獲得することにした。

いろいろ手を出すことで器用貧乏になる恐れもあるが、レベル1なら大して労力もかからないし、何より自分にあったスキルが見つかれば、今後の育成方針も間違えないで済むだろう。

急がば回れ、というやつだ。



「キリもいいし、今日はそろそろ帰るか」


まだまだ物足りない感じもするが、今日は転移初日だ。

身体は毒(反転)や疲労(反転)のおかげで絶好調だが、自覚していないだけで精神的な疲れがたまっているかもしれない。

今日は早めに休んで、明日からゴリゴリ狩りを行おう。


というわけで、さっさと街に向かって歩き出す。特に何事もなくそのまま街まで帰還。

まだ体感的には午後4時くらいだと思われるが、時計がないため正確にはわからない。

夕方というにはまだ少し早い時間にギルドに到着して、受付に向かう。

登録のときにお世話になった受付嬢のところが空いている。


「あの、素材の買取をお願いしたいのですが…」


「買取は裏の作業場に直接お願いします。あちらの通路で中から行けます。

査定や清算もそこでできるので、次は裏口から直接向かっていただいて大丈夫ですよ」


どうやら担当が違うらしい。そりゃそうか。カウンターで剥ぎ取りなんかしないな。


言われた通り、作業場に向かい、担当のおじさんに作業を頼む。


ピローキノコは食用として安定した需要があるが、討伐が簡単なため供給もそこそこあり、大きな儲けは期待できない。

重量で買い取り額が決まるらしく、1匹だいたい300ギル前後になった。10匹すべて売却。

薬草は1束100ギル前後、13束すべて売却。

木の実や果物は、野生のものはほとんど値が付かないと言われたのでそのまま非常食としてアイテムボックスに置いておくことにした。


全部で4000ギル程度の収入。

移動2時間、狩り2時間の収入が4000ギル、ギルドでおすすめされた宿の1泊の代金は朝晩飯付きで8000ギルなので、今日は赤字だ。

1日8時間、つまり狩りにプラス4時間働けば、4000ギルほどプラスになる。

しかし、昼飯代や休みも欲しいし、今後物資の調達やらなにやらでお金を使うことを考えれば、物足りない額だ。

やはりあの森は初心者向けの狩場なのだろう。



お金を受け取って外に出る。

疲れはともかく、おなかは空いたな。さっさと宿に戻って、飯食って寝よう。

ところで、気になっていたんだが……


睡眠(反転):思考がクリアになり、眠気を感じなくなる


俺は夜眠れるのだろうか……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ