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19.王様と謁見 ~ふーじこちゃーん

初日にモンスターと遭遇した以外は特に何事もなく、予定通り四日目の昼ごろ、無事王都セントブルグへと到着した。


王都セントブルグ。


海にほど近く、大きな河川や湖などの豊かな水源と緑豊かな山々に囲まれた国内随一の大都市で、人口は30万人を超えるということからも、その大きさが分かろうというもの。

30万人と言えば現代日本の都市と比較しても決して小さいとは言えない規模だ。


まぁ、魔法やスキルのある世界と元の世界を単純に比較してもしょうがないのだが。


というわけで、道行く人の数もかなりのもの。


大通りはきれいに整備され、あちこちに商店が立ち並び、にぎやかな声が絶えることなく聞こえる。


ちなみに、街の中心に立つ王城まで馬車のまま乗り入れるらしいので、王都に入る直前に馬車に入れてもらっている。

王家の馬車に引っ付いて走っていると、門番や警備隊にいちいち呼び止められるのだ。

毎回護衛であることを説明するのも面倒くさいし、どうやら城の中で話もあるらしい。

商業ギルドに顔を出したいのだが、お姫様を待たせて行くのも気が引けるので、黙ってついていくことにする。



「おお、でかい」



思わず声が漏れる。


小高い丘の上に立つお城は、街の外からでも見えていたが、近くで見るとそのでかさがさらにわかる。


有事の際は市民を中に避難させるのかもしれない。


外観も「THE 城」といった感じで、シン〇レラ城をごつくしたみたいだ。

街そのものも壁で囲まれていたが、さらに高く厚い城壁によって強固に囲まれている。


なんというか、今更ながら緊張してきた…

豪華な城内や行き交う人達の格調高そうな服装を見てると、そこらの店で買った古着を着てる自分がひどく場違いに思えるんだが…

これなら、他のメンバーのように鎧やローブを着てるほうがまだマシなような…



「いや、流石にあたしたちも中で着替えますよ。鎧で謁見するのはさすがに……」


え?そうなの?さらにやばいじゃないか。

君らはTPOに合わせた服装ぐらい用意しているのかもしれんですが、俺はこの格好が限界よ?

というか、謁見?まさか王様に会うの?



軽くテンパっていると、お姫様が助け舟を出してくれた。


「大丈夫ですよ。先ぶれは出していますが、謁見の準備が整うまでしばらく待っていただくことになるかと思います。何着かサイズの合いそうな服を用意させましょう」



というわけで、ロータリー(?)で馬車を降り、お姫様と別れて控室のような部屋に案内された。

当然、部屋は男女別で、部屋の中に上等そうな布を使った高そうな服とお手伝いさんが準備されていた。

高そうな服と言っても襟付きの白シャツとズボン、控え目な装飾が施された上着と、まぁスーツの親戚のような恰好だ。

サイズも問題なさそうだったので、ちゃっちゃと着替えて身だしなみを整える。

手を洗う洗面器や濡れタオルもあったので、さっぱりした。


準備が整うと、心に余裕が出てくる。

王様って普通に考えて超多忙だろうから、平気で数時間くらい待たされそうだなぁ。


用意してもらった飲み物を飲みながら、暇つぶしにステータスを眺める。



名前:ソール・フモーケ

種族:人

状態:毒(反転)、疲労(反転)、睡眠(反転)、麻痺(反転)、混乱(反転)、発狂(反転)


HP:1066

MP:1019

SP:1056


STR:134+334

VIT:199+334

DEX:150+334

MAG:162+334

MND:189+334

SPD:193+334


ATK:334

DEF:334


全属性攻撃60%、全属性防御60%


装備:変幻自在(ユニーク装備)


スキル:槍(Lv.1)、剣(Lv.5)、短剣(Lv.2)、鈍器(Lv.1)、投擲(Lv.4)、体術(Lv.4)、弓(Lv.3)、探知(Lv.5)、隠密(Lv.4)、望遠(Lv.2)、暗視(Lv.4)採取(Lv.3)、採掘(Lv.3)、地図(Lv.3)、罠発見(Lv.4)、罠解除(Lv.4)、解体(Lv.4)、栽培(Lv.1)、交渉(Lv.1)、計算(Lv.2)、掃除(Lv.1)、魔力操作(Lv.4)、水魔法(Lv.3)、火魔法(Lv.3)、土魔法(Lv.5)、風魔法(Lv.3)、光魔法(Lv.2)、回復魔法(Lv.4)、アイテムボックス(Lv.6)


ユニークスキル:状態異常反転、成長促進、状態異常付与



なかなか充実してきた。


まずは能力値だが、装備による補正が大きいせいで目立たないが、自分自身の能力値もかなり伸びてきた。

物理も魔法も採取も自分でやっているおかげで苦手と言える能力もなく、バランスの取れた数字ではないだろうか。

というか、転移直後のステータスから比べて10倍前後の伸びだ。

半年たたずにこれなら大満足だといって良い。


そして、注目すべきはスキルだ。


転移直前、この世界の管理人さんたちとの会話を思い出す。

確か、恩恵として受け取るスキルや武器があれば、転移直後から人類トップクラスに匹敵する、みたいなニュアンスのことを言っていた気がする。

この記憶が勘違いじゃなければ、初期から恩恵として受け取っていたアイテムボックス(Lv.6)は、人類トップクラスに匹敵すると解釈してもいいんじゃなかろうか。

つまり、人類の寿命6、70年ほどをかけて、アイテムボックスの研鑽に一生涯を費やす修行を行ったとすると、だいたいアイテムボックス(Lv.6)に到達するということだ。


その前提を踏まえると、剣や土魔法のLv.5は、人類トップクラスではないにしろ、一流の技術と十分言えるのかもしれない。


まして、武器、魔法、回復、探索補助と多様なスキルを高レベルで修めているこのごちゃごちゃのスキル一覧は、チートといって良いのではなかろうか。というか俺Tueeeでしょ。



そんなしょうもないことを考えながら、何度見ても飽きないステータス画面を眺めてニヤニヤ過ごしていると、着替えてから10分と経たずにお手伝いさんが


「謁見のご準備が整ったようでございます。

ご案内いたしますので、ご同行願います」


というので、大人しく後ろをついていくことに。


広い城内を5分ほど歩くと、大きな両開きの扉の前で待機している他のパーティメンバーと合流できた。



「ぷぷぷ。服に着られている、って感じっすね」


「中学で初めて学ラン着た時みたいだよ。落ち着かない」



正装といっても女性陣は豪華なドレスなどではなく、同じようにズボンとジャケットだ。

元々整った外見と相まって、なかなかに格好いい。


扉の前で1分ほど待っていると、扉の前に立っていた兵士が扉を開いた。


「まもなく陛下がいらっしゃいます。中でお待ちください」


というので、中に入って待つことに。


部屋の中は、壁に開けられた大きな窓によって日の光が入り、壁の装飾や高い天井から下げられた大きなシャンデリアもあってキラキラとゴージャスなことになっていた。

サイズもかなり大きくとられており、小学校の体育館くらいありそうだ。


壁際には兵士が並び、正面には豪華な椅子2つほど並んでいる。


その3mくらい手前にシンプルな椅子が4脚、豪華な椅子と向かい合うようにならんでいるので、座って再び待機。


すると間もなく前方の扉からいかにも貴族って感じのおじさんと先ほどまで一緒に馬車に乗っていたお姫様が入ってきた。


「ああいや、お気遣いなさらずとも結構です。そのままで、どうか楽にしてください」


膝でも付こうかと慌てて席を立ちかけたところ、王様から声がかかる。

それほど堅苦しくないようだ。というか、ずいぶん腰の低い王様だな。


素直に席に戻り、自己紹介を済ませる。

といっても、名前くらいだが。


「ルーズベルト=イトー=リンブルグです。皆様には娘の護衛任務を良く勤めて頂いたと聞いております。また、ダンジョンコアも提供いただいたとのこと、私の方からも改めてお礼をと思い、こうしてお時間を頂きました。本当にありがとうございました」


そのまま今回の護衛について簡単な報告会みたいな雑談が始まる。

どうやら女性メンバーたちは王様と何度かあったことがあるらしく、割とリラックスしながら会話している。

こっちはこの会合の意味も良く分かっていないので、変なことを言わないようニコニコしながら相槌を打つだけにとどめる。




そんなこんなで居心地の悪い時間が10分ほど過ぎたころ。


「実は皆様に折り入って……ッ?!?!」


王様が話の主旨となるのであろう、重要そうな話を切り出そうとしたタイミングで、後方からビルが倒壊したようなすさまじい爆音と振動が響いてきた。


飛び上がるように椅子から立ちあがり振り返ると、後方の扉付近の天井が倒壊し、黒くて巨大なゼリー状の物体が、がれきの上でうごめいていた。


「みんな後ろに!!」


状況は良く呑み込めないが、少なくとも歓迎すべき状況ではなさそうなので、武器を構えて皆の前に出る。

他のメンバーも武器を構え、周囲の警戒を始める。

黒いゼリーが元なのだろう、周囲には腐ったような悪臭が立ち込めている。



「スライムだ!!大きい!!魔法使いを呼べ!!他は盾を構えて押えろ!」



さすがに兵士たちはよく訓練されており、素早く混乱から立ち直り対応を始める。

大きいとはいえスライムなら魔法で対処が可能だ。

身体を細かく吹き飛ばして、中心付近の核を破壊すれば消滅する。


何名か大盾を構えた兵士が、スライムを取り囲むように近づいていく。

そのとき、


「ッ!?

近づいてはダメ!!呪い持ちです!!」


勝俣さんの叫ぶような警告もむなしく、二人の兵士が大盾で押し込めるようにスライムに接触する。


すると、


「え?

ヒッ………!!ぃぁぁああ………」


ドサッ


かろうじて聞こえるようなか細い悲鳴をあげながら、兵士二人が地面に倒れこみ、そのまま装備ごとスライムに飲み込まれた。



「の、呪いっ!?

ぎ、ぎゃーーー!!」


「は、離れろ!!押すな、バカ!!」


「魔法はやめろ!!破片が飛ぶぞ!!!」


怒声や悲鳴があちこちから上がる。

呪いと聞いて、先ほどまでの冷静な対応が嘘のように現場は一気にパニック状態だ。


逃げ惑う兵士。

驚愕と焦燥を隠せない王族。

嬉々として突撃する青年。


後のパーティメンバーたちはこう語る。


悪臭を放つ汚物に飛び込んでいく様は、心底気味が悪かった、と。

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