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13.ダンジョン攻略(単独) ~夢中になってて気づきませんでした

昨日は運よくベテラン冒険者ハロルドさんの指導を受けながら、初めてのダンジョン探索を経験できた。



しかし残念ながら昨日の探索は、お金を払ってついてきてもらったという、いわば接待探索だ。


毎回お金を払ってついてきてもらう、というのはさすがにカッコ悪いし、財布へのダメージも無視できない。



もちろん、信頼できる仲間とともに高難度ダンジョンに挑む、というのが理想だ。


しかし、そうそう都合の良い出会いはないし、今の何の名声も持たない俺では、勧誘しても誰もついてきてくれないだろう。



というわけで、わかりやすい功績として、ダンジョンの単独踏破を目指してみようと思う。



フィールドでの狩りとダンジョン探索の違いについては、だいたい把握できた。


例えば、視界がひらけてない洞窟では弓は使いにくい、とか、構造が複雑だから地図スキル必須、とかだ。



しかし、ざっくりいうと、結局はモンスターと罠の多さこそがダンジョンの特徴だろう。



つまり、モンスターをスイスイ一撃で倒す攻撃力と、高レベルな罠関連スキルがあれば、単独でもいけるのではなかろうか。


そして、モンスターや罠の難易度は、ダンジョンごとにある程度決まっているらしい。



そこで、俺でも攻略できそうな、目標となるダンジョンを決めることにする。



「というわけで、ダンジョンの情報について、資料の閲覧許可が欲しいのですが……」


「……

張り倒すわよ?」


「ヒィッ!?」



いまだダンジョン探索に猛反対な様子のテレーゼさんを何とかなだめすかし(危なくなったらすぐ帰りますから!!)、冒険者ギルドから提供されたらしい資料の複写を無事閲覧できた。


資料室で読み込む(持ち出し厳禁)。



資料には、このあたりのダンジョンについて、場所や出来てからの年数、入場に必要な最低ランク、出現するモンスターや素材など、かなり詳細な情報が載っていた。


狩場として魅力的なため、踏破を禁止しているダンジョンもある。



ランクの制限や踏破の禁止などは、あくまで冒険者ギルドのメンバーに向けた規制であり、商業ギルドの冒険者である俺には関係ないことではある。


しかし、無視して無用ないざこざを起こすこともない。


出来るだけギルドが保護しているダンジョンは踏破しないでおこう。



資料によると、このあたりで確認されているダンジョンは全部で5つ。


そのうち3つは保護されており、昨日のダンジョンも保護対象だ。


残り2つのうち、1つは、元々保護ダンジョンだったが、発生してからの年数が長くなり難易度が上がり過ぎたため、手が出せなくなる前に消滅させようとしているダンジョンだ。

(ダンジョンは、踏破して魔石(ダンジョンコアと呼ばれる)を回収すると、緩やかに消滅していくらしい)


つまり、難易度が高いのだろう。最初に踏破するダンジョンとしては適さないな。



そして最後の1つ。



「これだな」



年数は2年と若いが、街から遠く、モンスターは状態異常攻撃を連発、採取できる素材も用途が特殊で需要が少ない、と冒険者ギルドは保護どころか、踏破に懸賞金をかけたり国内外問わず応援を呼び掛けたりして、消滅させようとしているダンジョンらしい。



正直、俺にとってはボーナスステージだ。



というわけで、目標とするダンジョンが決まった。


テレーゼさんに資料を返却し(危ないことしちゃだめだよ!!)、早速今日からもぐってみることに。


もちろんテレーゼさんには言わない。


心配させるからね。




ダンジョンへは徒歩で丸3日とかなり遠いが、途中まで大きな街道が通っており、ダンジョンまでは看板や細い獣道もあるらしく、何とか迷わず行けそうだ。



今日は同行者もいないため、街を出てすぐダッシュで移動開始。


高ステータスのおかげか、最近は高速道路でも走れそうな速度が出ている。


疲労(反転)のおかげで、休憩なしのノンストップだ。




途中のモンスターは、正面に出てこない限りは手を出さず、ひたすらダンジョンに向かってダッシュし、半日とかからず無事ダンジョンに到着。


走りながらパンをかじっていたので、昼ご飯を食べずにそのままダンジョンに突入することに。



ダンジョンの入口近くには、小さな小屋が一つ立っており、兵士のような恰好をした人がダンジョン入口で待機していた。



「探索か? パーティメンバーはどうした?」



商業ギルドのカードを見せ、一人で探索予定だと伝えると、



「やめとけ。


金でも欲しいのか知らんが、雑魚が入ってもどうせ死ぬだけだ」



入れなかった。


彼は冒険者ギルドの職員らしい。


厳密なことを言えば、法律的にもギルドの規則的にも、商業ギルドの俺がダンジョンに入るのを止める権限は彼にはない。


しかし、さすがに死ぬとわかってて行かせるのも良心がとがめるのだろう、馬鹿にしたような、面倒くさそうな顔をしながら、突入を止められた。


無視して入ってもいいのだが、まぁ、彼も意地悪だけで言っているわけでもないのだろう。


テレーゼさんに言ったようなことを繰り返して(見るだけ、見るだけだから!!)、何とか説得した。



「俺は止めたからなー!」



ダンジョンに入っていくと、後ろから先ほどの職員からの声が聞こえたが無視してそのまま進む。



今日は、さすがに踏破までは目標としていない。


軽く様子見をし、何回かチャレンジしながらダンジョンに慣れていこうと思う。



入って100mほど、早速モンスターが出現。


おどろおどろしい色をした犬のようなモンスターが1匹向かってくる。


動きはそう早くないので、とびかかってきたところを躱しながら眉間に短剣を刺し、対処。


ある程度まとまったら剥ぎ取りする予定なので、そのままボックスに入れる。



間を置かず、今度は罠を発見。


罠解除スキル(Lv.2)のおかげで、5秒ほどで解除。DEX(器用さ)も高いし、楽勝楽勝。



おっと、次はお馴染みのポイズンスパイダーだ、土魔法で石を飛ばし瞬殺。


相変わらず忙しいな。集中していこう。



そのあともどんどん探索を進めていく。




……




うおっ、挟み撃ちだ。


焦るな、片方ずつ殲滅していこう。




……




いけね、罠解除失敗したっ!


爆音が鳴り、そこら中からモンスターが集まってくる。


ぎゃー!!




……





おぉ、宝箱だ。


中身は…… 何だ、槍か。


とりあえず、ボックスに入れといて、後で買い取ってもらおう。





……




いや~、夢中になってしまったな。


疲労(反転)の効果で休みなく活動できるので、それこそ食事やトイレを除いて不眠不休で探索してしまった。


洞窟タイプなので日の光が入らず、時間の感覚がないせいもあるのだろう、たぶん、一晩くらい明かしている。



まだ探索し足りないが、携行食の在庫が心もとなくなってきた。


動いている分いつもより腹が減り、どんどん食料を消化してしまったのだ。


一度街に帰って補充しよう。




地図スキルに従ってダンジョン入口まで戻る。


太陽の位置から、朝らしいことが分かる。


やはり、一晩明かしていたか。


見張りの職員さんが幽霊でも見たような顔で固まっていたが、気にせず街に向かってダッシュ。




行きと同じく、できるだけモンスターを無視しながら、昼過ぎには無事街に帰還できた。


とりあえず、商業ギルドで買取してもらってから物資の買い足しだ。



今日はまだ昼過ぎなので、トハリギさんはデスクワークかな。


買取カウンターにはいない可能性が高いので、裏口ではなく正面の入口からギルドに入る。



「ソ、ソール君!

無事だったの?!」



テレーゼさんに泣き付かれた。


一晩だと思っていたが、どうやら3日ほど経っていたらしい。




夢中になり過ぎたね。

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