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12.初めてのダンジョン探索(パーティ)

さすがにそのまま出るわけにもいかないので、商業ギルドで依頼の確認や手続きを行う。

くれぐれも気を付けるように、というテレーゼさんのありがたいお言葉も頂き、ようやく本当に出発。


依頼を受けてくれたのは、以前マルーナ村の調査で一緒になったハロルドさんを含めて3人のパーティ。


街の出口で、それぞれの持ち物や装備の確認と、簡単な自己紹介を済ませる。


「ソールです。依頼を受けてくださり、ありがとうございます。

今日から二日間、よろしくお願いします」


「……」


「……

ふん、雑魚がいきがりやがって。

邪魔すんじゃねぇぞ」


いきなり無視された。もう一方は罵倒。


ハロルドさん以外の二人は、高校生くらいの青年で、嘲りと侮蔑と嫌悪を混ぜ込んだような顔をしている。


冒険者ギルドの冒険者と、商業ギルドの冒険者の軋轢については軽くだが聞いている。

まぁ、しょうがない部分もあるのだろうから、適当に受け流す。


これでも中身は30過ぎのおじさんだ。

この程度躱せないようじゃ、日本では生きていけんよ。


「……

おい。

何見当違いなこと言ってやがる。


今回の依頼はクランとして受けた護衛依頼で、相手はその依頼主だぞ。


依頼主に一定の敬意を持って接する、なんてのは仕事やる上じゃ当たり前のことだ。


あと、邪魔すんな?

それを護衛すんのがお前の仕事だろ」


と思ったら、ハロルドさんがキレた。

決して声を荒げたわけではないが、指摘している様子から冷たい怒りがビンビン伝わってくる。


鬼教官だな。


「す、すみません…」


納得してはいないだろうが、高校生二人が揃って頭を下げる。

こちらも特に気にしてないので、笑って受け入れる。


「それから、実力については俺から訂正する気は無い。

お前の方から示してくれ」


「了解です」


素直に頷いておく。


彼ら二人はハロルドさんのクランに所属する新人さんらしい。

今日のダンジョンも1度経験しているらしいが、ハロルドさんにしてみれば、自分以外全員の面倒を見なければならない、正に教官なのだ。

危険なダンジョン内で万が一が起きないよう、責任を感じてピリピリするのも仕方ない。


「依頼に合ったダンジョンはこちらで目星を付けてある。徒歩で半日ほどだ。

昼からダンジョンにもぐり探索、一晩過ごして明日の昼前にダンジョンを脱出。

明日の夕方には帰還する予定だ。


詳細は歩きながら説明する。


行こう」



その後はダンジョンの基本的な特徴や注意事項、これから行くダンジョンの敵の説明なんかを聞きながら、徒歩で移動する。


今日行くダンジョンは、ほんの2ヶ月ほど前に発生した若いダンジョンで、対処しやすいモンスターがほとんどなので、最初にチャレンジするのにぴったりな初心者コースみたいなダンジョンらしい。


他にも、冒険者ギルドにおけるダンジョンに関するルールや、ダンジョンの生態など、冒険者ギルドでは普通に共有されている情報をいろいろ教えてもらった。


新人さん二人は知っているみたいだったので、完全に俺向けだったのだろう。

商業ギルドでは得られない情報もあったので、とても助かった。


途中、何度かモンスターとの戦闘があったが、特に問題なく処理。

今日の武器はダンジョンでの取り回しを考えて、弓ではなく刃渡り60cm程の片手剣だ。

互いの力量を確認する意味で順番に戦った。




そして、予定通り昼前にダンジョン入り口に到着。

新人さん二人は途中からフラフラに疲れていた。

装備が重かったのかもしれない。

まぁ、ハロルドさんが上り坂でも関係なく常に駆け足気味だったせいかもしれないが。


ダンジョン入り口付近は広場になっており、テントや簡易的な屋台のようなものがいくつか立っていた。


休憩がてら、広場の隅の方で軽い昼食をとる。


15分ほど休んだ後、ハロルドさんが入り口横の屋台に行き、受付を済ます。


いよいよ、ダンジョン突入だ。




初心者ダンジョンは、低い山の中腹ほどにあり、木々に紛れるように出来た洞窟タイプだった。


洞窟といっても、天井の高さは3m近くあり、横幅も十分広い。

地面は多少の凹凸がある。注意しなければ躓きそうだ。


入り口では外の光があってわからなかったが、どうやら洞窟の壁自体が薄く光っているようで、ライトが無くても辛うじて見える。

ただ光量は弱く、暗視スキルが無いと苦労するだろう。取っておいてよかった。


「行きで説明したが、罠には十分注意しろ。

俺が先行する。俺の歩いたあとを一列についてこい」


事前打ち合わせ通り、ハロルドさん、新人さん二人、俺の順番で進む。


相当入り組んでいるらしく、数分もしないうちにいくつもの分かれ道を抜ける。

地図スキルのおかげで、何となく地形が頭に入っていく。取っておいてよかった。


10分ほど歩いたところで、ハロルドさんが手を上げて止まるよう指示を出す。


「一人ずつ順番に俺の横まで歩いてこい。

罠がある。様子や形状を確認しろ」


1人ずつ傍に呼び、丁寧に説明してくれる。

一見するとただの地面のようにしか見えないが、その不自然な点や構造、解除方法などが解説されるのを黙って聞く。

罠発見スキルや罠解除スキルの習得のためだそうだ。


その後も、さまざまな種類の罠が数百m置きくらいに設置されていた。

ひどいときには、10cmほど奥に続けて設置されていることもあった。

罠の種類は、毒ガス、睡眠ガス、麻痺ガス、落石、地雷などさまざまで、どれもパーティに大打撃を与える可能性がある凶悪なものだ。

しかも、これらの罠は定期的に更新されるらしく、事前情報にあまり意味がないそうだ。

探索の度に注意深く見ていくしかないとのこと。


モンスターの出現頻度も、フィールドとは比べ物にならない。

10分と間隔を置かず襲い掛かってくる。

恐ろしいのは、探知スキルの範囲内に突然モンスターが湧き出てくることだ。

すぐ目の前や背後に出現された場合に備えて、常に気を張っておかなければならない。


2時間も探索したところで、新人さん2人が音を上げたため、途中で見つけた小部屋のような空間にモンスター除けの魔道具を設置して、少し休憩することに。

疲労(反転)のおかげで疲労感こそないが、罠にモンスターにと目まぐるしく状況が変わる探索に、俺も少々面食らった。

初心者コースでこれなら、上級者コースはよほど凶悪な代物になるだろう。

テレーゼさんの心配もうなずける。


「どうだ、初めてのダンジョン探索は?

結構忙しいだろ?」


「ええ、驚きました。

戦闘中に罠に気を配ったり、挟み撃ちにあったり、フィールドとは比べ物になりませんね」


「そうだ。ほんのちょっとしたことで、一気にパーティは瓦解する。

とにかく無理しないことだ。進みはゆっくりでいい。

慣れないうちは探索済みの場所をまわってモンスター狩りに徹する、というのも選択の一つだな。

罠を解除しておくだけでずいぶん楽だろう」


休憩中も、ハロルドさんにいろいろアドバイスをもらう。

さすが高ランクの冒険者だけあって、どれも貴重な情報だ。

この人に依頼を受けてもらえて幸運だったな。



新人さん2人が十分に回復してから、再び探索開始。

先ほどまでの時間は、ダンジョン探索の難しさを実感してもらうためかなりハイペースで探索していたらしく、休憩後はゆっくりとしたペースで、先ほど探索した範囲を再度まわって過ごした。


ほとんど罠を解除済みなため、モンスターに意識を集中でき、かなり楽になった。



そのあとも細かく休憩をはさみながらモンスター狩りを続けた。

夜(時間が分からないので体感)になると、再び小部屋に戻り、モンスター除けを設置して夕食。

そのまま交代で寝ることに。


さすがにダンジョン内で熟睡はできないので仮眠、ということだったのだが、新人さん2人はよほど疲れていたらしく、いびきをかきながら爆睡。


ハロルドさんは静かに怒っていたが、無理に起こしても使い物にならないだろう、ということで起きている2人で見張りを行った。

夜通し高ランク冒険者の話を聞けて、俺的には大満足。新人さんには感謝したいくらいだ。




次の日は、罠が復活している可能性がある、ということでゆっくりとしたペースでダンジョン入口に向かう。

新人さん2人は昨日の疲れが抜けていないのか若干動きが悪かったが、何とか午前中のうちにダンジョンを脱出。

受付に帰還報告を行い、広場に集合して成果を確認した。


「今回の依頼は護衛依頼だったから、素材の分け前については決めてなかったが、四等分で本当にいいのか?

俺らとお前で半々でもいいくらいだと思うが…」


「いえ、今回の内容はこちらも期待以上の成果でした。

ハロルドさんには旨味のない素材かも知れませんが、貰ってもらえるとうれしいです」


いつもの狩りとは比べ物にならない成果だが、それでもハロルドさんから受けたアドバイスの方がよほど価値がある。

正直、こちらがもらい過ぎなくらいだ。


「……

そうか。ではありがたくいただいておこう。

今回の依頼は新人の訓練も兼ねることができて、こちらとしてもタイミングが良かった。

次の機会があれば声をかけてくれ。

出来るだけ応じられるようにしておく。


それでは、街に帰還する」


帰りも特に問題はなかった。

若干ペースが遅かったのは、ヘロヘロの新人さんに気を遣ってのことだろう。



--



「帰り道にも言ったが、冒険者ギルドに入ることになれば、連絡くれ。

決してでかいクランとは言えねえが、歓迎する」


「はい。

今回はお世話になりました。ありがとうございました」


予定通り、日が暮れる前に街に帰還できた。

各自報告のため、商業ギルドの前で別れる。


ギルドに依頼の完了を報告し、素材の買取をお願いする。

ポイズンスパイダーの数倍の収入になったが、依頼料を大奮発したので結局は赤字になった。


しかし、今回得たものはそれだけではない。


剣スキル1→3

体術スキル2→3

土魔法スキル1→2

探知スキル1→3

採掘スキル0→2

罠発見スキル0→3

罠解除スキル0→2

地図スキル1→3

暗視スキル1→3


そして、熟練者からの多数のアドバイス。


何となく、ダンジョン単独踏破への道筋が見えてきたな。

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