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11.初めてのダンジョン探索(準備)

アンデット調査を終えて街に帰還した後の数日間は、ギルドへの報告や相談、買い物など休日も兼ねてゆっくり過ごした。


ギルドへの報告のとき、勝俣さんの遺品について相談してみたところ、いくらか手数料を払って各ギルドに連絡を回して妹さんを探してもらえることになった。



買い物は商業ギルドの受付嬢さんと一緒だった。

報告のとき、何日かゆっくり街でも見て回る、と言ったら、偶然彼女も休みだというので、付き合ってくれることに。せっかくの休みに申し訳ない。



テレーゼさん(受付嬢さんの名前)は、このルーズの街の出身らしく、手ごろな価格のおいしいお店をいろいろ教えてもらえた。


食事の時、アパート住まいの方が経済的だ、とテレーゼさんの家の近くにあるアパートをおすすめされたが、これは断った。

ギルドに近くて治安も設備も良いと猛プッシュだったが、今の宿も結構気に入ってる。

二月ほど住んで宿の人とも仲良くなったし、トイレやシャワーも、共用とはいえきれいで使いやすいので、この街にいる間はあそこに住む予定だ。


そのあとは、お茶したり、雑貨を見て回ったり、服を選んでもらったりと、夕方くらいまで付き合ってもらった。もちろん、お礼も兼ねて料金は払った。今月お財布が厳しかったのか、テレーゼさんは大げさなくらい喜んでくれた。



そんな感じで十分な休養もとり、そろそろ仕事を再開しようと思うのだが、次の狩場をどうしようか悩み中。

慢心はもちろん良くないが、さすがに今の実力でポイズンスパイダーは旨味が少ない気がする。

スキルも一通り習得し、状態異常(反転)もステータスもかなり充実した。


そろそろ次のステップに進む時だ。




「というわけで、このあたりのダンジョンについての情報が欲しいのですが……」


次の日の朝、早速テレーゼさんに相談してみる。


「……

お答えできません」


断られた。

困ったな。


「う…… なによ……


そ、そんな顔してもダメだよ!

あのね、前にも言ったと思うけど、一人で探索するのって、すごくリスクが高いことなの!


この前の依頼の時に一緒だったハロルドさん、実はこの街でトップクラスの冒険者なんだけど、その人でも一人での探索を嫌がって商業ギルドに応援を頼みに来たのよ?

ソール君がそこそこの実力者だってことはわかっているけれど、一人でダンジョン探索なんて、許可できません!

情報も教えない!」


いつものことながら、ずいぶん心配させているようだ。

しかし、事前情報もなくダンジョンに行くのはさすがに少し心配だ。


書物だけでなく、このあたりのダンジョンの情報も含めた、生の情報が欲しいのだが。


その後も説得を続けるテレーゼさんを前に、どうしようかと悩んでいたところ、


「おう、ソール。

お前、今度はダンジョンかよ。あんまテレーゼに心配かけるなよ」


「トハリギさん、どうもです」


買取担当のトハリギさんが声をかけてくる。


彼は剥ぎ取りや買取の担当ではあるが、商業ギルドでは解体前の素材が頻繁にくることはないため、普段は時間が余ることが多く、別の業務と掛け持ちしているらしい。今はデスクワークの時間なのだろう。


「つっても、止めても行くだろうしなぁ…

色々経験したい、ってのは応援してやりたいことだし…


ソール、お前、今、余分な金あるか?」


この前の依頼のお金がかなりまとまって入っている。

普段そこまで使う機会もなかったし、買い物でちょっと使ったくらいなので、結構入っている。


「そんだけありゃ十分だろ。

どうしてもダンジョン行きたきゃ、冒険者ギルドに護衛依頼出して、連れてってもらえ」




そもそもダンジョンとは何か。


それは、突然地上に現れ、この世界とは少し違ったルールで動いている、巨大な迷宮のことだ。

形状は、洞窟であったり、森であったり、砦や遺跡のようであったりと様々だが、その内部には、罠やモンスターが溢れかえる危険極まりない代物である。


もちろん、危険なだけでは、誰もダンジョンを目指すものはいないだろう。

あらゆる冒険者が挑戦し、命がけで探索・踏破を目指すのは、大きな利益や名声が得られるからだ。


フィールドとは比べ物にならないほど多量なモンスターは、その分多くの肉や革をもたらし、外では見たこともないような珍しい植物や鉱石は、生産者たちにとっては垂涎もののお宝だ。


さらに、守護者と呼ばれる強大な敵を倒し、最深部に到達すれば、ダンジョンコアと呼ばれる巨大な魔石と、国中に轟く名声が手に入る。


正に冒険、一攫千金を夢見る冒険者を一人残らず魅了する、神からの試練であり贈り物、それがダンジョンである。

(本の受け売り)



というわけで、ある程度の経験を積んだ冒険者の多くは、ダンジョンでの探索により収入を得ている。

つまりトハリギさんの案は、お金を払ってその冒険者パーティに混ぜてもらえ、ということだ。


これは中々ナイスな案ではなかろうか。


「まぁ、最初は護衛依頼と変わらんような高めの報酬払うことになるだろうから確実に赤字だな。

ただ、技術やノウハウを習得できるし、お前の頑張りによっちゃ、利益も出るようになるかもしれん。

冒険者ギルドで評価されて顔見知りでも出来りゃ、パーティ組むのも楽になるだろうさ」


というわけで、早速依頼書を作ってもらうことに。

相変わらず反対しているテレーゼさんのお小言を無視して、トハリギさんと内容を詰めていく。


報酬はトハリギさんの言う通り、かなり高めの固定報酬を支払うことにした。


というのも、通常の護衛依頼とは別に、ダンジョンへの案内・護衛を商業ギルドから冒険者ギルドへ依頼することは、よくあるとは言わないまでも、珍しいことでもないらしい。


貴重な素材の宝庫であるダンジョン内には、高いレベルの採取スキルや発掘スキル、伐採スキルを要求する素材が数多く存在するが、そういったスキルは、冒険者ではなく、むしろ農夫や鉱夫、木こりの主力スキルだ。

冒険者では取得できないような素材を取得できる彼らを護衛する、という依頼は、両者にとって利益となるため、割と人気の依頼となっており、その時の報酬は、出来高による割合報酬であることがほとんどだそうな。


しかし、今回の依頼に関して言えば、利益確保につながらないお荷物の護衛でしかない。

むしろ、街から街への護衛などとは違い、より危険の伴うダンジョン内の護衛だ。

よっぽど報酬が高くないと誰も引き受けないだろう、とのこと。


というわけで、諸々の手続きや報酬の支払い、拗ねたテレーゼさんのご機嫌取りを終えて、商業ギルドを出た。


冒険者が見つかるまで、おそらく数日か、長いときは10日ほどかかるかもしれないと言われたので、今日はこのまま、ダンジョン探索で必要そうな物資を調達したり、できる限りの情報収集をして過ごすことに。

明日の朝も一応商業ギルドを覗いてみるが、依頼を受けてくれる冒険者が見つかるまでは、これまでのようにポイズンスパイダーでも狩って待つことになるだろう。


早く依頼受けてくれるといいな。ダンジョンが待ち遠しい。




次の日、


「おう、やっぱお前だったな。準備できてんだろ? このまま行くぞ」


早速、冒険者(ハロルドさん)が依頼を受けてくれたらしい。


早いね。

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